東の方の国の文字
“お姫様”扱いされたのは、ちょっと何だかそわそわするような感覚を私は味わった。
だが相手はロランだ。
何となく嫌な感じのする相手でもある。
でも、この“お姫様”扱いに関しては、
「昔何処かで経験があるようなない様な」
「どうしたんだ?」
「いえ、何でもないわ。ロランの気が変わらないうちに行きましょう!」
「……守られる方の“お姫様”が俺より前面に出てどうするんだ。俺の後ろに居ろ。でないと連れて行かないぞ」
「く……仕方がないわね」
私はしぶしぶロランの後ろについていく。
するとそこで私の様子を見ていたシルバが、
「なるほど、そうなってくると僕はロランの前に出ないといけないかな?」
「……俺の役目を考えると俺が全面で問題ないな」
「僕もその方が楽なのでいいですが……いざという時は、前面に出ないようにして欲しいな、ロランには。ロランの力が必要とはいっても、君が怪我をしては困るからね。それに僕の役目が無くなるのはごめんこうむりたいよ」
「分かっている。シルバの立場が悪くはならないようにする」
「……遠回しに心配しているんだと言っているんだよ¥。もちろん分かっているよね?」
「……分かってる」
「それならいいよ」
シルバが相変わらずの笑顔で言うが、心配しているといったくだりではほんの少し、表情が真剣なものになっていた気がする。
この二人は一体どういう関係なのだろうか?
しかもきっとシルバはロランの“護衛”も兼ねている。
そこそこ地位のある人間なのだろうか?
そんな人間が一体、どうしてこんな場所にいるのだろうか?
これは……ロランへの“弱み”を掴むことになるだろうか?
などと私が黒い計算をしているとそこで、
「今回はマリナの出番はなくしてやるから楽しみにしていろよ」
「! 私の冒険が!」
「戦うのは“お姫様”の役目ではなくて、“騎士”だろう。というわけで、諦めろ」
「く、隙あらば介入してやるわ。そして強い敵が来たら私達の出番よ!」
「……昨日みたいな魔法を使うのか?」
「と、思うでしょう? でもああいった室内でも大丈夫な威力弱めの魔法があるのよ! しかもターゲットを追跡するような!」
私が自信を持って言い切ると深々とロランがため息をついた。
「それでもどの程度威力があるのか……とはいってもあの古城は、“普通”の城ではないが」
「そうなの?」
「……詳しい話も聞いていないのか?」
「うん」
そう私が答えると、ロランは深々とため息をついた。
「昔の魔法文明の遺産を一部組み込んだ城だそうだ。だから中と外、どちらも防御が強い」
「つまり、容赦なく魔法を放っても問題がないと!」
「そんなわけないだろう。あれだけの威力があれば壊れる所は壊れる」
呆れたようにロランに言われて私は呻いた。
やはり超火力で敵を殲滅するのが美しいと思うのだ。
などと思うもののこれ以上それは言えずにいた。
何故なら丁度その古城に入るための、記入する場所にやって来たからだ。
ここで気が変わられても困る。
そう思いつつ待ちながら私は名前を書いていく。
あえて公爵家の名前は書かなかったが、その辺りは大丈夫だった。
意外に適当なようだ。
また、他にもこの古城に来ている人がいるらしい。
「……東の方の国の文字だな」
ロランがそう呟いたのだった。
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