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第一章 1500年前に飛ばされて ―645年 乙巳の変―

物語の都合上、実際の出来事や文献等に載っていることと(かなり)異なります。

あらかじめご了承ください。


 広大な森の中にぽっかりとあいた平地。そこに散乱した大量の機材や資料とともに二人は倒れていた。人どころか動物も見当たらず、ただ静寂だけがそこを支配していた。

 と、優斗が目を覚ました。

「ここはどこだ?」

 辺りを見回すが見えるのは木、木、木。どこかに通じる道すらない。

「おい、結衣!大丈夫か?」

「うーん、もう食べれない……」

「寝てんじゃねぇ!」

 優斗は結衣を思いっきりたたき起した。

「いったーい! レディになにすんのよ!」

「十年以上付き合ってておまえのことを一度もレディっても思ったことないが」

「うぅ、ひどい……」

「そんなことよりここはどこだ? 研究所の近くに森はなかったはずだが」

 研究所があるのは都会のど真ん中。森なんてあるはずがない。

「田舎の方に吹っ飛ばされたとか」

「そしたら地面に叩きつけられて、すでに俺たちは死んでるな」

「じゃあここは黄泉の国!?」

 どうなっているかわからない状況でボケられる結衣の感性は理解に苦しむ。しかし、優斗にはそんなこともうとっくに慣れている。

「とりあえず周りに散乱しているものはすべて研究所のだろうから、何か使えるものがあるかもしれない」

「スル―された……」

「結衣、手伝って」

「…………優斗の馬鹿」

 二人は手分けして荷物を順番に見ていく。すると、あるひとつの箱の中からちょっと大きめのスマートフォンのようなものが出てきた。その画面は消えており、優斗たちは電源をつけようとするがそれらしきスイッチがない。

「なんだこれ? こんなもの研究所にあったか?」

「ボタンが一個もないね。タッチスクリーンかな?」

「こんなに発展した時代でなにを言ってんだか」

「とりあえず使えそうにないからいらないね。その辺に捨ててくる」

「ちょっと待て、研究所のなんだから捨てるはないだろ」

「だってスイッチないし不良品でしょ、これ。よーし、飛んでけ!」

 そう言って結衣が謎の機械を投げようとしたその時、どこからか声が聞こえた。

「待ってください! ちゃんと起動しますってば!」

「……?」

 その声を聞いて優斗は驚き結衣は投げようとするのをやめ、二人で機械を見てみる。その画面には顔のようなものが表示されていた。

「これは……?」

「かわいい!」

「私は『時空測定アンドロイド(感情搭載型) HT-001』です。現在の時代を測定したり、時空の歪みを見つけ出し具現化させることができます。簡単に言えばタイムマシンの劣化版です」

「自分で劣化って言うか……」

「あ、これは製作者が持ち主に初めて挨拶をするときこう言えとプログラミングしたもので、私の本心ではありません」

「感情搭載型、ってこういうことか……」

 半ばあきれた感じで優斗は言う。その横で結衣は驚きと感動といろいろなものが入り混じって「かわいい!」と言って以来一言も発せていない。が、

「では、私のマスターはどなたでしょうか?」

「お……」

「私!」

 突然結衣が優斗の声を押しのけて返事をした。

「わかりました。ではお嬢さん、お名前を教えてください」

「ちょっと待て、なぜ結衣が……」

「横の人、少し黙っててください。雑音が入ると認識しづらくなります」

「うっ……」

 そう言われ、優斗は渋々引き下がる。

「では、改めてお嬢さん、名前をどうぞ」

「東川結衣です! 十七歳、高校三年生! 好きな食べ物は甘いものなんでも! それでそれで……」

「ちょっと待ってください。流石にそんなに高性能じゃありませんよ!」

 喜びのあまり一気にまくしたてる結衣にHT-001はたじたじ。横で見てる優斗もあきれている。

「とりあえず、名前は認識できました。……もしかして東川って私の製作者の一人、東川大雅あずまかわ たいが氏の娘さんですか?」

「うん、そうだよ」

「なるほど。製作者の娘さんに使ってもらえるとは嬉しい限りです。では、他に必要な情報を入力してください」

「そこは音声認識じゃないんだ……」

 結衣が楽しそうにいろいろ入力している間、優斗は他に何かないか探していた。しかし、A=Mストーンが各色十個程度見つかっただけで、他に特になかった。しかし、最後の箱の中に、虹色に着色されたストーンがあった。

