第二章 嵐の中での戦い ―1281年 元寇(二回目)―
物語の都合上、実際の出来事や文献等に載っていることと(かなり)異なります。
あらかじめご了承ください。
時空の歪みから出た先はどこかの海岸だった。周りを見渡すと、陸地の方に大勢の人が、海の方に何隻か巨大な船が見えた。そして、魔物もいた。
「やっぱり魔物は残っちゃってるか……。そういえば指輪も回収し損ねたし。まあ大丈夫だろう」
「それより、あっちの方に人が見えるよ。行ってみる?」
「いや、やめた方がいいと思う。確かここは1281年だったよな?」
「ええ、そうです」
「ということは、……」
〈Narrator Part〉
ちょっと待った! しばらく出番ないと思って油断してたら、危うくまた私の役目が取られるとこでしたよ。
お分かりの方もいらっしゃるかと思いますが、1281年は「弘安の役」が起こった年です。
えっ、弘安の役なんて知らない? じゃあ「元寇」ならご存知ですよね? その二回目を弘安の役というんです。ちなみに一回目は1274年「文永の役」。
簡単にいえば、元(現、中国)が日本に攻めてきて、二回とも神風が吹いて敵を撃退したっていうことなんですが、どうして神風が吹いたんでしょうねぇ。
もしかしたら、その謎が明らかになるかも?
「なるほどね。要するに、あの人たちは兵士の可能性が高いから近づくと怪しまれるかもしれないということね」
「うん。それじゃあ俺たちは魔物を倒しながら女を探しに行くか。いくら後で倒しに行くとはいえ、さすがに魔物を放置するわけにはいかないしね」
「よ~し、ばんばん倒すわよ!」
と意気込んだものの、魔物はほとんど見つからなかった。
どうやら、いるにはいるが前の時代で二人がかなり減らしたおかげで数は多くないようだ。しかも、魔物も馬鹿ではなく、生きるためにうまく普通の動物に紛れ込んで暮らしているようだ。そのため、かなり歩き回ったのになかなか魔物に会えなかった。
また、女の方も全く痕跡がなく、見つけることは出来なかった。しかし、前のように消えない時空の歪みはないのでもしかしたらまだこの時代にいるのかもしれない。
二人は疲れ果ててもとの海岸に戻ってきた。海岸ではいつの間にか元が進行してきて、戦闘になっていた。
「これだけ歩きまわってたったの五匹かぁ……。しかも女も見つからないし。あ、もう戦ってる」
「魔物もちゃんと知恵つけるんだな。俺らの時代で四十年も生きていられるわけだ」
「ちょっと、人の話無視しないでよ」
「ああ、もう始まってるのか。ま、特に歴史は変わってないみたいだな」
砂浜に座り込みながら二人が話していると、突如ノウェムが叫ぶ。
「大変ですマスター! 海の方から二つの巨大な飛行型魔物の反応が!」
「何だって!?」
「でも、魔物ってウイルスが動物に感染してできるんでしょ? 巨大な、ってことはクジラとかになるけど、飛行型ってどういうこと?」
「わかりません。今、種族の検索をします。」
そう言って、ノウェムは内蔵されてる魔物図鑑から検索し始めた。しかし、数秒後に画面に表示されたの「empty」の文字だった。
「えっ、現代にいない魔物だって!? 現代にいる魔物は全て解明されているはず……」
「もうすぐ見えます!」
すると水平線の彼方から巨大な浮遊する二体の魔物が現れた。二体は似ており、雲のようなものの上に人のような形をした本体が乗っている。唯一違うのは片方は雷を纏い、もう片方は風を纏っていた。
「まるで風神雷神だな……」
「魔物のくせに神の真似とはいい度胸ね! 海に沈めてあげるわ!」
「ちょっとまて! 一人であんなのに挑む気か!?」
「じゃあどうするのよ? ほっといたら大勢の犠牲が出ちゃうよ!」
「少し様子を見てみよう。最終的には倒すが、もしかしたら今はあいつらを放っておいた方がいいかもしれない」
