ガラパゴス
『カンパーイ!』
地上二階、地下六階からなる《ボルボックス》ホーム、その地下一階では歓声と共にジョッキを高々と掲げ、中身がこぼれる事など気にせずに一斉にぶつけ合った。
ジョッキにはシャンパンやワインなど色とりどりの飲み物がなみなみとつがれていたためガラスにしては低い音がした。
あの試合の後、クフィ達はクラン《ボルボックス》の本拠地があるセントラル・シティへと帰還した。現在はクラン戦勝利を祝して《ボルボックス》所属メンバー全員の三〇名で祝賀会を開いているところだ。
RWWの魅力は銃撃戦ばかりでない。このようにクランメンバー全員で宴会を催すこともできる。食べ物はゲーム内通貨さえあればNPCが電話一本で数分以内に届けてくれる。もちろん食べることもできるし、何より美味しい。お酒やタバコも年に関係なく飲んだり吸ったりできる。VRだからこそ許される、VRの魅力の一つだ。だだし、酒は飲みすぎると酩酊状態になり地獄を見ることになるので飲みすぎには注意だ。
クフィは幾つもの大きなテーブルの上に所狭しと並べられた料理からバイキング方式で自分の小皿によそった。ここがRWWの中だというのに食事のバランスを考えているところがクフィらしかった。
クフィは小皿をトレーに乗せ、どこか座れる場所は無いかとあたりを見回した。
「クフィ殿、こちらでござる」
祝賀会会場の一番右端のテーブルに忍者衣装の目立つ姿があった。よく見ると他にもトヨイズミやピックマンなど、先ほどまで試合をしていたメンバーが集まっていた。クフィは同じテーブルにトレーを置き、使われていないテーブルから椅子を引っ張ってきて座った。
「みなさん、お疲れ様です」
「ああ、お疲れ様。それにしてもクフィは今回も大活躍だったじゃねか」
トヨイズミの褒め言葉にクフィは嬉しそうにほほ笑んだ。
「トヨイズミさんこそ、発煙筒をあんな風に使うなんて……というか、航空支援ができないマップでよく発煙筒なんて扱いづらいアイテムもってましたね。最後のような事態になることを想定していたんですか?」
クフィの質問にトヨイズミはウーロン茶を一口飲むと答えた。
「まさか、発煙筒が入っていたのはアイテムポケットから出し忘れていただけだ。ほら、前回の試合、俺が航空支援でガンシップばっか呼んでただろ?」
「……という事は、トヨイズミさんはあのひっ迫したわずかな時間の中で作戦を考えていたんですか?」
「――まあ、そうだな」
「さすが、トヨイズミさんです! まさに《ボルボックス》の頭脳、天才軍師ですね!」
クフィの褒めちぎりにトヨイズミは少し照れていた。
「おや、トヨイズミ氏、デレ期ですか? 天才クーデレ軍師×エリートショタっ子兵士……これは流行る! (ある一部で)フヒヒ」
クフィとトヨイズミの会話の横で、ピッグマンが小皿いっぱいの豚肉を頬張っていた。
「うるせーんだよこの共食い豚! 豚足でも喰ってろ」
「おお、ショタっ子クフィたんに罵られるなんて、まじ役得! フヒヒ」
本気で怒ったクフィは大皿からブタの頭を鷲掴みで持ってきてピッグマンの顔面にこすり付けた。周囲のメンバーが止めに入ってクフィはひとまず落ち着いたが、非常に悔しがっていた。一方ピッグマンは終始、恍惚とした笑顔を浮かべており、反省どころか逆に嬉しがっている始末。それが一層クフィの腹を立たせた。
クフィは手元のM4を何度も撫でまわし何とか平常心を保とうと努力していた。
「そういえばトヨイズミ殿、本日の大型アップデートで追加される新要素について何か判明したことはあるでござるか?」
口もとを覆った布をずらし、米を口に運んでいた影丸はふと箸を止め、トヨイズミに話し掛けた。それは数か月前に運営から発表があった大型アップデートに関することだった。
「いや、全く無い。根も葉もない噂や憶測が飛び交うだけで、ましな情報は一切はいって来ない」
