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考え過ぎか

 食事をしながら、かつていたあの寝取り女ミズハの事を思い出して、うんざりとしたように呟いた私。

 苛立ったので、ハムサンドとポテトサラダのサンド二つを重ねて、やけ食いしてみた。

 もぐもぐもぐ。


 美味しい。

 やはり美味しいものを食べると元気が出るわ、そう私は思っているとそこでロランが、


「相変わらず大きく口が開くな」

「このくらい開くのは当然よ」

「食い意地が張りすぎじゃないか?」

「食べないと元気が出ません」

「それはそうだけれど、一応異性の前では大人しく淑女らしくするものなんじゃないのか? 女は」

「そのようなロランを落としに向かっている女性と一緒にしないでください。女性の本性はこっちよ!」

「……間違っているような気がするが、いった所でマリナは聞かなそうだから放っておこう」

「そこは口に出さなくていい所だと思うの」

「遠回しにもう少し落ち着いたらどうなんだって言っているんだ」

「やだ」


 短くそう答えて私は瓶づめのジュースを開けた。

 その味は、幾つかの果実が混ざったもの。

 美味しいわと思ってそれを飲んでいるとそこでロランが、


「でもその本性を見せつけていたら、婚約破棄されそうだな」

「え~、それは無いわね。だって私もがんばって猫をかぶっていたし」

「……マリナに猫がかぶれるとは思えないが」

「ふ、私の実力が分かっていないようね。いいでしょう、令嬢の本気、見せてあげるわ!」


 と私は、とりあえずジュースの瓶を地面に置いて、小さく深呼吸をして姿勢を正し、ロランを見つめる。

 それから仮面をかぶると意識しながら微笑むように表情を作り、


「こんにちは、ロラン様、ご機嫌はいかかですの?」


 声も清楚な令嬢らしく作ってみる。

 大抵これで何とかなるが、本音を言うとこういうのは面倒くさい。

 とても。


 だから今のように自由気ままにした方が私にはいいのだが、そこでロランが変な顔になった。


「確かにこれなら普通の令嬢のようなものに見えるが、笑顔の人形が話しているようで何だか気持ち悪いな」

「! なんという言い草。こう見えてもこの状態の私は、男性に人気があったのに」

「それは個人の主観というものか」

「こ、個人じゃないわよ。本当にモテたもの。あの婚約破棄された王子も私が気に入っていたみたいだし」

「……なのに何でそれが婚約破棄になったんだ?」

「だから令嬢ミズハのせいだってば」


 私がそう言い返すとロランは少し黙ってから、


「その令嬢ミズハが“彼等”というわけではないのか?」

「昔から知っている嫌な女よ、“彼等”だとしたらもっと早く、直接的な行動に出てきそうな気がするけれど」

「途中で“彼等”の仲間になった可能性は?」

「それはあるでしょうけれど……あの女、元々嫌な感じのする女だったし、“彼等”かどうかは、というか考えすぎなんじゃない?」


 私がそう返すとロランは黙ってから、


「そうだな、こんな偶然にもこの場所に設置されていたから、そう思ったのかもしれない」

「でも私の行動が分かっているって事は、私の屋敷内の人が通じていることになるけれど……連れてきた人はそんなに多くないわ。料理人一人だもの。後は現地の人達」

「料理人がそのメイド達に今日ここに来るって言ったか?」


 そうロランに問いかけられて、朝食の準備などをお願いしたりしたあの出来事を思い出して……。


「そういえば聞かれたけれど、お嬢様は何処に行くのかは普通メイドは聞くと思うの。そして料理人には遊びに行くからお弁当をよろしくとしか行っていないわ」

「……そうか、考え過ぎか」

「でも心配してくれてありがとう」

「……だったら危険な行動はするな」


 そうロランは私に言ったのだった。

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