“索敵”するの
こうして私は新しい、エレンという仲間を手に入れた。
後は森に行くだけである。
そう機嫌よく森に向かう私だが、先ほどから今日のお昼のお弁当である籠を持ったリフェが、
「ああ、どうしてこんな事に。どうして……普通の貴族のお家にメイドとして就職できたはずなのに、どうしてこんな事に」
「繰り返しさっきから同じことを呟いているわね。貴方には魔法の才能があるのだから、使うべき」
「……うう」
リフェが呻いて、それ以上何も言わなくなった。
とりあえずリフェにはこれからもっと強くなってもらって、魑魅魍魎が跋扈する宮廷内で、あの令嬢ミズハを倒して、駄目王子を手に入れてもらわねばならないのだ!
それに改心した後の王子は、確かゲーム内ではまともになっていたような気もするし。
ただ、私は好みではなくて、もっと別の……。
「ん?」
今何かが頭の中をよぎったような気がしたが、多分それは気のせいだろう。
そもそも、それほど乙女ゲームの知識を私自身まだ全部思い出しているわけではない。
その内、そちらの方も何とかしようと思うが、まずはその前にすることがある。
つまり、このリフェをどんなものでも“力”で対処できるような能力者にするのだ。
そこまですることが出来たなら、後はあの宮廷に放り込んで遠隔操作(音もゲームの攻略法を仕込むこと)をすれば大丈夫だろう。
上手くあの女をザマァさせればそれはそれで私が楽しい。
だがそういったものは、いざとなればやらなくてもいい。
だって私は冒険者になりたいのだから!
そのための有能な仲間の候補は現在二人ほど手に入れた。
いずれは五人ほどで必殺技を打てたら楽しいよね、とは思う。
だがこのくらいの逸材が後二人ほどいるだろうか?
「女の子に限定しなくてもいいかな? でもせっかくだから女の子五人で必殺技もしてみたいわね」
私の呟きを聞いたのかエレンは深々と嘆息して、
「……私は今回だけのつもりです。……そして、今回だけで、マリナ嬢、貴方をもう二度とこんな冒険にはいく気にはならなくなるようにさせます。たまたまダンジョンではそれほど魔物と遭遇しなかったという運の良い方のようでしたが……」
「それは、あのダンジョンの主を拘束できる程度の能力を持つ私に言っているの?」
「……それでも危機に陥りました。実戦経験の無い者は危険です。そもそもいつどこで、魔物が襲ってくるか分からないのに……」
「え? 分かるよ?」
とうとうと危険性を語っていたエレンがそこで言葉を止めた。
次に私をじっと見つめてから、
「……突然魔物が襲ってくるのに、どうして分かると? 予知能力か何かがあるのですか?」
「いいえ。“索敵”するの」
「“索敵”? 確かにそれでどれくらい近づいて来るのかは分かりますが、常にその魔法で検索を?」
「ええ、常時展開すればいいだけでしょう?」
「それでも馴なければどれくらいの魔物が、近づいているのか分からないのでは?」
「……なるほど、その辺りに“誤解”がありそうね。ふふ、では、もうすぐ森につきそうだし、ここのあたりで……“探査映像図”」
ダンジョンでも作った、地図の魔法を使ったのだった。
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