私の実力!
丁度森が見えてきたので早速、“探査映像図”の魔法を使った私は、この森を立体映像にして表示した。
縮小された森。
今回は10km四方の“探査”を行った。
森は地上部であるので、地面にもぐったりする場所以外を探知している。
もっともダンジョンのようなものがあれば、今回の設定では入り口部分だけが表示されるようになっていたが、そういったものはこの10km四方には存在していない。
未知のダンジョンでも出てきたら面白いが、この森は街に近い。
つまり冒険者が行き来しやすい。
そんなものがあるのならとうの昔に見つかっているだろう。
「……特殊な偽装をされていない限りはね。っと、よし、この感じだとこの道をまずは右かな。早速魔物と戦闘できそうだし」
そう私が機嫌よく呟いて振り返ると、涙目になっているリフェと、凍り付いているエレンに気付く。
どうしたのだろう?
特に変な事はやっていないはずだけれど、と私は思った。
だがそこで彼女が凝視しているものに気付く。
つまり私の、“探査映像図”。
とても分かりやすくていいものだと思うが、それがどうかしたのだろうかと思っているとそこでようやくエレンが口を開いた。
「な、何ですの、それ」
「“探査映像図”。この森の全て……10㎞四方を探査してマップにして映像化したものよ。常に時間経過を反映して最新のものに塗り替えられるわ」
「そ、そんな魔法……一体いい靴の魔法を重ね合わせて……しかも一瞬で起動……」
「これが私の実力なのです(ドヤァ」
と言ってみたが、実はこれ、“聖女”の能力も一部使用している。
確かに彼女、エレンが驚くのも無理はない部分もあるが、使えるものは使う主義なのだ。
この程度の魔法ならば、幾らでも“誤魔化”しが効く範囲なのだから。
というわけで私は私の能力の片鱗を見せてから、
「これがあるから何時敵に襲い掛かられるかが全部わかるの。さて、行きましょうか」
「……あなたの自信がどこから来るのか分かりましたわ。一種の“天才”なのですね」
「そうよ。おかげでミズハには目の敵にされたけれどね、あの女、自分のレベルが私よりも格段にしただって全然分かっていなかったから」
「ミズ?」
「こっちの話。嫌な事は忘れて、遊びに行きましょう!」
「……冒険初心者用の森は遊びに行くような場所ではないのですが……」
エレンがそうぼやいていたけれど、私は地図を見ながら進んでいく。
表示されているのと同じ場所に現れたその魔物は二本の尻尾があるリスのような生き物だった。
但し私達を見て牙をむき出しにしているが。
まずはここで私の実力をお見せしよう、そう思って私は小さく呪文を唱えて杖を振る。
「“炎の舞踏”」
赤く光る炎が、まるで踊る様に散らばった。
けれどそれらは魔物へと収束していき、炎上する。
すぐにキシャアアアと悲鳴を上げてその魔物達は消え去った。
弱い魔物であったせいかそれほどいい魔石では無かったけれど、手に入る。
「どう、私の実力!」
「……能力だけはありそうですわね」
エレンが困ったように呟いたのだった。
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