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余裕だわ

 こうして地図を見ながら、次々と魔物を倒して奥に進んでいく私達。


「余裕、余裕だわ。この調子でどんどん行きましょう」


 私がそう調子に乗っているとエレンが、


「油断は禁物ですわ。まったく、こんな風に危なっかしいからあの方もこの方にはきつい物言いになるのか」

「? あの方?」

「ロラン様ですわ」


 エレンが口にしたロランという言葉に、私の心が機嫌のよい状態から悪い状態へとぐぐっと下がる。

 私はあいつが好きじゃない。

 そんな私の様子を見てエレンが、


「ロラン様は元々は物静かで大人しい、理知的な方です。本国でも女性に人気のある方なのです」

「そう? あの行動は、どう考えても女性に対する行動ではなかった気がするわ」

「? 何が?」

「伏せろと言われて、顔面で地面とキスさせられた私の気持ちが分かる!?」

「女の子というよりは“男の子”相手の扱いですわね。しかも随分と厳しい感じが……ロラン様にしては珍しいですね。女性にはもっと紳士的、と申しますか距離をとるようような対応をする方でしたから」


 そうエレンは自分で言いながら不思議がっている。

 だが私は、不思議がろうが何だろうが、あのロランは苦手なのだ。

 感情論……のようなものも混ぜつつ、言い返せない理論的な言葉で私を追い詰める。


 その理由と、私自身の個人的な“聖女”としての能力の関係で言い返せないのが悔しい。

 しかも彼は口調はあれだが私を“心配”してくれているのだ。

 それに対してどうこう、悪意を持って私は言い返せない。


 実に嫌な相手。

 まるで天敵みたいだ、と私は思う。だが、


「今日はあのロランは上手く巻いてやったわ、だから大丈夫よ」


 私は自信を持ってそう告げるとエレンが後ろを見てから次に、


「その地図は、人間は私たち以外現れていませんよ?」

「ここは魔物の多い森だから山賊なんかもいないと思って、私たち以外の冒険者表示などは全部削除しているわ。人間特有の魔力の波動を、消しているの。魔物と間違えて襲い掛かっても危険だしね」

「……なるほど。そういった細かい調節が可能なのですね」


 エレンが納得したように頷く。

 やはり私のこの立体的にこの周辺の状況が分かる地図の姿を理解してくれたのだろうか?

 それはそれでいいわ、と私が機嫌をよくしているとそこで地図の先で広い場所があるのに気づく。


 魔物が生まれる要素も、魔物が近づいてくる様子もない。

 そして大分、日も高くなってきて、そろそろお昼を食べるのによさそうな時間である。

 この先の広い場所の状況によるが、結界を張ってそろそろお昼にしてもいいかもしれない。

 

 今日は沢山食料を持ってきたのだ。

 そう思った私の前に、目の前いっぱいに花畑が広がった。

 しかも、そこに生えている色とりどりの花は、


「“ルシェの花”、これ薬草じゃない、こんなに沢山……後でつんでいこう」

「よくご存じなのですね」

「もちろん、冒険者になるために覚えたもの。でも良い香り……よし、今日はここでお昼を食べましょう、そろそろ……」

「そうですわね時間も時間ですし。リフェも嬉しそうですし」


 そうエレンの言葉を聞きながら、お食事係でもあるメイドのリフェが、その時一番うれしそうな顔をしているのを、私は見逃さなかったのだった。

 

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