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資源革命 マーチ・シルフィード  作者: リヴァイアス
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3話 乙女の秘密 風子先生の過去 後編

前回までのあらすじ


Z.L.Fの襲撃事件から翌日。休む暇も無く唐突に日本政府の特殊部隊が風ノ森環境工学校を制圧。普段と違う日常の中生徒らは保護され風子だけが取り調べを受けることに――。 敏腕国際警察ローエンの卓越なる尋問により風子のこれまでの経歴が明らかになっていく――。


「ならば、私は――」

 

――次の瞬間、車庫の扉が爆風と共に吹き飛ばされると 重武装をした隊員らが押し寄せてきた。

 訓練された彼らは素早い動作で部屋中をクリアリング。

 煙の中でも暗視ゴーグルによる索敵で探すが 目標と思わしき人物の人影など無い

 既に(もぬけ)の空と化した車庫だった。


「ターゲットが居ないだと…?」

「外にも出た様子がありません 以前施設内に居ると思われます」

「ならば何処へ行ったというのだ?この施設内は全て包囲しているはずだぞ!!」

「隊長っ!」


 一人の解析班が端末のモニターを見せる――


 そこにはこの施設を立体化し細部まで再現した3Dモデルがあり そこから更に

 自分たちの知らない地下通路があることを確認する。


 ■■■


 地下通路――薄暗くあまり清掃も行き届いておらず通路の端にはダンボールや不要な書類などが

積み上げられている。静止したような無人の空間で激しく何かを叩く音が響き渡る――


 ――風子はダクトを蹴り破り地下通路の廊下に辿りついた。

 そして、開かずの扉を前にして、あの時田所に言い放った言葉を思い出す――

 

 「私には使命があるから――」


――使命なんてカッコつけて言ってしまったが、本当は開けたこともない扉の向こうの

 謎を解明しない限りここを離れられない――ただの探究心なのかもしれない。

 だがしかし、この研究施設に来てからというものずっとこの扉の事が気がかりだった

 父が使っていたという研究所 ここの資料や設備を調べても他の研究員とやっている事は対して変わらなかった

 ならば、なぜ父はこの開かずの扉を残して消えたのか――


 風子にとってそれがずっと気がかりだった。色んな事を試してこじ開けようとしたがビクともしない カードキーを差す場所もないしドアノブにも鍵穴が見つからなかったのだ――


――そんな曖昧な扉に今自分の置かれている状況を託すなど、無謀にも程がある。 

 しかし、風子はその僅かな可能性に掛けてみたいと思ったのだった――


 開かずの扉の前に立ち尽くす風子


「もう ここに賭けるしかない――」


 握り締めたドアノブ――

 全てを託すようにノブを回す――すると



ガチャリ――



 開いた――今までビクともしなかった扉が重さを感じさせないぐらい軽く開いた。


「……っ?!」


 しかし、詮索している猶予などない 既にこの地下室の存在も知られているだろう――

 

 奥へ――また奥へと突き進む。まるで迷宮ラビュントリスのような薄暗い通路。

 風子は意を決して突き進む――この先に父が何を残したかったのか それを知るために

 しばらくすると工業物の明かりが灯ってきた 出口だ――



 そこから広がる景色は研究所とは一線を超え 全く別の世界だった――


 立ち上るオイルの臭い――鉄の策で覆われたハンガーデッキ――地に接する高価な機材。

 瞬時にここは“製造場”であると推測出来た。


 よくわからないチューブや配線が自由に遊び、まるで長期間放置された家にまとわりつく樹木の如し――


「一体、お父さんは何を研究していたというの?」


 行方不明になった父親に対しての疑問が改めて芽生える。


「ん…?」


 周りが異世界だったが故に気がつくことに遅れたが地を這うチューブ達はある一点に向かって

 集まっている事に気がついた。


”純白色のE.L”

 風子は煙や泥でまみれた白衣を脱ぎ捨て、駆け寄った。近づくにつれて見たこともない形状 エンジン 大きなアンテナ

 このタイプのE.Lは見たことがない――


「E.L?初めて見るタイプね――」


 全長は18mぐらい かなり大型で搭載されている出力エンジンの形状も今までのE.Lと明らかに違う。

 かなり最新のようで少なくとも第三世代以降のものであると推測する――

 特に気になったのが、上部に付いている複合型デュアルモニターと大型センサー。まるで獣の耳のような形状で

 全長から腰周りまで垂れている。腰には何かに使うのだろう?スカート状の鉄板が何枚にも連なって足を隠している


 胸部に当たる部分には座席シートが突出しており丁度ハンガーの目の前で止まっている。

 長期に渡って放置されていたせいか、座席に少なからずホコリが被っていたので払う――

 シートに腰掛けても何も動かない――やっぱり長期間放置されていて尚且つ整備もままならなっていないのだからしかたない――。

 

――ブォン!