「?」
結衣は優斗が何をいいたいのかわからなかったようだが、とりあえず様子を見ることにした。
二体の魔物は様子見しているようでその場から動かず、見えてからだいぶ経つのに一向に近づいてこない。二人はなにが起こっても大丈夫なよう待機していた。
それから何時間経ったのだろう。日は暮れ、月と星が空を彩っていた。すでに両軍とも一度撤退し、今海岸は静かだった。
二体の魔物もいまだに動かず。
「そろそろだな……」
「えっ、何が?」
すると、二体の魔物が動き出し月と星が見えていた空が分厚い雲で覆われた。
「きた!」
「なになに、なんなの?」
片方の魔物が手を挙げたその時、強風が吹き雲から落ちてきた雨と合わさって大嵐が起きた。もう一方の魔物が手を上げると、ものすごい音と共に雷が落ちた。二体の魔物が操る嵐と雷によって、周囲一体は台風が直撃したような状態になった。
それによって海は荒れ、船で待機していた元軍の何隻かが沈没。また他の何隻かも雷にうたれて燃えた。なんとか生き延びた船は退散していった。
「ちょっと優斗! どういうこと!?」
「少し勉強しろ! 中学の時にやっただろ。日本が二度の元寇で勝てた理由」
「え〜と…………。忘れちゃった」
「はぁ……。嵐が吹いて元軍の船の多くが沈没したんだよ。そう、まさに今の状況のように。あの二体の魔物が風神雷神みたいだって気づいた時、もしかしたらあの二体が起こした嵐のおかげかもしれないと思って何もしなかったんだ」
「なるほどね。もし私たちが倒しちゃったら、嵐が起きないで歴史が変わっちゃうかもしれないもんね」
「そういうこと。ただ問題があって……」
「?」
二体の魔物が起こす嵐と雷は収まるどころかどんどん強くなっている。すでに日本軍すら撤退している。
「やばいな。これ以上ほっとくと海岸沿いの村が壊滅しかねない」
「問題ってそういうことね。でも二人だけであの二体の魔物を倒せる?」
「難しいだろうなぁ」
二人が悩んでいる間もどんどん状況は悪くなっていく。
「うぅ……、風邪ひいちゃう。ねぇ、一度近くの村に行ってそれから考えない?」
「そんなことしてるうちにいくつの村が崩壊するか……」
「あぁもうわかったわよ!じゃあどうするの?」
「お二人さん、何を言い争っているの?」
突如二人のもとに現れたのは「あの女」だった。
「あんた……!」
「まさかあなたたちを巻き込んじゃってるとはね。まあでもHT-001があるみたいだから大丈夫か」
「なぜそれを?」
「この時代に来てからずっと見ていたもの。ま、私の方にはもっと高度な機械があるからね」
「時空の歪みを保持させるやつか」
「せ〜かい! で、もうすぐここに私の目指す時代に行ける歪みが出てくるってわけ。もちろんそれも保持させとくから来たきゃおいで」
「あんたの目的はなんだ?」
「簡単にいえば人探し。ねぇユウト君?」
「なっ……」
「どうして名前を……」
「まあ会話を盗み聞きしている間にもちらほら聞こえたけど、もっと前から知ってるわ。会ったことあるんだけどな〜。だいぶ前だから忘れちゃったか。でも顔見てもわからないってことはあの親父、写真も見せてないのか」
「……? どういうことだ?」
「な〜いしょ。親父さんと連絡がつけばわかるかもね〜。それじゃ、また!」
そう言うと女はノウェムに似た機械を後ろに向けた。するとそこに時空の歪みが現れ、女はその中へ飛び込んでいった。
「私たちも早く追いましょ!」
「待て待て、まだ魔物をなんとかしてないだろ」
「そうだった!」
すでに魔物が生み出した嵐は台風のレベルをはるかに超えていた。
「くそ、このままじゃとめられなくなる!」
「え〜い! もう私がやる! うわっ!」
「待て、早まるな! わっ!」
