表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
資源革命 マーチ・シルフィード  作者: リヴァイアス
1/6

1話 風の吹いた日

初心者です。


色々指摘くださると今後の活力になると思いますのでよろしくお願いいたします。

朝焼けもまだ眩しい時間。既に生徒達は各クラスで授業を受け

静止したように静かな校内のグラウンド。

そんな中、とあるクラスで異様な光景があった。


男児児童と女性教員が教卓前でにらみ合う

「先生……今日こそは……」

「いつでもかかってきなさい」


次の瞬間、男児児童から仕掛けて行き……



―― 「ぐおぉぉ!!また赤点だぁ!!!

「灯屋くん!放課後ちゃんと居残り勉強しなさい! 次、眞鍋さん」

渋々と自分の席に戻る少年の名前は灯屋ヒノト(あかりやひのと)

同じクラスメイトの柏崎みらいがニヤニヤしながらヒノトへ声をかける

「はっはーん まーた悪い点数取ったのね。お母さんに知れたらどうなることやら……」

「やめてくれ!それだけはマジで!」

「コラ! そこ、静かに座っていなさい!」



■■■



一時限目の授業が終わり、次の授業に備えて職員室で準備をする風子

「よぉ 新米! 調子はどうだ?」

「さっきの授業はテストの返却だけでしたからなんともありませんよ。それより

 増田先生も校内ではお酒控えた方がいいですよ」

「まぁまぁ硬いこと言うなって。一緒にどうだい?」

スッとお酒の入ったグラスを差し出す増田の手を返すかのように払う風子


「この後、環境工学の授業なので遠慮します」

「大丈夫だって!それにほら……」

増田先生が酒ビンをラッパのように舌を転がして味わっている

「あぁ、心配ねぇ サメのションベンは入っていないな」

「そういう問題じゃなくて!……はぁ、とにかく私は行きますから……」

もはや言い返す気も無くなった風子は職員室を後にした



■■■



――「増田先生の酒癖にも困ったものだわ……」

「ふふ、そうね」

「ちょっとユフィー、笑い事じゃないのよ?」

風子の肩に座り込む半透明体のホログラム 名前は『ユフィー』

2020年の現代社会においてAI技術は飛躍的に進歩し個々の個性を持つほどまでに進化した。しかしその費用やコストはそう安いものではない。AIと言っても限られた機関の

情報収集や蓄積 フォローを目的として運用されるケースが多い。

学校で運用されるケースも年々増えてきており、教員らの手助けとなっている


「ところでユフィー、次の授業内容の資料は集めてくれた?」

「大丈夫だよ。風子の電子端末に送っておいたわ 教室に入ったら電子黒板の方にもコピーしておくるよ」

「いつも助かるわ 教える事がたくさんありすぎてレポートまとめているだけで精一杯だもの……」



■■■



――日本海海上―― 


約50キロ地点で一隻の天然ガス貯蔵船『LNGタンカー』が海原に揺れる。

――しかし、それは外界を欺くためのカムフラージュだ

船内の設備は全て武装化され、ガス貯蔵タンクは『E.L』と呼ばれるロボットのハンガーに改造され

数多くの技術者達が最終チェックをしているのだった

その一方で、ハンガー片隅には不似合いのBRAがあり 4人の男女が談笑で時間を潰しているのだった。


――「カントクぅ、早く取ってよ」

「ぬぅ、少し黙ってろよ……っ!」

「っていうかー カントク直ぐに表情に出るからわかりやすいんだよね」

「やれやれ、二人共まだやっていたのか…」

自動ドアの開く音がすると全身コートで包んだ男がカウンター席に座り込む。

「いらっしゃい ヒロミツ」

「ぐぬぬ……」


カントクと呼ばれた大男は体系に不釣り合いなトランプで目先の少女の差し出す数枚のトランプカード

を選ぶ事に躊躇しているようだった。

「ほぉら 早くしてよー もう何分またせてくれてるのよ」

「くっそー!これだっ!」

「はい革命♪ これで6勝全敗ね」

「がー!!!!」

ダイテツの声にならない奇声が響いた


「飽きないわね二人共 食事が出来たから持って行って頂戴」

「カナタよ、僕のコーヒーはブラックで頼む……」



――――この空間に奇妙な4人組が揃って昼食を取る

大柄の男は玄馬ダイテツ 

年頃でちょっとワガママ気質なネイ・シューティー

技術者で頭脳明晰な群青ヒロミツ

3人の世話役の空野カナタ

彼ら4人はZ.L.Fの誇る超エリート戦闘員である



――――Z.L.Fとは、地球環境改善を目標に掲げ 発達しすぎた技術はいずれ人類を衰退させると述べ

人類への報復活動を主な活動としている。しかし、その活動内容はほぼテロリストに近いと言われる

その構成員の数は数千人と言われ、世界各地でE.Lを使った様々な活動を行っている。




―――E.Lとは 『Eco・Loide(エコロイド)』の略称であり元々は環境改善を目的として人が立ち入れない場所での環境改善 人命救助を目的として作られていた作業ロボットである。