 突然目の前のHUDモニターが作動しダウンロード画面が出てくる。すると――目の前にあったホログラム装置に砂嵐が投影される。

 次第に砂嵐が鮮明になってくると徐々に人の体として形成されていき やがて一人の女の子が現れた。


 だが、女の子は目をつむったまま佇んでいるだけ――


 ホログラム投影? 何処かで誰かが遠隔操作しているのだろうか?様々な憶測が風子の脳裏を過る――。


 そんな風子の推理を逆なでするように突然としてホログラム体が動き出す。 

 つぶらな瞳で見つめられたかと思うと唐突に話しかけてくる


「あなたが、風ノ木・S・風子?」

「――そう…だけど……?」

「あー!よかったー!! もし別の人にコックピット座られたらどうしようかと思ってたんだよねー!」

「あなた……AI?」

「ごめんごめん 紹介が遅れちゃったね 私は当機体担当のAIプログラム『ユニフィケーション・リンク・システム』よ」


――陽気そうな電脳空間の住人。

 2020年たった今でさえようやくAI技術が発達し始めた頃ではあるがここまで感情表現豊かな

 AIは見たことがない――本来AIとは”人工的に作られた知能”の意味であり事前にプログラミングが必要である。

 しかし、現在風子の目の前にいるこのAIはそれを覆すかのような感情表現 声帯調整 思考プログラムどれをとっても

 明らかに現代の技術を逸している――。


「にしても、久々に外の景色を見ることができたわ やっぱり電脳空間よりこっちが断然いいわね!」


――ハッと自らの置かれている状況に振り返る

 自分の入ってきた入口からは堅いブーツの足音がいくつも連なった音が跳ね返ってきている。


「私、追われているの このままじゃ奴らに捕まって一生モルモットにされちゃう!何か脱出する方法はない?!」

「OK!まかせてっ! 私はあなたの父、新風からあなたの事をサポートするよう頼まれているのよ」


 ふと耳にした父の名前。体が一瞬硬直してしまう

 それまで私以外に父の名前を口にするのは研究者仲間だけだっただけに驚きが大きい


「あなた、なぜ――」


 いや、今は詮索している場合じゃないわね……今は目の前の状況打破が最優先。


「ユフィー!どうやったら動くの?」

「ゆ、ユフィー??」

「ユニフィケーションリンクシステムなんて長ったらしくて呼びにくいでしょ?あなたにニックネームを付けることにしたわ」

「AIにニックネームを付けるなんて変わっているわね……OK!それじゃあ起動プログラム開始するよ!」



 ユフィーの言葉通り動き出す”白銀"のE.L 全身の電圧線に電力が供給されはじめ各部LEDがシステム良好のサインを下す――

 それにあわせ、突出していた座席シートは縮小しコックピットへと収まる。

 各部の排熱盤から湯気にも似た排熱を吹き出し 長いあいだ被っていたであろうホコリが徐々に削ぎ落とされる


「――ツインスティックに付いている5つのボタンはそれぞれ左右のマニュピレーターに依存しているわ。押す強さで

 握力調整が可能よ。人で言うところの握りこぶし見たいなものね」


 コックピットの周りは180℃モニターで画面を遮る機材は最小限に抑えられている為間取りが広く住居性も

 そこまで悪くはない。代わりに複雑なHUDモニターが展開され些か見づらい気もしなくはないが、それは後でプログラムと

 OSを書き換えれば問題ないだろう――




――やがて、通路から出てきた重武装の兵隊たちがハンガーデッキに集まってくる。構えた小銃で威嚇射撃を行うも

 頑丈な装甲には効かなかった。


「未確認のE.L確認 地上部隊は警戒を怠るな!」

「隊長!これ以上の追跡は不可能です!我々もE.L隊で対抗しましょう」

「…しかたない!全員地上へ戻るぞ!」



■■■



 ウィンター・ラビットの立つデッキが徐々に地上へと運ばれる。隠されていた地上ゲートが開き付近にいた量産型E.Lが 

 戦闘体制で構える


「何か来るぞ!全員構えろ!」

「てぇーっ!!!」


 地上に顔を出した瞬間に一斉に機関銃で掃射が始まる。しかし、その弾丸の全ては弾頭先が曲がり地上にパラパラと

 拡散していく。それは相手に対して当機体の頑丈さを見せつけてやる事が出来るだろう。


「な、銃が効かないだと……ならばっ!」


量産型E.Lの腰部ウェポンラックから対鉄板溶接用ブレードを瞬時に取り出し特攻する――


「馬鹿者!勝手な行動はするんじゃない!」

「でぇやああああ!!」


「――…っ!!」

「なにぃっ?!」