「ふむ、それはまた、奇妙でごなるな。たしかに前回の大型アップデートでも追加要素は最後までひた隠しにしていたでござるが、当日になってなお一切の開示なしとは」
「確かに妙だが、今はどうすることもできない。……なーにあと二時間ですべてがわかるさ」
「それも、そうでござるな。しかし………今度こそクナイと忍刀の実装を願うばかりでござる」
アップデートの話を保留にした影丸は腕を組み遠い目をして、追加要素に新たな忍者装備が加わっていることを願うのだった。
「影丸さん、ずっと運営に忍者装備の充実を要望してましたもんね。結局、要望メールは何通送ったんですか」
クフィは以前、運営に何通もの忍者装備の充実を切実に訴えたメールを送っているのを思い出した。
「そうでござるなー……合計で一〇〇〇通程でござる」
「……はぁ?」
影丸の口からサラりと出た数字にクフィは思わず固まった。
「もちろん、スパムではないでござるよ? 一通、一通、しっかりと内容を考えたでござる。要望した忍刀やクナイなどの構造やテクスチャは拙者が3DCG制作ソフトで描いたでござるし。切る、刺す、投げると言った基本的なモーションパターンも専門のソフトを使って考えて、RWWで問題なく動作することを確認した上で、データをメールに添付して送ったでござる」
「…………」
クフィは目の前の自分をはるかに超える廃人プレイヤーに恐怖すら覚えるのだった。
こうして《ボルボックス》の祝賀会は盛り付けられた食事が無くなるまで続けられた。
エストール王国 王都シェーネンブール エストール王宮
日の光の差さない薄暗い部屋に二人の男がいた。一人は真紅に金の糸で刺繍を施したマントを羽織った壮年の男で、もう一人は黒いマントで体を隠し、顔に包帯を巻いた男だった。
二人は小さなテーブルを挟んで向かい合うように座っていた。
「――して、その者達はあまり数が居ないと聞くが本当に役に立つのか? それではガイゼリック帝国三〇万の軍勢にはとても太刀打ちできぬが」
「はい、かの者たちは数こそ多くはありませぬが、一名一名が一〇〇のガイゼリック帝国兵と渡り合う事のできる強大な力を持っております。隷属させ、使役できれば我々の助けとなるでしょう」
「ふむ……だがやはり余は信じられぬのだ、不死の軍団などそれこそお伽噺の産物だからな」
すると黒いマントを羽織った男が懐からこぶし大の水晶玉を取り出した。
「わかりました。ではお見せいたしましょう」
男はその水晶玉をテーブルの上に置いた。すると、水晶玉は淡く光はじめ、水晶玉の中に映像が映し出された。
水晶玉には奇妙な服装の人々が狭い通路で、時より光る黒い筒を向けられたとたん血をふいて地面に倒れふしていく映像が映っていた。
真紅のマントを羽織った男の顔が驚愕に歪み、そして水晶玉に映し出される映像を食い入るようにして見ていた。驚愕の色は次第に恐怖へと変化していった。
「わ、笑っておる……。この者たちは人を殺めながら、殺されながら笑っておる! あの筒が向けられただけで殺されるこの状況下で、なぜこの者たちはこうも笑っておられるのだ!」
真紅のマントを羽織った男は映像に映し出された、黒い服装の人物に目を移した。
その人物だけが他の者と違い、手に短刀を持ち、一切隠れることなく通路を突き進んでいた。筒を向けられるもそれを見事に避けきっていた。
「ああッ!」
だが、相手のおそらく指揮官と思われる男の眼前で体中から血を吹き崩れ落ちた。
そこで映像が切り替わり、次に写し出されたのは突然何もない空間から先ほどの黒装束の人物が無傷で現れる映像だった。
「な、なんだこれは!」
映像をよく見ると、その黒装束の男だけではなく、他の者たちも血を吹き地面に倒れ伏しても、数秒後には無傷の状態で何所からともなく出現し続けていた。
「これが不死の軍団……。なんと恐ろしい……。」
「現在我々はこの者ら四万人を召喚、隷属できるだけの大型設備を整えております」