優斗が結衣を止めようしたとき、二人は何かにつまずいた。
そこには高性能ライフルが落ちていた。
「なんでこんなとこにライフルが……」
「あの女が置いてったんでしょ。まったく嫌味ったらしいやつね。私銃系無理だから、優斗お願い。いくらか弱めれば倒せるでしょ」
「俺もライフルは無理なんだが……。まぁ、銃の扱いは結衣よりマシだろう。よし、いくぞ!」
優斗はライフルを構え、厚い雲のなかに見える魔物の内風神の方に照準を合わせた。
「ノウェム、どこ狙えばいい?」
「そうですね。やっぱり人型ですし頭でしょうか。データのない魔物なので、もう少し調べる時間があればいいのですが」
「そんな時間はないな。よし撃つぞ!」
優斗は引き金を引いた。しかし、強風により弾がそれてしまい、頭ではなく腕に当たってしまった。それに怒った魔物は優斗たちの方に飛んできた。
「まずい!」
「もう! なにやってんのよ!」
二人の足元に雷神が放った雷が当たる。
「くそ!」
かわした優斗は再びライフルを構え撃つ。弾は雷神の頭を貫通したがそんなに効いているようには見えない。
「えっ、なんで!?」
今度は風神の方が風を固めて飛ばしてくる。
「きゃっ!」
「結衣!」
風神の攻撃に当たり倒れた結衣に向けて、雷神が再び攻撃を仕掛ける。その雷は結衣向けて一直線。優斗と結衣の距離は離れており、助けに行けない。
万事休すかというその時、優斗のカバンの中から虹色の光が放たれた。
その光は結衣に向かっていた雷を書き消し、その光によって二体の魔物は怯んだ。
「結衣、今だ!」
「よーし! 喰らえっ!」
結衣がアマスマから放った炎が命中し、二体の魔物は倒れた。しかし、まだ生きている。
「とどめよ!」
結衣は鞭を放つ。しかし、それでも魔物は生きている。
「このこの! なんで消えないの!?」
「ノウェム、今のうちに解析してくれ!」
「かしこまりました。…………解析完了。下の雲の方が本体です!」
「そういうことか! よし、今度こそとどめだ!」
優斗はライフルを構え、二体の魔物の雲の部分を撃つ。するとついに魔物は消えた。
「よっしゃ!」
「やった!」
「これでこの時代はもう大丈夫だろう。さぁ、あの女を追うぞ!」
「少しいいですか。もう二度と出てきて欲しくはないですが、一応魔物登録したいので、初めて見つけたお二人に名前を付けて欲しいのですが」
「雷神ボルティスと風神クラウディア!」
「おい結衣! お前、前から考えてたろ」
「だって、待ってる間暇だったんだもん。でもいい名前でしょ?」
「まぁね……」
「では、それで登録します。それでは次の時代に行きましょう。次は1477年です」
二人は、女を追うため歪みの中に入った……。
「まさかあの子がいるとはね……」
歪みから出てきた女はつぶやいた。
「優斗もあの事件があって以来会ってなかったからなぁ。もう忘れちゃってるか。でも親の顔は忘れないはず。それで気づかないってことは歩夢、子供に写真も見せてないのか」
女は落胆するように言う。
「きっとあの子たちのことだ。あの事件を変えるなんていったら絶対止めに来るよね……。でも、絶対にやめない。あの男達に復讐するために……」
手に持った機械を使って、次の歪みを探す……。
どうも、kumihaです。
三日ほど連続して投稿していますが、既にできているだけでさすがに一日にこんな量書けないのであしからず。
もちろん朝から夕方までちゃんと学校行ってます。
というわけで第二章でした。
まだ、大して物語は展開してませんがどうでしょうか?
少しではありますが、こんな素人の小説を見てくれている人がいるみたいで嬉しいです。
できれば、少しでもいいので感想を書いていただけるともっと嬉しいです。
これからも頑張っていきますので応援よろしくお願いします。