正気ですか?
上手くいったので、私はそうリフェとエレンの方を見ると、二人して人形のように凍り付いて固まっていた。
どうしたのだろうと思っているとリフェが、
「わ、わた、私……今凄い魔法を使ったような……気のせい?」
「ではないわ。私の杖の力によって威力が増幅し制御、補正が為された貴方の魔法、それがさっきのあれよ!」
「あ、アレが私の魔法によって引き起こされ……まさか……そんな……」
「いい加減現実を認めるべき! さあ、その才能を腐らせることなく、育て上げて大輪の花を咲かせましょう!」
「さ、咲かせて、一体私をどうするつもりなんですかぁあああ」
「決まっているわ、新たな冒険にでるのよ!」
「いやぁああああっ、私は、私はもっと普通の令嬢にお仕えしたかったんですぅううう」
そこでリフェが涙声で叫んだ。
だが今の言葉で私はちょっと考えてから、
「普通の令嬢って、何?」
「普通ですよ普通。お淑やかで大人しく本を読んでいたり刺繍をしたりと女性らしい趣味を持つ穏やかな、そんな感じです」
「物語の読みすぎだと思うけれど」
「そうですか?」
「そうよ、侍女同士をけしかけて虐め合わせたり、配下において嫌な事をやらせたり、うさばらしでそんなあつかいをしたり、悪い事をして唆したり陥れする令嬢もいるのよ? 普通にお茶を入れるだけでも、その時の気分によってまずいと言い出して、何度も淹れさせたりとか、他にも色々あるのよね。聞いた話だけれど」
そう答えながら私は、ミズハの事を思い出しながら、そう呟いた。
本当に嫌な女だが、そういった女に落ちてしまう程度の男に私は興味がない。
こうやって離れられてせいせいしている。
むしろ冒険に出れた私は、こんな状況になって嬉しいくらいだ。
そう思っているとそこでリフェが、
「都市はやっぱり恐ろしい所です」
「あら、でもそのうち私はリフェをそこに連れて行こうと思っているのよね」
「! な、何で」
「あなたには才能があるからよ」
そう、この彼女、リフェ自身が乙女ゲームの真ののヒロインなのだ!
彼女を徹底的に育て上げて、あの王子を攻略し、ミズハに恥をかかせてやるのだ!
そんな私の“すうこうな”目的のために、リフェには強くなってもらわねばならないのである!
でも強くなったら手放すのがもったいない気もするし、お城に投入する秘密兵器にするのはやはりやめようか、等と考えているとそこでエレンに、
「リフェをお城に投入して、貴方はどうするつもりですの?」
「とりあえず城の男ども、イケメン数人落として逆ハーレム?」
「……正気ですか?」
「正気です。本当なら、リフェは今頃都市のお城に行って、お城の陰謀を暴いたり大変なことになっていたはずなのだけれど、うっかりメイドに私は雇ってしまったわけだし」
「……確かにリフェは都市に行こうとしていましたが……」
「“運命”を変えてしまったから、それの反動に備えている部分もあるのよ、という事にしておいて」
私は冗談めかしつつも、気がかりなもの一つについて伝えるとエレンは嘆息し、
「まるで運命を変えてしまう“聖女”のようですね」
「あ、それは楽しくていいかも。さてと、次はだれが頑張る? 次の魔物が現れそう」
「……次は私が。試してみたい魔法がありますもの」
との事で、私はエレンに次はお任せし、その魔物もあっさり倒せてしまったのだった。
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