「この様な者たちが四万もいるのか」
「はい、後はエストール王国国王、エストール三世様のご命令一つで召喚を開始できます」
「……そうか。許可しよう――失敗だけは許されぬぞ」
「はっ、必ずやご期待に沿えましょう」
黒いマントの男は椅子から立つと恭しく頭を下げた。
セントラル・シティ 二桁街 《ボルボックス》ホーム
セントラル・シティにある二桁街はRWWでの一等地だ。土地代がべらぼうに高く、二桁街の名称通りに総合ランキングで一位から九十九位までに入っているクランしか住むことができない。
二桁街には必然的にランク上位の大手クランが住みつき、その有り余る資本を投じて超高層ビルを乱立させ、中にはまるでドバイのようにビルの高さを競うクランもあった。
そんな高層ビルが立ち並ぶ二桁街に似つかわしくない武家屋敷を住まいとするクランがあった、クラン《ボルボックス》である。《ボルボックス》は総合ランキング一八位に入ったこともある実力派クランであり、少数精鋭をモットーにした廃人たちが集うと言われている。
《ボルボックス》は五〇人規模の大規模クラン戦でこそ負けが目立つのだが、十人規模のクラン戦ではほぼ無敗を誇り、総合ランク一位で、加盟者数三〇〇〇名の超大規模クラン《パンジャンドラム》の精鋭部隊とすら互角に渡り合うことができると言われている。
《ボルボックス》のホームは土地価格がとてつもなく高い二桁街の土地を四ブロック(RWWでの土地の単位であり、一ブロックもあれば立派な高層建築物が立てられる)も買取り、そこに砂利と苔むした岩、池で飾り付けられた日本庭園を造り、その中に武家屋敷を設置した和を基調としたもので、超高層建築物が立ち並ぶコンクリートジャングルの二桁街では特別異彩を放つ建築物の一つだ。
そんな《ボルボックス》ホーム地下一階では酩酊状態に陥ったメンバーが床で酔いつぶれていた。中には一升瓶を抱えているものから、ビール瓶を枕替わりにしている者までいる。
死屍累々の状態の中でいまだに酒を飲んでいる者たちがいた。トヨイズミ達である。
「たく、RWWの中で飲まなくてもリアルで飲めば良いだろ」
「まあ、まあ、トヨイズミ殿、良いではないではござらんか。みなで飲む酒はうまいでござるし、何よりロハでござる」
影丸はトヨイズミを軽くたしなめ、なみなみと日本酒を注いだ升に口をつけた。
「おいおい、直接飲むのかよ」
「良いんでござるよ、拙者はちびちび飲むよりも、升でごくごく飲みたいでござる。それにもともと不作法な升酒はこうやって飲んだ方がうまいでござる」
「そんなもんかね……はー、それにしてもあいつらバカ高い物ばっか頼みやがって、の獲得賞金の一%は使っちまったぞ」
トヨイズミは酩酊状態で床に寝そべり動けないでいるメンバーをため息交じりで見た。
「トヨイズミさん、そういえば今回の試合の獲得賞金っていくらだったんですか?」
酒よりジュースの方がうまいと言い。炭酸飲料を飲んでいたクフィは野菜スナックをかじりながら質問した。
「あー、いくらだったかな……俺の記憶が正しければ、おそらく二五〇億AUだ、そこから一〇%が政府、もう一〇%が非常時軍資金として徴収されるから純粋な手取りは二〇〇億AUってところだ。もっとも、たったいま一九八億AUになったがな」
このような税の徴収は一度の試合で手に入れた賞金が一〇〇万AUを超えると発生する。
政府への一〇%はNPCによる食事の提供や初心者ガイド用NPC等、サービスを提供するNPCの給金として支払われると、公式設定では記述されている。
非常時軍資金とは二桁街に住まう上位クランに発生する義務のような税で、都市間での大規模戦闘などの非常時を見越して資金をプールするのだ。非常時にはプールされた資金を使い高額な武器や武装を調達することになっている。
「なあクフィ、この資金の分配だがよ、俺たち戦闘に参加した奴が一人三%、参加しなかった奴が一人一%でどうだ?」
