余裕である!
悲鳴を上げるリフェを連れながら私は自分の敵に手をかざす。
「“導きの炎よ、わが手に宿れ! 【義手の炎】”」
攻撃用魔法の一つ、炎の魔法。
かざした手の手前に赤い光を放つ魔法陣が現れ、その中心部分に私の身長の半分程度の高さと幅の炎が現れる。
それをぐっと握ると、その炎が蝙蝠の魔物達に飛んでいく。
今回現れた蝙蝠のような魔物は三匹ほど。
飛んでいる関係でそれぞれが広がっているが、一度に倒したいのであれば一つに固めた方が効果も高い。
だから私はこの魔法を選択した。
手の指を右に動かすと炎が右に動く。
手の動きに合わせて、魔力で作り出した炎が飛ばした後も動かせるのだ。
魔物は動く対象物であるため、放出系ではそのまま当てようとしても避けられてしまう。
ならば生み出したものをさらに調整できれば、確実に相手に当てやすい。
ただ、こういった放出した魔法を遠距離から操作するのは非常に難しいとされている。
だが、“聖女”でもある私にはこの程度造作もない。
余裕である!
「今日この日のために練習を繰り返してきたの! いっけぇぇぇぇ」
そして蝙蝠のような魔物は炎に包まれて、小さな悲鳴を上げながら消失した。
後にはコロンと魔物の持つ魔力の結晶化した石と、蝙蝠の羽の一部が残る。
この蝙蝠の羽は、実は土に植えると水はけがよくなる効果があったりする。
また、加工すると、蝙蝠系の魔物に同族と認識させて襲わせない効果や、何かで足を踏み外した時の落下速度を和らげる効果などがある。
こういったダンジョンによってはそういった“人”を傷つけるための罠が存在する場合があるという。
もっともそれは私が本で読んだ知識だが。そこで、
「ま、魔物を倒したからもう帰りましょう」
「何を言っているの、次はリフェの番よ。よし、こっちに魔物がいるわね、落とした魔石を拾ってそちらに行くわよ」
「いやぁああああ」
悲鳴を上げるリフェを連れて私は、更にダンジョンの奥深くに入っていったのだった。
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