「これは……!?」

 そう、このストーンこそA=Mの六つの力すべてをもった第七の石。すべての力を持っているが故、力が分割されている他のストーンより扱いが難しく、下手すると六つすべての力が暴走して出てきてしまうこともある。そのため、一般には一切流通しておらず、手に入れるためには国と生産機関に大量の金と大量の書類を渡す必要がある。そのため、生産数はストーンが出来てからの五十年間でたったの数十個。もちろん優斗自身も留学中にちょっと先生から聞いたくらいで見るのは初めてだ。こんなものをどこだかわからないところに置いていったら大問題になってしまうので、優斗はそっと他のストーンや見つけた工具と一緒にバックに入れた。

「優斗、終わったよ」

「ふう、マスターいろいろ入れすぎですよ。私をなくしたら個人情報全部ばれますよ?」

「大丈夫、大丈夫。あんたが『落としたよー』ってしゃべればオッケー」

「ははは……。そうだ、ついでですのであなたの名前も登録させてください」

「ついでって……。おれは本城優斗」

 優斗は名乗った後、あることを思いついたので、ついで呼ばわりされた仕返しをしようと付け加えて言った。

「本城歩夢の息子だ」

「なんですって! ファザーの息子ですと! それは失礼しました!」

「ファザーって……」

 予想通り、優斗の言葉を聞いたHT-001は驚き今までの無礼をお詫びし始めた。

「まぁ、そんなに気にしてないからもういいよ。ところで、いちいちHT-001って呼ぶのはめんどくさいからなんか名前ないのか?」

「それもそうね。何か名前ある?」

「名前……ですか。初めて起動されたのがついさっきなので特にないですね。製品名はHT-001ですが」

「じゃあ私が名前付けてあげる!」

 結衣はいくつか案を出すがあまりよいものはなく、すべて優斗に却下された。

「うーん、じゃあ『ノウェム』なんてどう?」

「九のラテン語か。よく知ってたな」

「あたしだって数くらい知ってるわ!」

「そりゃ失礼。ところでなんで九?」

ウーヌスでもよかったんだけど、こっちの方が名前っぽいから」

「『ノウェム』ですか。わかりました、マスター。では、これからよろしくお願いします」

「よろしく!」

「では、優斗さんの方も必要な情報を入力してください」

「ん、了解」

 今度は優斗がノウェムに情報を入力。結衣ほど時間はかからなかったが、結衣は自分のものだという意識が強いのか早く返してとしつこく催促していた。ようやく終え、結衣に返そうとしたら彼女はひったくるように優斗からノウェムを取り、大事そうに持った。だいぶ気に入ったようだ。

「ところで、今いる時代を測定できるんだよな? 試しに測ってくれないか」

「了解しました」

 そういうと画面には顔ではなく四ケタの数字が表示されていた。今は「0000」と表示されている。すると、数字の上に「測定中」と出て、数字が動き始めた。そして、数秒後に表示された時代は……

「645年!?」

「はい。この年は……」




〈Narrator Part〉

 話の途中ですが、このまま続けると私の役割が取られてしまうので一度ストップします。

 突然の事故でタイムスリップしてしまった二人。たどりついた先は彼らが暮らす時代から1500年以上前。なんと飛鳥時代です。聖徳太子に始まり、蘇我氏や遣唐使、そして大化改新がありました。

本当はもっとあるのですが、とりあえず置いといて、最後に言いました「大化改新」が今回二人がたどりついた645年の出来事です。正確には大化改新の始まりあたる「乙巳いっしの変」。中大兄皇子(のちの天智天皇)と中臣鎌足が蘇我入鹿を倒す事件です。

