私の計画が
リフェを連れて私は走っていた。
「ど、何処に連れて行く気ですか!?」
「ダンジョンよ、そのために装備を幾らか整えてきたわけだし。あのスリにさえ合わなければ気づかれなかった」
小さく呻いた私は心の中で思う。
スリにあって財布をすられたのも気に入らないが(もちろん気絶して倒れていくときに財布は回収済み)、それをたまたまリフェの知り合いと関係のある人物に助けられてしまった点だ。
「折角、衛兵に突き出す前に移動出来たのに」
私は不運を呪う。
だって衛兵に突き出したら、身元を聞かれそうじゃないですか。
そうしたら公爵令嬢マリナだと答えないといけない。
目立つ、そして私がこの周辺を歩いているのを気づかれる。
普通の人達にはまだ、そこまで私の情報はで回っていてほしくないのだ。
何しろ好き勝手に町やダンジョンに出入りして、“聖女”の力を使うなどしたいのだ!
そういった目的があったというのに、やはり、彼、ロランと接触したのはあまりよくなかったようだ。
とりあえず、リフェと一緒に居たエレンは私が公爵令嬢だと、気づいていない。
この別荘に来る時に、親に公爵令嬢なのは伏せて静かにしたいとお願いを私は事前にしておいたのだ。
事情が事情だけに、誰も知らない場所だから身分を隠したい、という願いはそれほど不自然ではなかった。
そしてこれは目立たないための布石だったのだ。
私が自由に行動できるための!
そのために細心の注意を払っていたというのに、
「やっぱり、何だか“気に入らない”。私の計画が……っと、着いたみたいね」
そこでリフェの手を引き走ってきたその場所にある、ダンジョンの入り口の看板を見て私は、小さく笑ったのだった。
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