 特攻攻撃が大きく外れ 懐に隙が出来た事を確認すると膝での蹴り上げ―― 強い衝撃とパワーでその量産型E.Lはシステムフリーズを起こした。

 その一部始終を見ていた他のパイロット達も一瞬たじろいだ。


「なんだあの機体はっ!データにない機体だぞ」

「わかりませんっ!解析班に急がせていますが……うわっ!」


 俊敏な動きで次々と敵対E.Lの急所を付いてシステムフリーズさせていく風子

 その理由は、となりでユフィーの的確な指示と風子の理解力と異常なまでの集中力が合わさっていたのだ。


「――ユフィー!次はっ?!」

「2時の方向!」

「次っ!」

 4体もいたZ.L.FのE.L小隊は瀕死の1体だけを残すだけとなった


「くっ……せめて、映像資料だけでも……」


 E.Lのセンサーカメラが記録しようとした矢先 映像は砂嵐となり以後の映像は途切れた――



■■■


 ――ピコーンピコーン


 全ての敵をフリーズさせ、敷地内に佇む風子の操るウィンター・ラビット

 そこへ一通の通信が舞い込んでくる。


「ユフィー」

「OK、今繋げるわ」

「――初めましてミス風子」

「あなたは?」


 通信映像に写ってきたのは背丈の小さい年配の女性。どうやら風子の事を知っているようである

 しかし、風子からしてみれば誰存じぬ相手であり もしかすれば新手の敵では――

「安心して頂戴ミス風子。私は『S.L.F』の人間よ あなたのお父さんには随分と世話になったわ」


「お父さんを――知っているのですか?」

 それまでの不信感はぬぐい去られ、父の名前を出されたとくれば恐らく『S.L.F』の人間というのは間違い無い――



 確信した風子はその女性の言動に耳を傾ける事にした

「紹介が遅れたわね。私は田中マナミ 風ノ森環境工学校で最高責任者を務める者よ――」

「こちらこそ疑ってごめんなさい。それで、私に何か要件でも?お父さんの事を知っているようですが…」


 とりあえず、降りて話すべく地表に降りる風子。ウィンター・ラビットはAIを搭載しているのでユフィーの思惑一つで

 簡単に操作出来る。地表には如何にもな黒い長車にボディーガードを添えた女性が立っている。



――地表に降りた後は車の中でマナミは私の身に起こった出来事を詳細に説明してくれた。あの黒づくめの集団がZ.L.Fの特殊部隊だということ――

 父についてはマナミの方もあまり分かっていないらしく分からずじまいだったけど、協力してくれるって言ってくれたわ――




■■■




静止したような視聴覚室の空間――

長机にあったレトロの録音レコーダーのLEDランプがふと消える

手にとったローエンは中身のテープを取り出し視聴覚室前にいた隊員に早急に本部へ届けさせた――



「これで全て話したわよ――」

「………」


 沈黙するローエン――


「なんとも信ぴょう性の低い話だが……いいだろう」


 おもむろに扉前の隊員にハンドサインを送る――教室前の扉が開きようやく解放された風子だった――

 

「待ちな――」


 急ぐ風子を足止めするローエン 懐のポケットから真新しい写真がひょっこりと出てくる


「お前さん、こいつに見覚えはないか?」


 裏返った写真を見て風子の体が硬直する――それはとてつもない事実だったからだ――


「その子!? いったいその写真をどこで?!」

「こいつは現場検証の際に撮った証拠写真だ 本来なら一般に見せる訳じゃあないが――」

「何処にいるの――?!」

「お、おう……」


 あまりの剣幕模様でたじろぐローエン

 住所と病院名を記したメモを切り離し差し出すと風子は一目散に教室を後にした


 

「やれやれ 何処かで昔みたようなおてんば娘だな……」


 風子は気がつかなかっただろうが、静かにその様子を見守っていた人物の姿を――

 取調室から出てきたローエンが話しかける


「忙しい娘で手が焼けるな」

「好奇心旺盛と後先考えず行動するのは父親譲りかしらね。」

「あの気品と綺麗な髪は母親に似ちまったんだろうな」

「まったく、何処をほっつき歩いているのかしらね あの男は…」

「元々あちこちフラつく野良猫見たいな奴なんだ。ゴキブリ並の生命力ももっているしそう簡単には死なねえさ」


ローエンは懐にあったお気に入りのタバコを口に加える――

スポッとタバコが口先から無くなったと思うとマナミが喫煙袋の中に押し込めていた――


「言ったでしょ? 校内は禁煙だって――」

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