しかし、二人と一緒にタイムスリップしてしまったあるものが本当にあった出来事を狂わせ始めます……。




「まさかとは思ったけど本当にタイムスリップしているとは……」

「えっ、優斗はタイムスリップしてるってわかってたの!?」

「情況的に考えてそうだろ。さすがに確証がなかったから黙ってた。もし違ったら混乱させちゃうしね。その前に、『田舎に飛ばされた〜』とか、『黄泉の国〜』とか勝手に自分自身を混乱させていたみたいだけど」

「冗談に決まってるでしょ! でもホントにタイムスリップできるんだね」

「じゃなきゃあんな大勢の前で発表なんかしねぇよ」

「すいません。お二人の身になにがあったのですか?」

 事情を知らないノウェムに二人は事の顛末を伝えた。

「なるほど、そういうことでしたか。では、私が元の時代につながる時空の歪みを探しましょう」

「そうか、その手があったか」

「じゃあノウェム、お願いね」

 ノウェムの画面が顔から今度はレーダーのようなものに変わり、しばらくしたらいくつかの点が現れた。どうやらこの点が時空の歪みらしい。

「どう?」

「歪みはたくさんありますが、残念ながら2179年につながっているものはありませんね」

「そうか……」

 落胆する二人。しかしそれよりも驚くべきことがノウェムから告げられる。

「それより気になったのですが、一つだけ消滅しないものがありますよ」

「なんだって! でも2179年につながってないんだよな? 一体どうしてだ」

「ノウェム、その歪みがどこの時代につながっているかわかる?」

「はい。…………1281年ですね。なんででしょう?」

「もしかしたら俺たちを巻き込んだあの女が何か仕組んだのかも。それにしてもあの女、一体何がしたいんだ? 何かあってその過去を変えたいのはわかるが、こんな時代に来る必要はないだろ」

「もしかして、とっさに操作したから間違えてこの時代に来たのかも。それで、目的の時代に行くために何らかの方法でとりあえず今の時代より後の時代につながる歪みを探して、それを繰り返して目的の時代に行くつもりじゃないかな?」

「それだ! たまにはいいこと言うな!」

「最っ低!」

 結衣はバチンッ! と思いっきり優斗の頬をたたいた。

「ということは最終的に歴史を変えかねないですね。他にタイムスリップできる人もいないでしょうし、帰りたい気持ちはわかりますが、私としては女を追って止めてほしいです。ひとつ変えるだけで未来がどんだけ変わるかわかりませんし」

「そうだな。よし、じゃあその歪みに向かうか。……頬痛ぇ」

「当然の報いよ! じゃあ行きましょうか、ノウェム」

「まてまて俺を置いてくな!」

 こうしてようやく出発することにした二人(と一個)。ノウェムのレーダーによると近くに村があるようなので、日が暮れないうちにその村に向かうことにした。


 二人がいた森は非常に広く、近くの村といってもだいぶ距離がある。はじめは楽しく話していた二人だったがだんだん口数が減り、ついに無言になった。ノウェムも状況を察知して黙っていたが、ついに結衣がその沈黙を破る。

「あー、もう無理歩けない!」

「なんで俺より運動が得意な奴が先にへばるんだよ」

「だってただ歩いてるだけなんてつまんないじゃん! 愛用の鞭とアマスマで魔物をなぎ倒しながらだったら全然大丈夫だけど」

「どういう神経してんだよ……。大体魔物が現れたのは2140年だぜ。この時代にいるわけ……」

「あ、あれ『ラビッター』だ」

「は?」

 「ラビッター」とはウサギがM-Vに感染し魔物化したもので、鋭い聴覚で獲物を探し普通のウサギよりはるかに強力な歯で攻撃してくる魔物。正直、戦闘訓練したての中二でも勝てるくらい弱い。

