そんな~
エレンは今日も杖を持ってきてくれたらしい。
「この前持ち帰りしてしまいましたので……返すのを忘れてしまいましたわ」
「いいのいいの~、これで一緒に冒険する仲間が増えたし三人で発動する杖だからちょうどいいわ」
「……では、今日の冒険が終わり次第、この杖はお返ししましょう」
「そんな~」
エレンがバッサリ切ろうとしている様子に私が悲しみの声を上げているとそこでシルバが、
「今日はマリナも、古城に行くようですよ」
「え、どうしてそのような話に? ロラン様方が調べに行くのをご存知でしたの?」
「そういうわけではなさそうだよ。何でも屋敷のメイドにお勧めされたらしい」
「……あそこはそんなお勧めするような場所では……危険ですし……ただ、遠くから見るには印象的ですわね。そういった意味で紹介されたのかしら」
首をかしげるエレン。
それを聞きながら私はエレンに、
「そんなに危険な場所なのですか?」
「……ええ。一応は初心者の上の方から、といった話になっていますが、それではあそこに行くには危険かもしれません」
「毒などを使う魔物がいるとか」
「ええ、そういった魔物や、特に石化の呪いの息を吐く魔物等もいて、そういった意味でも危険な場所です」
「解毒薬なども全部用意してきたからその辺りは大丈夫よ! しかも、魔法で治せます」
私が自信を持ってお伝えすると、深々とエレンがため息をついてから次に、
「それでギルドカードはもっていますの?」
「ないよ~。何で聞くの?」
「こういった危険地帯に行くにはギルドカードに登録をしておかないといけません。しかも目的の場所は、そこに通じる一本道に、登録する場所があります」
「……そうなの?」
「そうです」
「でも他にはなかったわよ」
「他はまだそこまでは危険ではありませんから。しかも古城の下のダンジョンは上級者向けも関わってきていますし」
「ふむふむ~、ふむ。ギルドカードかぁ」
私は小さく呟く。
ギルドカード、作る分にはいいのだけれど、それで私の能力が気付かれても困る。
“聖女”としての力を何らかの形で読み取られないか、それが不安なのだ。
さて、どうしようと私が思いつつそこである事を思い出した。つまり、
「護衛がギルドカードを持っていれば幾らかは問題がなかったわよね。確かそういったダンジョンがあるって本を読んだことがあるわ」
「……そういった無駄な知識だけはあるんだな。ここで諦めてくれたらと思ったのに」
ロランがそんな事を言うが私としては、
「残念でした。というわけでよろしく」
「……俺を護衛にする気か?」
「うん、今日は私の“騎士”としてよろしくね~」
そう言うとロランは少し黙ってから頷いた。
自棄に素直だなと私は首をかしげつつ、防御の指輪を取り出して配る。
これをつけていればちょっとした攻撃は全て何とかなる。
準備はすべて整ったような気がする。ので、
「よし、今日は古城に向かって出発するけれど、どっちに行けばいいの」
「場所も分かっていなかったのか。あそこの森の奥」
ロランが嘆息するように教えてくれたが私はよく見えない。
正確には木々に隠れるようにしていてこの位置からは森にしか見えない。と、
「……連れて行ってやる。“お姫様”」
そう、さっきの“騎士”という言葉に対してなのか、私の事をロランは“お姫様”と呼んだのだった。
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