地球温暖化と資源破壊の影響で震災や天災による被害が多くなった現代で、今後来るかもしれない大災害において人力ではあまりに力が足りない事を悟った人々は、作業ロボット開発に勤しんだ。

ロボットならば危険を犯さずかつ人命を守る事ができるだろう。しかし、それを悪用する人もまたいる。それがZ.L.Fである。


――――4人が談笑している中、一人の漆黒マントを羽織った男性がBARへ入ってくる。空野カナタはその姿を見るや険しい表情へと変わる。ヒロミツは飲んでいたコーヒーを飲みながらその気配を察知する。

ダイテツとネイもその存在を感知し、先ほどのトランプも投げ捨てる。


「ジーニアス様!お待ちしておりました」

「構わん 楽にしろ……」

直立不動で立ち上がる4人対して号令解除を促すジーニアス その容姿はマントでほぼ覆い隠されて

おり、表情も仮面を着用しているので口元以外の表情が全く読めないのだった。

「先ほど、報道班から連絡があった。『欠片』の居場所が判明らしい」

「分かりました ではただちに……」

「おっと待った!」

ダイテツが唐突に名乗りを上げ 前へと出てくる

「この任務は俺が引き受けるぜっ!もちろん、あのハンガーのでっかい奴に乗ってな!」

「ふむ、いいだろう。丁度キペクロスの最終テストも行いたいと思っていたのだ」

ポンと拳を叩くヒロミツは納得した表情でダイテツを迎え入れる

「座標は司令部から送られる ダイテツ 上手くやれ」

「ははっ!ジーニアス様の仰せのとおりに……」――――




■■■



――――風ノ森環境工学校 4時限目の時間――――――



風子は4時間目の始業ベルと同時に教卓に付く。あいも変わらずクラスはざわめき落ち着きがない


「ねぇ〜風子〜 この時間はグランドでスポーツしたいー」

「そうだよ風子〜 サッカーやろうぜ!」

だらけた声で呼び捨てをするのはクラス一のスポーツマン 灯屋ヒノトだった。彼はクラスの中で一番のスポーツ少年で便乗する女子は柏崎みらい クラスをまとめる小さな指導者である



「体育は午後でしょ 今は環境工学の授業中なんだからちゃんと集中しなさい あと

 先生と呼びなさい!」

しかめっ面でヒノトを叱る あまり反省のある様子は見受けられないのだが……



「まったくもぅ……さて、それではみんなに現代に至る資源革命の工程については以前話したわよね?」

「資源革命……今から20年程前に突如として発見された未知のエネルギー体『C.L.F粒子』によって現代の

 既存するエネルギーに革命を起こした事を指します」

「さらに研究開発が進み以降は他発電以上の成績を残した事から現代のメインエネルギー源にもなりつつあるけどまだまだ実用段階ではないわ」


――――「風子せんせー 既存のエネルギーって具体的にどんなのがあるんですか?」

「いい質問ね 従来のエネルギー発電の大半は原子力発電と呼ばれる常時燃やし続けて熱エネルギーを蓄える方法よ この技術は増加する人口を支えるのにはかつてない程のエネルギーを生み出したわ……でも」


タッチパネル状の電子黒板から様々な画像データが展開されていくとその

一枚の画像に指示棒で注目を集めさせる


「でも……この発電方法はたくさんの問題点があって それは私達人間への遺伝子を崩壊させてしまう恐ろしい負の産物でもあるのよ。実際に80年代中期に海外でこの発電所から放射能物質が漏れ出して大変なことになったわ」