「普通のウサギと見間違えたんじゃないか?」

「ううん。あの独特の模様と歯は見間違うわけがないわ。それに今までに数千匹殺ってきたし」

「その感性が全くわからん……。とりあえず、もしそれが本当にラビッターなら、タイムスリップしたとき一緒にウイルスが巻き込まれたのか」

「まずいですね。このままこの時代で繁殖されたら未来に影響を及ぼしかねません」

「よし、追いかけて殺るわよ!」

「ちょっと待って。俺何も持ってないぞ」

「へ? 武器は? アマスマは?」

「何も。だってアメリカは魔物いないもん」

「そういう問題じゃないわよこの平和ボケ! 日本にはまだ魔物がうじゃうじゃいるのよ! 死にたいの!?」

「始業式には必要ないし、その翌日も特に授業なかったからまだ用意できてなかったんだよ。本当は明日、お父さんが作った特注のアマスマと銃が届く予定だったんだ」

「もう……。仕方ないわ。ストーンは持ってるでしょ?」

「持ってなかったが箱の中にいくつかあった」

「ということはもともと持ってなかったのね……。アマスマがなきゃストーンもないのは仕方ないか。じゃああたしの予備貸してあげる。壊さないでよ、予備のとはいえ大事なものなんだから」

「すまん。ありがとな」

「じゃ、追いかけましょ。ノウェム、魔物の位置わかる?」

「どこでも使える高性能レーダーを搭載しているので大丈夫です。…………大変です! あの魔物は村の方に向かっています!」

「なんだって!? 結衣、急ぐぞ!」

「よーし、腕がなるわ!」

 もし犠牲が出たら歴史が変わってしまう。元気になった結衣を先頭に二人は急いで村に向かった。


数分後、二人が着いた時にはすでに村中大混乱だった。

「きゃー! 助けてー!」

「この凶暴ウサギめ。森に帰れ!」

「だれか息子を手当てしてあげてー!」

 ラビッターは人を襲い、作物を食い荒らし、さらには家々を壊していった。

「まずい。このままだと村の人全員が殺される!」

「私に任せて!」

 そういうと結衣は愛用の鞭「リリー・ローズ」を取り出し、ラビッターに向けて鞭を振った。

普通に考えたら届く距離ではないが、このリリー・ローズは最大十メートル最小十センチ(持ち手除く)に伸縮できるのだ。

ラビッターよりも早く伸びていく鞭はついに魔物に到達し、まるで意思があるかのように動き魔物をぐるぐる巻きにした。そのまま結衣は鞭の長さを戻し、抵抗できないラビッターに優斗がアマスマでとどめをさした。

「久々に見たが、さらに鞭さばきがよくなったな」

「そりゃ平和ボケしている人と違って、二年間みっちり特訓してきたもん」

「それでぎりぎり高三になれたのか」

「ちょっと、なんで知ってるの!?」

「今の担任って中学の時と同じだろ? 実は俺あの先生と仲良くて、始業式前の空いた時間にお前の二年間の様子聞いた。あ、向こうが勝手に話してきただけだからな」

「あのヒゲハゲクマ親父め~」

 そんな風に二人が話していると、一人の男性が近づいてきた。

「あの、もしかしてあなた方が凶暴ウサギを倒してくださったのですか?」

「えぇ、そうですが」

「私この村の村長の息子です。村を守ってくれたお二人にぜひお礼をしたいと村長がいっているのですが……。そういえばあまり見かけない方ですね、まだ若いのに。身につけているものも見たことがない」

