“価値”もない
やって来た別荘は、それほど大きくはない。
事情が事情だけもあり、私の事をよく知らないメイドといった使用人数人がこの家に雇われている。
彼女達は私が悪役令嬢と呼ばれている事すら知らないだろう。
とある貴族の令嬢が療養に来ている、彼女が知っているのはその程度のはずだ。
「それぐらいが、何かをするには丁度いいわね、と。ここには同い年のメイドがいるんだ。名前はリフェちゃん。なるほど~、ん、リフェ?」
そこで私は何処かで聞いた事がある名前だと思った。
そしてすぐに私は思い出した。
「そうそう乙女ゲームのヒロインがそんな名前だったはず。……でもこれから、ゲームが始まれば私が悪役令嬢らしい行動をするわけで、その私は何故か王宮周辺ではなく別荘に居て……ゲーム、のあれが成り立つのかな」
私は考えてみたが答えは出ない。
そのリフェも、本当に乙女ゲームのヒロインか分からない。
確か巨大な魔力を持つもドジっ子属性のために魔法を失敗しており、周りからはそんなに強いと思われていなかったはず。
けれどのちにその力と清純なその性格を見染められて、私が婚約破棄された王子とくっつき国が栄したはず。
でもそういえばあの寝取り女ミズハをゲームでは暗殺していたという噂もあったような。
「でもあの女、殺す“価値”もない。私の人生の幾らかを傾ける“価値”すらない物。だからその方向には動かずにいて……そもそも私あの王子好きじゃないし。これはこれで運がいいのかも。さて、リフェちゃんだけれど、少なくともメイドをやっているとは思えないから同名の別人でしょうね」
私がそう呟いた所で、私の部屋のドアが叩かれたのだった。
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