魚のお姫様
さっそくあの女の子が指さした方向へ向かっていると、
「こんにちは!」
何処からか声がする。
俺は尻尾をピクリと動かし、声の方へと向くと、そこには女の子が立っていた。
彼女は目をきらきらさせて、僕を見つめる。
「魔王の手先を一人で倒すなんて、すごいね!
私、尊敬しちゃった!」
「え? あ、ああ」
魔王? この世界には魔王がいるのか。手先ってことは、あのでか熊のことか。
まあ、それはおいておいて。
俺は彼女をじっと見てしまう。
服は布一枚を体に巻いているようなもので、妙にエロティックだ。
いや、そこじゃない。胸が大きいとか、それを見ているわけではない。
髪が青いところはファンタジーだし、まあありだろうが。
「えっと、その体についてるのって……?」
「これ? 鱗だよ! きれいでしょ?」
蛇のような鱗を指さし、誇らしげに胸をはる。
それで胸が強調されて、思わずもみたくなる。
それを必死にこらえ、声を出す。
「じゃあその耳は……」
「耳がどうしたの?」
彼女はウーパールーパーのひらひらのようなものを触る。
「それにそのしっぽ……」
まるで人魚のようなしっぽを指さす。
「ふっふっふ。きれいでしょ」
「……」
俺は、一応ゲームとか大好きだし、ファンタジー系だって好きだ。
だけど、こういう種族ぱっと思いつかない。
いるとしても、敵な気がする。
「私、あなたの戦っている姿を見てたよ。いやあ、すごかった!」
俺がそんなことを思っていると、彼女は目を輝かせる。
「私、一目見て分かっちゃったよ! あなたは勇者なんだって、
あなたこそが魔王を倒す存在なんだって!
この私、海の民の王女、クラカが言うのですから間違いない!」
「は、はあ……」
20年生きていたから分かる。
これは、付き合ってたらめんどくさい系の女子だ。
こういうのは適当に怒ったら逆にめんどくさいから、優しく断らなくては。
「実は、俺にはその、」
言い訳を考えていたら、どこからか大きなため息が聞こえた。
目の前のお姫様(自称)ではない、違う人。
「あんた、何してるのよ」
「あ。レティス」
「あ、じゃないでしょ、あ、じゃ」
その人はクラカの反応にまたため息をつく。
「勝手に突っ走って、もう。戻ってくるの遅いと思ったら何男捕まえてるのよ」
その人は俺に近づいてきて、軽く礼をする。
「ごめんなさいね。この子、ちょっと世間知らずなとこあるのよ」
「え、ええ、はい」
その人は、獣耳でも、魚でもない、違う種族の人らしい。
これまた見たことがない種族だ。
耳がとかっているからエルフかと思いきや、目はひし形の模様があるし、
しっぽがついている。しかも二本。
あと気になる点は、彼なのか、彼女なのか。
言葉づかいは完璧に女だけど、顔がどう考えても小学校六年生くらいの男の子の顔だ。
もしかして、オカマ?
「あら、何そんなに見て。ひょっとして、どこかで会ったことある?」
「い、いや。それはないと思うけど」
すると、黙っていたクリカが手をぽんと叩いた。
「そうだ! ねえ、レティス。この子とあの依頼受けようよ!
二人じゃあ受けられないっていってたけど、彼がいたらなんとかなるよ!」
「あの依頼? でも、あれは結構難しい依頼よ。彼にできるかしら」
「大丈夫大丈夫! だって、彼はあのビックベアを一人で倒したんだから!」
クリカはまるで自分の手柄かのように言う。
「へえ、あのビックベアをねえ」
レティスさんは目を細め、俺をじっと見る。
「それくらいなら大丈夫かもしないけど」
「やった!」
俺の知らないところで話が進んでいる気がする。
「ちょ、ちょっと待って下さい。何のことですか」
「あのね、実は」
「ちょッと待って」
しゃべりだしたクリカをレティスがとめる。
「どうせなら歩きながら話しましょ。そこで断られても、
あなたも町までは一緒なんだし。それでいい?」
レティスさんは頭を傾ける。お菓子食べていい? と聞いてくる子供みたいだ。
「まあ、別にいいが」
「よし! 決まりだね。それじゃあ行こう!」
クリカは嬉しそうに笑うと、意気揚々と歩きだした。
俺とレティスさんはそのあとに続いた。