「えっと……、私たち、海の向こうにあるあまり知られていない国から来たんです。最近この国に凶暴化した動物が現れていると聞き、それを討伐するために派遣されました」

 結衣のとっさの嘘を男性は信じたようだ。

「そうでしたか。それはそれは。しかし他のところにも現れているのですか。それは気をつけなければ。ではお二人さん、村長の家にご案内します」

男性についていくとひときわ大きい家に着いた。

中に入ると白髪の老人が座っていた。

「おぉ、帰ったか。ところでそちらのお二人は?」

「凶暴ウサギを倒した方々です」

「ほほぅ、まだお若いのに素晴らしい。大したものはないが、村を救ってくれたお礼じゃ。ぜひ受け取ってくれ」

「ありがとうございます。では、すみませんが俺たちは次の村に行かなければならないので失礼させていただきます」

「まだお仕事の途中でしたか。すみませんお引き留めしちゃって」

「いえいえ。ではまた」

 二人は外に出て、人気のないところへ向かった。そこでノウェムを出した。

「ふぅ。見られてはいけないとはいえ、さすがにポケットの中というのはきついですね」

「今のうちに慣れてないとこれから多いと思うよ」

「確かにそうですね。では、そろそろ行きましょうか」

「ちょっと待って、魔物がいるとわかった以上、こっちも放置するわけにはいかなくないか?」

「えっ、どれだけいるかもわからないのに全部倒すの!?」

「少しでも元と違う状態が残るとどうなるかわからないからね」

「う~。ねぇノウェム。一気に魔物を消し去る方法ない?」

「ないですね。ちなみにレーダー内だけで百匹は超えてます」

「じゃあ私たちこの時代から動けないじゃん!」

「そうだなぁ。さすがにそれは俺もいやだな。なにか方法は……」

 二人が魔物について話し合っていると、後ろから一人の男性が現れた。

「誰だ!」

「これは失礼しました。私は中臣鎌足と申します。お二人の腕を見込んでお願いが……」

「中臣鎌足!?」

「はい、そうですが。なにかありますか?」

「ちょ、ちょっと待ってください」

 二人は後ろを向きノウェムを鎌足に見えないように出した。

「ノウェム、もしかしてまだ乙巳の変は起きてない?」

「少し待ってください。……そうですね。まだ起きてないようです」

「ねぇねぇ、乙巳の変ってなに?」

「少しは勉強しろよ……。中臣鎌足と中大兄皇子が蘇我入鹿を暗殺する事件だ。大化改新の始まりってとこかな」

「ふ~ん。わかんないや」

「もういい」

 二人は鎌足の方に向き直った。

「それで、俺たちに何の用ですか?」

「あぁ、実はお二人の腕を見込んでお願いがあるのです。つい最近現れた凶暴な動物たちを蘇我入鹿が操っていると聞きまして、動物たちを解放するのと同時に今のこの国の情勢を変えるために入鹿討伐を計画しているのですが、協力していただける方がなかなかいなくてですね、ぜひ手伝っていただけないかと……」

「そうですねぇ……、俺たちもいろいろ仕事があるんでちょっと無理ですね」

「そうですか……。お手間を取らせました。もし気が変わったら私の家に来てください。この森を抜けた先にあります」

「わかりました。すいません力になれなくて」

「いえいえ、こちらこそ貴重な時間を取ってしまいすいません」

 そう言って鎌足は去って行った。

 鎌足の姿が見えなくなったところで結衣が口を開いた。

「ねぇ、どうして断ったの?」

「それぐらいわかるだろ。歴史の教科書に載るようなことに関与したら俺たちが歴史変えちまうだろ」

「あ、そっか。じゃあどうする?」

「とりあえずこのあと鎌足は中大兄皇子に会い、そのあと計画を実行に移すはずだ。俺たちはその事実を変えないようにしないと」

「ということは数日はこの時代にいることになるのね……。あの時空の歪みはまだある?」

「ええ。しかしなんででしょう?いつまでたっても消えないんですが」

「今そんなこと考えていても答えなんてでないさ。残ってるならそれでいい」

「そうだね。それじゃあ鎌足の後を追いましょ」


 二人は鎌足の行く先々で魔物を討伐し、鎌足が無事中大兄皇子と会えるようがんばった。

そしてついに鎌足は皇子と蹴鞠の場で出会った。

さらに日がたったある日、ついに計画を実行すると鎌足は皇子に伝えた。それを盗み聞きしていた二人は鎌足たちより先に入鹿の屋敷に忍び込んだ。

「なんか忍者みたいだね!」

「しっ、そろそろ入鹿がいる部屋の上だ」

 そういうと優斗は天井板を少しずらして下をのぞいた。そこには入鹿らしき人と犬の魔物――サタンドッグ――が四頭いた。

「まずいな。あいつ、サタンドッグを四頭もひきつれてる」

「二対四じゃちょっときついわね」

「でもこのままだと鎌足たちが返り討ちにあってしまう。あと、どうやって入鹿が魔物を操っているかも調べないと……」

 二人は小さい隙間から魔物を操る方法を探す。すると、結衣が入鹿の指に紫色に輝く指輪を見つけた。

「あれ、一時期ニュースになった魔物を操る指輪じゃない?」

「ほんとだ。ということはあれを壊せばいいのか。でも、魔物を倒すより先に壊したら入鹿自身がやられる可能性があるな。入鹿は鎌足たちにやられないと歴史が変わってしまう」