「それからは、より安全でクリーンなエネルギー作りにシフトして以降は 風力発電 波力発電 太陽光発電などいろんなエネルギー生成方法が考案されたわね」



――今から20余年程前 世界的な資源枯渇問題を抱えていた人類は新たなる資源の調達を余儀なくされていた。

そこに颯爽と現れたのが『C.L.F粒子』と呼ばれる新技術である。出処の不明なものの人類へ良い影響を

与える粒子に間違いはなかった。

謎に包まれてはいるものの、徐々に開発が進み、その後、一般向けへの研究と開発が解禁されると瞬く間にエネルギー市場を独占したのは言うまでもない




――「一見、無限に湧くような夢の資源かもしれないけど この粒子もまだまだ謎がいっぱいで、いつこの粒子の供給が

 止まるかなんて予測出来ない。だから、いかなる資源であれど ちゃんとした管理と節約を心がけること」

指示棒を黒板へ当てて注目を集める 


「一人で取ってみれば有り余る程の資源でも、それを地球全体で分かち合うとなると膨大な量になるわ

 だから、資源は常に大切にしないといけないのよ」

淡々と説明を続けてきた風子は更に電子黒板の資料を展開して細かく説明していく


――「あーあ、始まったよ風子先生の環境工学力説 こりゃ1時間とまんねーな」

「そりゃ元環境工学の主任やってたって噂だしぃ?」

「へぇ?それって誰が言っていたの?」

「隣のクラスの子が言ってたんだよ なんか超有名な研究所だったらしいし」

突然の担任の秘密に興味津々のクラスメート達。風子の話そっちのけで盛り上がるがしかし……


「コラッ!授業中は授業に集中しなさい!」

突然目の前にやってきた風子に驚いた集まりは即座に解散させられたのだった

「今は環境工学の時間よ これから先あなた達にも必要になることなのだから、しっかり勉強しなさいとあれほど言っているじゃない!」

一喝すると 教卓へと戻る風子……その時は唐突に訪れたのだった




――――突然の校内アラームが鳴り響き学校内が騒然とした空気に包まれる。緊急アナウンスが流れ始める





『緊急連絡 付近にZ.L.Fと思われる襲撃を確認しました。生徒の皆さんは大至急体育館へ避難してください!』


騒然とするクラスで風子が冷静に対応する

「授業はここまで! みんな一時体育館へ避難するわよっ!」

手際の良い風子のおかげで生徒らは動揺することなく整列し 風子を先頭に体育館へと向かっていくのだった



■■■



――各学級が先生を先導に体育館へと集まる。6学年全てを収納してもまだまだ広さを誇る風ノ森環境工学校のシェルター兼体育館は他の学校とは比べ物にならない創りだ



――各クラスの先生が生徒の点呼で自分のクラスの安全を確かめる。しかし、風子のクラスではトラブルが……

「先生〜 ヒノトとみらいが居ませーん」

「えぇっ?!」

出席番号の近い生徒が伝えてくる。体育館を見回してもあまりの広さと人数の多さに見回すだけでも一苦労である

「もぅ!あの二人は何やっているのよっ!!」

「風子先生、何かあったのか?」


風子に助け舟を出したのは職員室で一緒だった増田先生だった。

「私のクラスメイトが足りないんです!私、探してくるから私のクラスをお願いします!」

「えぇっ?!」

ギョッとした増田先生だったが、言葉を発する前に既に風子の姿は人ごみに消えていた……

「なんだか知らんが、5−3組は風子先生がくるまで俺の指示に従うように!」



■■■



――風子は自分のクラスから体育館までの道のりを駆け回っていた。その都度みらいとヒノトの名前を叫んでいく

「まったく、あの二人はいつも私の言うことを聞かないっ! こんな緊急事態なのにほんっと何考えているのっ?!」

自らの受け持つ5−3年の教室に戻ってもやはりその姿はなかった。途方に暮れる風子はふとグラウンドを見るとそこには風子の探していた二人の姿が見えた。

ようやく見つけた二人に大声で叫ぼうにも、校内緊急アラームが鳴り響き風子の声はかき消される

しかたなく、校内の階段を降りて直接グラウンドへ向かうのだった。




一方でヒノトとみらいの二人は普段見慣れないZ.L.Fとこの緊急時が珍しく、興奮した様子だ

普段は授業でつまらない時間だが、緊急事態という非日常の甘美な誘惑にいてもたってもいられないのだろう。

「すげぇ、今まで防災訓練とかやったことあるけど実際にZ.L.Fが来るとこうなっちゃうんだな!」

「ねぇ、ヒノト もういいでしょ?早く体育館に戻ろうよ…今ならまだ集団に紛れて誤魔化せるよ?」

