負けず嫌いですか?
こうして都市の母との連絡がついた。
この町についてのちょっとしたなぞも解明できたのは良かったように思う。
だがその中で私は気になることを一つ聞いた気がした。
「あの令嬢ミズハが旅行ね」
旅行自体はそれほど珍しいものではないけれど、一体何をするつもりなのだろうか。
あれほど、王子の傍にいつもいたのに。
「……王子は王子で、あの寝取り女ミズハの操り人形みたいになっていたから、そんな王子の傍を離れるのも変な話。かといって王子を操り人形にしたとしてもそう簡単に旅行なんてできないでしょうし」
ではなぜ旅行したのか。
また私の婚約破棄のような何かを企んでいるのでは、と思うも、私達に被害が競うかどうかはすでに両親が情報を集めていることだろう。
ただでさえ、あの王子が嫌いとは言えど王子は王子である。
公爵家に泥を塗る形ででの婚約破棄は、私達の両親にとっても“してやられた”といったものだ。
そして令嬢ミズハは私を目の敵にしている。
アホだから。
「面倒くさいのに粘着されているわ。何て可哀想な私」
「……よく分かりませんが、マリナ様が可哀想だったら私は自分自身がもっとかわいそうな気がします」
リフェが遠い目をしてそんな事を言うが、こちらの事情を知らないから当然だろう。
だが、嫌な予感がする。
まさか今日であったあの生物が、令嬢ミズハ関係ではないだろうか?
「考えすぎだとしても、警戒は必要、といった所かしら」
油断をすれば“死”んでもおかしくはない。
そしてできるだけ“聖女”の力は隠したいとなると、上手く立ち回らないといけない。
“聖女”として保護される生活も、個人的にはお断りだが、“聖女”だから狙われるのも嫌だ。
できれば普通に平穏に冒険者などを目指したい。
窮屈な貴族生活なんてものよりも昔から私は冒険に憧れていた。
そもそも昔の“聖女”は、“勇者”と呼ばれる人物達とよく一緒に行動したり冒険をしていたはずなのだ。
そういった冒険譚ですらも大量に残っている。
中には面白おかしく創作されたものもあるが、それでも私は冒険者である“聖女”に魅力を感じていた。
だからこれだけ準備をしたのだ。
そう私は心の中で思いつつ、先ほどのメイド達の話と、令嬢ミズハの旅行が絡まって嫌な気持ちになる。
何事も無ければいいけれど、そう心の中で呟いているとそこでリフェが、
「まあ、もう行っても無駄そうなのでこれ以上は言うのを止めます。あのロラン様もいますしね。あの剣、魔剣というものなのでしょうか? 強力な魔法的な効果がある魔道具……私、初めて見ました」
「そうね、あんな魔剣初めて見るわ。でもあそこまで強力だと、伝説の~といったもののような気もするわね。試しに調べてみようかしら」
「伝説の魔剣!」
「そうよ。剣関係はあまり使わなかったからそんなに調べてなかったからね。でもあれだけの剣は興味があるわ。といっても、それだけの力があるなら、持ち主であるロランもものすごく強そうで、なんかイラっとするわ」
「……マリナ様、ひょっとして負けず嫌いですか?」
「誰だって負けたら悔しいでしょう?」
「それはそうですけれど……」
リフェは何かを言いたそうだったが私にはよく分からなかった。
そして結局私はロランの剣を見つけられなかったのだった。
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