「難しいなぁ。あの犬、一撃で倒せない?」

「無理だな」

 すると、突如後ろから足音が聞こえた。

「!?」

 その足音の正体はなんと鎌足と皇子だった。

「君たち、そこで何をしているんだい!?」

「俺たち魔物……じゃなくて凶暴化した動物を倒すために海の向こうから派遣されたんです」

「そうだったのか。なぜあの時言ってくれなかったんだ」

「殺しの専門だと誤解されたくなかったので……」

「そうか。それなら協力しないか? 二人が犬の方を相手しているうちに私たちが入鹿を倒すというのでどうだ?」

「ちょっと待て鎌足。この二人は大丈夫なのか? 本当に入鹿の手下とか賊とかではないのか?」

「大丈夫だ。私は彼らのここ数日の活躍を見ている」

(あっちからも見られてたんだ……)

「そうか。では鎌足を信じよう。では善は急げだ。今すぐ奴を倒すぞ」

「ちょっと、そんな急でいいの?」

「ああ、どうやら今はいつもより護衛が少ないらしい。やるならいまだ」

「よし、ではいちにのさんでいくぞ! いーち、にーの、さん!」

 四人は入鹿の部屋に一気に飛び込んだ。こっちは結衣が鞭を伸ばして囲いを作りサタンドッグたちを足止めしつつ二人でアマスマで攻撃。あっちは逃げ惑う入鹿をついに追いつめていた。そして、ほぼ同時にとどめを刺した。魔物は消え、入鹿はぐったりと倒れこんだ。それを見届けた二人はこれ以上関わらないようにサッと屋敷を出た。

「あれ、彼らは?」

「いない……。もしかしたら仏がつかわした使者だったのかもしれないな」


 屋敷から出た二人は、ノウェムのナビで例の時空の歪みの前まで来た。この時代に来てから数日経つが、やはりまだ消えていなかった。

「ここを通れば次の時代に行けるのね」

「ああ、そして俺たちを巻き込んだあの女を追わないと」

「でも、だいぶ日にち経ってるよ。追えるの?」

「大丈夫です。ずっと歪みの時間は現実の時間と流れが違うので、女が通ってからそう時間の経ってない状態だと思います」

「じゃあ魔物は?」

「大方倒せたし、鎌足を追ってる間に巣もほとんど潰したから、後はこの時代の人たちだけでなんとかなると思う。とりあえず俺たちはあの女を追って、タイムマシンが悪用される前に止めなきゃ。もし魔物が残っても全てが済んだ後、他の人も連れて倒しに戻ればなんとかなるさ」

「…………うん。じゃあ行こう!」

 結衣はなにか釈然としないようだったが、優斗と次の時代を目指して、時空の歪みに入って行った……。




 そのころ、西暦2179年では、

「優斗たちはHT-001を持っているはずだ! 早く探知機を完成させるぞ!」

「はい!」

 研究所では本城博士が他の研究員たちとHT-001を探知し、その時代を計測する機械を作っていた。

「息子まで失ってたまるか……! それに親友の娘まで巻き込んでるんだ! 絶対に助け出す!」

「博士、口より手を動かしてください!」

「うっ、すまん……」

 まだ完成にはもうしばらくかかりそうだ……。

どうも、kumihaです。

早速第一章投稿させていただきました。


まだまだ無名なんで誰も見てないかもしれないけど、いつか誰かが読んでくれると信じてこれからも投稿していきたいと思います。

一応、友だちに宣伝を要請してはいるのですが。


というわけで、ちゃんと物語が始まりました。

今回は645年でしたが、これから様々な時代を巡っていきます。

次は1281年。二回目の元寇が起きた年です。


どのように展開していくのか乞うご期待!

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