「バカいってんじゃねぇよみらい! こんな出来事滅多に無いし、どうせ風子のことだから

 俺たちがいなくても気がつかないだろ!」


無邪気に状況を楽しむヒノトと不安な様子のみらい 彼らの危険は刻一刻と迫っている

学校のすぐ近くは爆炎と煙が舞い上がり、数キロ先の光景を視認するのがやっとだった

そんな光景を楽しんでいるヒノトらの前に突如大きな影が二人を飲み込む

目の前にはビルのように高い人工物が突如として立ちふさがり二人を恐ろしい目つきで睨みつける


「なんだぁ? なんでこんな所にガキンチョがいやがる?」

ダイテツの操るキペクロスが二人の前に立ちはだかるのだった


「あ……あっ!……あぁっ!」

腰が抜けて立てないヒノトを庇うように立ちふさがるみらい。

「『C.L.F』の欠片があるって町内を探していたが、ガキンチョに見られちまったな。しかたねぇ、死んでもらうぜ」

巨体が振り返りヒノトとみらいを覆う。大きく振り上げた拳が大地へ接触すると大きな地響きと砂煙が舞い上がりヒノトとみらいの周りを包み込む



「っちぃ!まだコントロールに若干のラグがあるようだ……まぁだいぶ感覚はつかめてきたし、次は蚊のように仕留めるぜ」

完成したばかりの新型機の調整が不十分のようでの操縦に戸惑うダイテツはOSの書き換えとこれまでの操縦履歴とデータを

照らし合わせ臨時修正を行うその余裕は彼らが子供だから、どうせ逃げきれないという余裕の現れだった。



「い、今よ!ヒノト!逃げるわよ!!」

先ほどの風圧と地響きで遠くへ飛ばされた二人は協力して校内へ向かって逃げる。みらいが肩に担いでヒノトをかばうが

腰の抜けた男児に年頃の少女が持って歩くにはとても無理があった

「情けないわね!風子をからかっていた自信はどこいったのよ!!」

「だ、だって……本当にZ.L.Fが来るなんて思わなかったんだよっ!」

「言い訳はいいから走って!追いつかれるよ!」

しかし、グラウンドの石につまづいて二人が倒れこみ身動きが取れない。モニター越しに様子を見ていたダイテツはOS書き換えを終えて再度標的を定める

「鬼ごっこは終わりだぜガキ共!あばよ!」

キペクロスの大腕が天空に突き、振り下ろされるまさにその時だった……



――「そこまでよっ」


戦場と化したグラウンドに響いた甲高い声。その音の主はマイクスピーカーから発せられる風子の声だ

「その子達に手を出したら 容赦しないわよ!」

「今度はなんだ?」

ダイテツがあたりを見回そうとモニターを切り替えるとそこには風子が仁王立ちでいた

走る風子が懐から空き缶サイズの何かを取り出すとピンを抜いてキペクロスの頭部分へと投げつける

すると、まばゆいほどの光が一面を照らし モニター越しで見ていたダイテツも目くらましされ激しいまぶしさでのた打ち回っているのだった




相手の隙を作った風子はヒノトとみらいの傍へ。怯えた表情で動けなかった彼らに優しく声をかける

「……先生っ?」

「二人とも、無事?」

「先生……」

「無事のようね……あなた達の説教は後回しよ 今は目の前の状況を打開する事が先決よ……ユフィー!」




――――「校舎内のカタパルトリンク接続完了 システム系列異常なし」――――


――――<<「校長、『U.L.S』から起動要請を受信しました」>>――――


――――<<「U.L.Sからの要請を受諾 これより本校は臨時戦闘体制に入るわ シェルターを地下へ格納!」>>――――


――――<<「学校シェルターを安全区域に隔離 防御壁の正常稼働を確認」>>――――


――――<<「プール内の排水完了 地下カタパルト作動を確認 射出アイテムの装填完了 ウィンター・ラビットオールグリーン」>>――――


「OKベイビーちゃん 一発飛んで行きな!」

――校長のマナミの手前にあったスイッチを押すとプール内から突如として射出された白一点しろいってん

カタパルトのレールガンを使い短時間で超上空を舞うように射出された

ひらりとしたその容姿はまるで巨大なスカートを履いたようなシルエット しかし頭部には獣のような耳のような突起物

全身がほぼ白一点で関節部分には微物が入らないよう特殊なゴム状のもので保護されている。頭部は突起物が目立つ中デュアルセンサーが生体の目のような形で標的を睨みつける

風子とヒノトらの目前に着地し大きな砂ホコリを巻き上げ それはさながら天空より現れし天使の如く



――「来たわねっ!二人は急いで校舎内へ避難しなさい」