「という事は残り五〇%は共同資産ですね……良いんじゃないですか? 今は特に買う物も無いですし、大規模な戦争もありませんし」
「よし、決まりだ、後で振り込んでおくからな」
たった今、独断で賞金の分配は勝手に決めてしまったが、《ブルボックス》のメンバーから不満の声が上がることは無い。
《ボルボックス》メンバー級の廃人となると個人資産だけで通常の小中規模クランメンバーの共同資産並みの貯金があるので、二億か六億かの違いでぶーぶー言う者はいない。
トヨイズミはふと腕時計をみた、後三〇分で大規模アップデートが始まる。
まだ発表が無いのかと不満と共に酔いが回ってきたトヨイズミだったが、セントラル・シティ全体に設置されたスピーカーから聞き覚えのある軽快な音楽が流れた途端、酔いが完全に吹き飛んだ。
「トヨイズミさん、これって!」
「ああ、ついに来たぞ!」
「キタ――! フヒヒ」
先ほどまで座って酒を飲んでいた影丸が居ないことに気が付いたクフィは辺りを見回すと、宴会場の端の方、地上に上がれる階段近くで全力で疾走する影丸の姿を捉えた。
「うわ、影丸さんもう行っちゃったよ……」
スピーカーからの音楽とオール組の奇声によって床に寝転んでいたメンバーも一斉に起き上がり、今までの泥酔状態が嘘のようにホームの外に向かった。
街はリアルと合わせ夜の帳が降りようとしていたが、二桁街に立ち並ぶ摩天楼から発せられるギラギラとした人工の光によって帳が跳ね除けられ、二桁街は深夜の時間帯だというのに休日の昼間の様に人ごみにあふれていた。
みなそろって、空中に映し出されたRWWというアルファベットのホログラムを見ている。それは前回のアップデートの時にも表れたホログラムであり、その後に運営が制作した映像を交え、新たな追加要素の紹介や解説していくのだ。
その場の全員が期待に胸を膨らませ、今か今かと紹介の開始を待ち望んでいた。
その直後だった、RWWのホログラムが光の粒子になって崩れ去り、粒子は長方形の巨大なモニターへと形を変えた。
『お集まりの皆様こんばんは、さっそくではありますが今回の大型アップデートに際しまして追加される要素について発表いたします』
モニターに映し出された女性人格のAIが現れた。
「キター」「うおおおおおお」「まってました!」「キター!」「録画、録画っと」「AIたん、かわゆす はぁはぁ」「発表まだー?」「クナイ、クナイ、忍刀、忍刀」「おせーよカス」「うおおおおお」「ななこおおおおおおお」「空砲を耳元で乱射するな! うるせえだろが!」
二桁街は異様な熱気と興奮に包まれ、お祭り騒ぎだ、中にはパンツ一枚でライトマシンガンを小脇に抱え、雄叫びと共に空砲を乱射する者もいる。またある者は、都市防衛用に設置された三五mm対空砲や対要塞用二〇〇mm固定砲台を引っ張り出し、弾薬をパーティー用に入れ替え、夜空に幾つもの大輪の花火を咲かせていた。
『それではさっそく、新要素の発表に移りたいと思います。――今回のアップデートで追加される要素は三つ。まずはじめにのヘッドハンティングシステムの実装です』
とたんに二桁街がざわめいた。首を傾げる者や近くの仲間と話し合う者もいた。
「シャーリーン俺だー結婚してくれーフヒヒ」
「ブタ! 黙らないとチャーシューにするぞ!」
『このシステムが実装されるとサイド・シティやセントラル・シティにいる一般NPCを各自クランに所属させる事が出来るようになります』
ヘッドハンティングはNPCを金で雇い入れ、共に戦場で戦う事が出来るようになるシステムで、人数が少ないためにクラン戦を行うことができない等の人数的な不利を緩和させるために追加されたシステムだ。
NPCにはSTR(筋力)INT(知性)CON(体力)EDU(教養) DEX(敏捷) POW(精神)の六つの基礎能力が十八段階で定められ。この能力がNPCの先天的才能である個体値となる。
