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ヒエオプラントの町

 町に入ると、俺はつい声を上げる。


「おお!」


 まさにザッツ・ファンタジーな街並みであった。


 レンガ造りの家のそばには馬が走り、歩く人々は小さな屋台のような店を熱心に見ている。

屋台には色とりどりの果物や、魚などが並んでいて、中にはアクセサリー屋も並んでいた。


 俺をみて、レティスさんは優しく微笑む。


「あなた、ここに来るの初めて?」


「ええ! すごいですね!」


「それじゃあ、案内してあげましょうか」


「いいんですか?」


「ええ、いいわよ」


 僕とレティスさんが話していると、クリカがぴょんぴょんとはねる。


「私も行く!」


「あなたはだめ。依頼を受けにいかなくちゃだめでしょ」


「ええ、でも……」


「あなたが依頼を受けたいのでしょ? それに、あたしは少し彼と話してみたいの。

途中、あなたばかり話してて、あたしは全然しゃべってないからね。それに、ずっと独り占めは

ひどいわよ」


 レティスさんはウインクをする。


「うう……仕方ないな」


 少し不満げにしながらも、クリカはうなずいた。


「じゃあ、行ってくるね! 待ち合わせはいつもの宿屋でね!」


「ええ。あまり遅くはならないようにするわ」


「絶対だよ!」


 クリカが手をぶんぶんふって、通りに消える。


「……あの、レティスさん。彼女ってその、本当にお姫様なんですか?」


「ええ。海の民のお姫様。といっても、第8王女」


「8? そ、それって男合わせないでですよね」


「もちろん。全員で18人くらいいたはずよ」


「……」


 僕がポカンと口をあけていると、レティスさんがくすくす笑う。


「やっぱり、あなた他の種族のこと知らないみたいね」


「へ?」


「海の民が多産なのは常識よ。18人でも少ないくらい。それに、あたしを初めて見たとき、

戸惑っていたでしょ。多分、男だか女だか分からないっていう風に思ってたのでしょうけど」


「え、えっと」


 図星でした、という表情をしてしまう。


「まあ、普通は自分の種族がいるとこからうごかないものだから、知らないのも仕方ないわよ。

だからあたしが色々教えてあげるわ。そういうの知ってないと色々面倒だからね」


 彼女、いや、彼は2つの尻尾を動かす。


「じゃあ、ますあたしの種族、岩の民からね。言葉通り、岩がたくさんあるあたりに住む種族ね。

大体崖周りが多いかしら?

見た目はこんな感じ。尻尾が2つに、目がひし形で、耳が長い。

それと、まだ子供だったら顔の半分に刺青があるわね」


 彼女は右の顔を指差す。


「それと、体の半分に黒い模様があるわね。ほら、こっちの手。黒いでしょ」


「あ、ホントだ……」


 言われてみれば、左手だけが黒い。


 その姿に、俺の中二心がくすぐられる。ワクワクする。


 俺はその気持ちをそっと奥にしまいこむ。


「最大の特徴は性別ね。あたしたちは顔に刺青が入ってる年代の時は、まだ性別が決まってないの」


「決まってない?」


 俺は首をかしげる。


「ええ。だから、あたしたち崖の民は中性的な顔してるの」


「へえ……じゃあ、何で決まるんですか」


「うーん、戦闘? 一定年齢になると戦って、強い方が女、弱い方が男になるの」


「へえ」

 

 そこはファンタジーっぽいな。

 

 つまり、レティスさんは女だから。


 ……あれ? 男? 女?


 俺が首をひねっていると、レティスは寂しげに微笑む。


「だからあたしがこうなのも……分かるわよね」


 いや、分からないです。そもそもどっちの性別なんですか?


 声に出したかったが、レティスさんの寂しげな笑顔をみていると、聞くのもはばかられる。


「そ、そうですか……」


 俺はそう答えることしかできなかった。


「それで、クリカの種族、魚の民は海に暮らす種族ね。陸でも一応暮らせるらしいけど、

何時間かに一回は水を浴びないといけないのよ。その代わり、海にいたら勝てないものはないって

言われてるわね」


 そう説明した後、空を飛ぶ羽をついた人間を指さす。


「あれは空の民ね。羽がついてて、あと目が黄色いわね。すごい遠くのものでも見えるの。

みたとおり、空が飛べる種族。鳥の仮面をかぶってるけど、あれははずしちゃだめよ。

仮面の奥をみて生きてかえったものはいないと言われてるからね」

 

「す、すごい種族ですね」


「その代わり、約束事はきっちり守るから、信頼はできるわよ」


 説明しながら歩いていると、怪しい通りに入る。


 通りは若干暗く、売っているものもドクロがあり、不気味だ。


「えっと、この通りは……?」


「ここは裏通り。1人では入らないほうがいいわね。あまり離れないで。危ないから」


 レティスに言われた通り、ぴったりとくっついて進む。


 しばらく歩くと、レティスが止まる。


「久しぶりね」


「おお、おぬしか」


 俺はレティスの横から顔を出した。


 そこには、ゴーグルをつけた小さな子供がいた。


 耳は下にたれていて、手には大きな爪がついていた。

尻尾は細い紐の先に、大きな丸いものがついている。まるでコンセントのようだ。


 その人は、俺をみて目を細める。


「いつもの魚の子じゃないな。なんだ、その子は?」


「田舎から出てきたばかりの子。他の種族のこと知らないみたいだから教えてあげてるの」


「おお、そうか。なら、ゴーグル外した方がいいな」

 

 彼はゴーグルを外す。


「ほれ。ここに2重丸があるだろ? これが土の民の特徴だ」

 

 そういうと、すぐにゴーグルをつける。


 レティスは俺に説明する。


「土の民は、文字通り地下で暮らしてるの。手についてる鋭い爪で土を掘り進めててね、

宝石とかを掘ってくれるの。彼も宝石掘りの1人」


 そういえば、彼の足もとにはたくさんのキラキラした石が並べられている。


「あんたも買ってくか?」


「いや、俺はお金がないんで……」


「だろうな。金の持ってない感じがする」


「……」


 おっと、今いらっとしたぞ。


「さて、岩の民、海の民、空の民、土の民に、あなたの種族の草の民。基本はその5種類ね」


「……あれ?」


 俺はある女の子が頭をよぎった。


「なんか、他にもいないですか。その、目も普通で、手に何もついてなくて、

尻尾もない種族とか」


「……あんた、彼らと会ったの?」


 レティスさんの表情が一気に険しくなる。


「ええ。女の子でしたよ」


「女の子、ねえ」


 レティスさんは何か考えるように目を細める。

 

「お前さん、魔の民を知らんのか」


 土の民の人が、驚いた声を出す。


「奴らは魔王の一族だ。完全悪といったら、奴らの一族だといっても過言ではない。

男は女を犯し、女は男をだます。どちらも人を殺し、人をだます。

最低な一族だ」


「はあ……」


 もし、俺が10代の純粋な時代だったら、正義感にまみれたことを言えるだろうが。


 俺はもう20代だ。適当に笑って、やり過ごす。それが一番いいことは、もう理解していた。


「そういういこと。魔の民に会っても関わらないほうがいいわよ」


 レティスさんが僕をみて、優しく笑う。


「はい、そうします」


「それじゃあ、宿屋に行くわよ。あの子が待ちわびてそうだし。

それじゃあ、またね」


「ああ、達者でな」


 



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