「せ、先生……?」

去り際に振り向いた風子はウインクをする

「大丈夫、あなた達は絶対守るわ」



■■■



「ユフィー!状況報告!」

「各部ネットワーク系列異常無し 関節部も問題なく稼働 各関節間のラグ約0.75秒 操縦系統に問題無し」

「デュアルセンサー起動 同時に対物大型センサー始動 標的はあのE.Lよ!」

モニターが起動し コックピット内に点々とHUDが起動し各部の詳細情報が溢れ出してくる

風子はそれを瞬時に把握することに務める


「整備のおっちゃんやるじゃない 後で美酒をおごってやらないとね!」

「風子、くるよっ!」



―――キペクロスの振りかざす鉄腕

それを間一髪でかわしたのだ。

「さっきは閃光手榴弾などでよくもコケにしてくれたな『耳付き』!!」

さらりと間一髪で鉄腕をかわすウィンターラビットのその身のこなしは他ではありえない

動作そのもので常識を覆している。

高性能な回避運動にダイテツも驚き、より焦る


「くっそぉ!バカにしやがってよぉお!!」

狂ったように鉄腕を振りかざすダイテツの操るキペクロス

風子は回避行動に専念し隙を伺って 今か 今かとその瞬間が訪れるのを待っている


「来たわっ!」

次の瞬間 極限まで距離を詰めより ガラ空きの胴体部分へと潜り込む

ダイテツからしてみれば何が起こったのか分からない。着いていた地面から離れ

宙を舞っているかと思えば 目前に先ほどのE.Lのデュアルモニターがギラリと光る


――「いっけえぇえええ!!!」

宙に舞ったキペクロスに対して 右脚部に集約されたエネルギー体をぶつける

するとウィンター・ラビットを超える巨体のキペクロスがゴムボールのように弾け飛んだ

「なんなんだ! 今のでシステム系列がフリーズしやがったっ!」

自力で立ち上がるキペクロスだが、関節部に微弱なプラズマが漏れており

機能しているが不思議なぐらいの損傷である


「くそぅ……これ以上の戦闘は不可能かよ……」

ビルにもたれ掛かったキペクロスの上部に不思議なサークルが出たかと思うとキペクロスは突如としてワープしそこには跡形もなく消えたのだった。



■■■



Z.L.F襲撃騒動から間もない時間 風子は機体から降りてヒノトとみらいの元に降りた

「二人とも、怪我はない?」

沈黙した二人は黙ったまま俯いている 自らの招いた事の大きさの責任と重圧で震えているようだった

そっと優しく手を差し伸べ 抱き寄せる

「もう二度と、勝手な真似はしないで あなた達にもしもの事があったら私はとても耐え切れない」

「教師にとってクラスメイトは 無くてはならない大切な存在なんだよ あなた達がどれだけ私を馬鹿にしようと 私はあなた達を見捨てたりしない」

抱き寄せる力がより一層強くなるのを感じた

その言葉にどれだけ救われただろう 二人はそれまでの行動を反省し ようやく、一息つけたのだった




――翌日



いつもどおりの登校 クラスは相変わらず落ち着きが無くざわめいている

「昨日のZ.L.F襲撃、すごかったよな」

「なんかさ こう非日常って感じで新鮮だったよね!」


無垢な子どもたちにとってあの非常事態とはおそらく普段とは違う日常という斬新で

心地よい時間だったのだろう。しかし、それはあくまで自らの安全が絶対的に保障されている

からである。その事に気がつくのはもう少し先だろう……


「ようヒノト 結局昨日はこっぴどく叱られたんだろ?」

「ん……うん……」

「どうした?上の空だぞ??」

「どうもしてねーよ 俺は少し大人になったんだよ……」

最初は何を言っているのかわからなかった同級生らだった。いつもと様子の違うヒノトに同級生らは頭を抱えながらその場を去っていったのだった

ヒノトは外の風景を見つめて昨日までの出来事を思い起こしていた いや、思い起こしていたのはまた別の事であった……

「先生、結構胸あったんだな……」



忘れられない感触が今も頬が覚えている。初めて嗅いだ大人の女性の臭いはそれまで経験したことのない臭いだった。

それから、風子が教卓の前で出席を取るまであの時の感触と臭いを延々と思いだし。風守町の町並みを眺めていたのだった――――――――


文章にいたらぬところがあれば指摘ください。


投稿前に予め段落の落ち具合や誤字をチェックしていますが見逃しがある場合がございます。その際は遠慮なく申し付けてください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