4-2
次の日の朝、いつものようにやってきた小夜ちゃんに、例のサイトのことを伝える。
もちろん、サイトのURLは槇から聞き出してある。
「……これは」
「随分前に槇が作ったサイトらしい。小夜ちゃんがいない日に客が来ない原因が、これだったわけだ」
「………」
小夜ちゃんは携帯を見つめながらずっと俯いていた。ただ、携帯を持つ手が僅かに震えているところから、小夜ちゃんがお怒りだということが伺える。
恐ろしい。
この先何が起こるかわかったものではない。
「それで、槇さんは?」
「君に謝るように言っといたから、そのうち来ると思うよ」
「そうですか……」
小夜ちゃんはそう言ったきり、開店の準備に戻ってしまう。
何故か無言の圧力が私に襲いかかる。
普段の行いが悪いからだろうか。
そうこうしてるうちに十時を回り、ドアのプレートを〝OPEN〟に変える。その直後に隣の階段から槇が下りてきた。
「おはよう……。小夜ちゃんは?」
「中にいるよ」
「やっぱ、怒ってる?」
「もちろん」
槇は絶望の表情を浮かべながら店内に入っていく。
そして小夜ちゃんと目が合うなり、土下座した。
「すみませんでした」
「………」
恥も外聞もないが、最善の選択と言えよう。
少し哀れな気もしたが、よく考えたら自業自得なので静観することにする。
「……何故、こんなものを?」
「暇だったので、つい……」
最悪な動機だった。
「私のプライベートとか気にしないんですか?」
「むしろ、一部の情報を公開することによってストーカーの防止効果が……」
「言い訳ですか?」
「すみませんでした」
氷のように冷たい小夜ちゃんの視線に、槇は既にズタボロな様子だ。
これを普段から耐えている私は、もしかしたら自分の思っている以上にタフな神経をしているのかもしれない。
もしくは、あまりにも怒られすぎて感覚が麻痺しているとか。
……悲しいな。
「とにかく、すぐにサイトを閉鎖してください」
「はい。仰る通りに」
「次やったら本当に許しませんよ」
「え、今回は許してくれるのかい?」
「まぁ……初犯ですし、被害はアデプトの売り上げだけですし」
「って、私のことは気にしてくれないのかっ!」
店の売り上げが下がっても小夜ちゃんへの給料は変わっていないのだから、実際にダメージを受けているのは私なのだ。
しかも、槇はお咎めなしですか?
「ありがとう小夜ちゃん! この恩は絶対に忘れないよっ」
「ところで槇さんは、お寿司とピザ、どちらがお好きですか?」
「……っ!」
実は許してなかった!
一度油断させてこの仕打ち。
今日の小夜ちゃんは悪魔が乗り移っているようだ。
「……ピザ……かなっ。……なんで、そんな質問を?」
「いえ、なんとなくなので気にしないでください」
「……あ、ああ。……出来れば、色んな種類にしてもらえると、嬉しい……かな」
「なんのことですか?」
「いや、なんでもないです……」
見ているだけで悲しくなってくる槇の背中。
だが、この程度すんだことは幸運と考えるべきだろう。
しかし本当に宅配ピザか……。