さらにNPCはそれぞれ技能を持っている。技能とはNPCを教育し、育てることによって得られる後天的才能である。そのためNPCが個体値で劣っていようとも、育て方次第でいくらでも補うことができるのだ。
技能には様々な種類が存在し、熟練具合に応じて一〇〇段階で評価される。
ヘッドハンティングシステムはプレイヤーの手で千差万別のNPCを育て上げる事のできるRWWの新たなやり込み要素となった。
「ふむ、これで《ボルボックス》の人数的不利を補えるのか?」
『さてどんどん行きましょう。次の追加要素は忍刀とクナイの実装及び手榴弾やナイフ等、サブ武器の自由なテクスチャの変更です』
「うおおおお、キタでござるうううう!」
地上三〇〇mのビルの屋上で忍者が歓喜の雄叫びを上げていた。
『この忍刀とクナイはクラン《ボルボックス》所属の影丸様たってのご希望で、このたび実装する運びとなりました。影丸様から頂いた一〇一七通の要望メールはすべて拝見させていただきました。七八〇通目のメールに添付された忍刀及びクナイの粒子骨格、CGテクスチャ、そして各基本モーションは大変すばらしい物でしたので、RWWで正式に採用することとなりました。運営陣一同心よりお礼申し上げます』
追加要素のテクスチャ変更は他人の手榴弾の中に自分の手榴弾が紛れ込むと、どれが自分の物か判断が付かないという要望から生まれたものだ。
これにより、手榴弾をピンクに染めることや、自分の名前を書き込むことができるようになる。
『さて、最後の追加要素です。この追加要素は社内でも最後まで是非を論じる事となり、アップデートの発表がここまで遅れた原因でもあります。この追加要素は実際に見ていただいた方が良いと思いましたので、PVをご用意させていただきました』
AIがモニターから消えると、映像が流れだした。
映し出されたのはRWWのマップの一つである、ゼル平原だった。都市間の大規模戦闘で必ずと言っていいほど選択されるシンプルなマップである。
場面は切り替わり、突如として一両の戦車が姿を現した。だが、その戦車を見た途端、周囲がざわめきたった。
「トヨイズミさん、あの戦車の車体レオパルド2ですよね」
「ああ、そうだ。うちらも一〇両ほど持ってるからな……だが、ありゃなんだ。なんでレオパルドが主砲を二門もくっ付けているんだ」
映し出された戦車には現代戦車ではありえない主砲を二門も設置された、異形としか言えないものだった。
その他にも異形の戦車は何両も姿を現した。
主砲があまりにも大きすぎるアンバランスな戦車、装甲を限界まで搭載したため車体が重くなりノロノロとしか前に進むことのできない戦車。車体後部にロケットブースターを無理やり取り付けた戦車。色とりどりにカラーリングされた戦車、そして最後に現れたのは、車体がまるで油粘土で出来ているかのような曲り、歪み、四方八方ねじれた戦車だった。
『最後の追加要素は銃、車両、戦車、航空機等の、ある程度規格に合った自由な改造、各種兵器の開発と自由な塗装を行うことのできるクリエイティブ・ラボの実装です』
場が、静まり返った。
『RWWはこのアップデートを転機にその姿を大きく変えることになります。オリジナリティにあふれた武器、車両、航空機が幾つも現れ、そして、ちょうどWW(世界大戦)で姿を現した数々の奇妙な兵器達のようにひっそりと消えていくことでしょう。しかしそれは決して無駄なことではありません。失敗は進化を模索する上で何よりも重要なことであり、その失敗から数々の技術革命を生みました。このVRMMOがリアルの名を冠するのであれば、このシステムは必要な物であると私たちは考え、実装することを決断しました。ユーザーの皆様、これからは自らの手で新しい革命を生み出してください』
運営という名の分厚い雲から、兵器開発という豪雨が広大な砂漠へと降り注いだ。潤った大地に新緑の芽が一斉に芽吹くのはあと二秒後のことだった。




