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第六章 決戦 -Key and Mystery-(前編) ―2005年 日本国際博覧会―

物語の都合上、実際の出来事や文献等に載っていることと(かなり)異なります。

あらかじめご了承ください。


※第六章は前・中・後の三部になります※

 歪みから出ると、様々な建物が立ち並ぶ場所に出た。

「ノウェム、ここはどこだ?」

「2005年です。場所は愛知県、万博会場ですね」

「それにしても人気がないわね。夜なの?」

「いえ、まだ十時ですよ……?」

 みんなは首をかしげる。すると、美咲が叫んだ。

「みんな、空を見て!」

 そう言われて空を見上げると、雲ひとつない空は紫色に染まっていた。

「ど、どういうことだ!?」

「私が説明してあげるわ」

 突如、勇子が現れた。

「勇子……」

「お姉ちゃん、久しぶり。どこにいたの?」

「江戸時代末期よ。残念ね、先に優斗たちに見つけてもらっちゃった」

「構わないわ。お姉ちゃんを連れて帰れば私の目的は達成させる。でも、ちょっと遅かった」

「……? どういうこと?」

 すると勇子は不敵な笑みを浮かべて言った。

「何千年も探し回って見つからなかったからいっそ歴史を壊してやろうと思ったの。そしたら、江戸時代で『これ』を見つけた」

 その手には、いつか出てきた魔物を操る紫の指輪だった。

「あのあと江戸時代まで残ってたのか……」

「江戸時代で見つからなかったら実行に移そうと思ってたの。そして、見つからなかったからとある時代で見つけた魔物を従えて、この時代に来たの」

 なお笑みを浮かべている勇子は続ける。

「私は特に強力な四体の魔物『四柱神』を使ってここを支配したわ。ここを拠点に日本を、そして世界を支配する。もう邪魔はさせない。たとえあなたたちでも」

「……止めようとするなら?」

「そうね、ここにある四つのパビリオンに四柱神を配置させてあるわ。それを全部倒せたら、あそこに見える塔に来なさい」

 そういって、指差した先には黒光りする塔があった。

「もし来れたら、説得に応じてあげる。それじゃね〜」

 そう言うと、勇子はどこからともなく現れた飛行型の魔物に連れられてどこかに行ってしまった。

「四柱神か……。一体一体が今までの強敵と同じもしくはそれ以上だとすると、優斗たち三人だけじゃかなりきついな……」

「私も戦えればよかったんだけどなぁ」

 戦えない二人がつぶやく。

「とりあえず、一度塔に向かってみないか? どうなってるのか知りたいし」

「そうね、いきましょ」

 戦える人には聞こえていなかったようだ。

 一行は黒光りする塔に向かった。

 道中全く魔物が居なかった。

「雑魚がいなくても大丈夫なほど四柱神って強いのか……?」

「かもしれないわね」

 そうこうしているうちに彼らの目の前には黒い大きな塔が。

「これがその塔ね」

「兄ちゃん、鍵穴が四つもあるよ?」

「なるほど。ということは鍵は四柱神が持ってるってことか」

「はぁ〜、めんどくさいわね。じゃ、早く行きましょ」

「でも、こんな多くのパビリオンの中からたった四つなんて、探すのに時間かかるだろ。なんか方法ないか?」

「手分けする?」

「それはやめたほうがいいと思う。連絡取れないし、中でどんな仕掛けがあるかわからないからな」

 う〜んと考えていると、思いついたように優子が言う。

「HT-001使ったら?」

「それだ! ノウェム、特に大きい反応を探してくれ」

「わかりました。…………検索完了。『エジプト館』『観覧車』『ロボットステーション』『メインドーム』に特に大きな反応を確認。……あと、これは……?」

「どうした?」

「いえ、なんでもないです。ここからならエジプト館が一番近いですね」

「よし、行こう!」




 一行はエジプト館に着いた。

「ねえねえ、やっぱりミイラとか出てくるのかなぁ……」

 幽霊のたぐいが嫌いな結衣はビクビクしている。

「そんなに心配ならノウェムに調べてもらえよ……」

「う、うん。そうする。ノウェム、教えて」

「わかりました。…………大丈夫です。中に入るのは小型の魔物がいくらか、あと巨大な魔物が一体です」

「そ、そう。ありがと。ふぅー……。」

 それを聞いて結衣は落ち着いたらしい。しかし、優斗と優子と笹野は知っていた。HT-001が幽霊まで探知できないことを……。

「さ、中に入ろう」

 中は薄暗く、なにか異臭がしていた。

「くっさーい! なんなのよこの匂い!」

「どうやら本物のミイラを展示しているようです。その保存のためじゃないでしょうか」

「うぅ……。早く済まして出よ」

 奥へ進んでいくと、通路の中央に何か縦長のものがあった。

「これは……?」

「ミイラだな。しかも本物」

「ひっ!」

 それを聞いた結衣は失神しかける。それを優子が支え、なんとか立っていた。

 興味深そうに笹野と希衣がミイラを観察していると、突然ミイラ――型の魔物が飛び出してきた。

 いつもなら魔物を見たら真っ先に倒しにかかる結衣も、現在半分失神中。

「あぅ……」

「結衣ちゃん! しっかりして!」

 優子の呼びかけにすらまともに答えられない。

「仕方がない。美咲、やるぞ!」

「了解、兄ちゃん」

 二人は笹野と希衣に襲いかかる魔物を攻撃する。魔物は大したことなく、すぐに消滅……したと思ったら、復活した。

「えっ!?」

「ミイラなだけあって不死ってか……。結衣……はダメだからお母さん、ノウェムで解析して!」

「はいは〜い」

 優子は自分の子供が立派に育って戦っているのを見て少し嬉しそうだ。

「わかったわ〜。燃やしちゃえばいいって」

「なるほど。くらえ!」

 アマスマから炎が放たれる。それに当たった魔物は燃え、完全に消滅した。

「よし!」

 同じようにして、他の魔物も倒していった。数分後、全ての魔物が消滅した。

「結衣、大丈夫か? もうミイラはいないぞ」

「…………」

「ゆ〜い〜?」

 結衣は放心状態。一言も発さない。

「仕方ない。結衣、あそこにラビッターがいるぞ!」

「! どこどこ!? ぶっ飛ばしてやる!」

「よし」

「さすが幼馴染だね」

 笹野は半分関心半分呆れて言う。

「ふぇ? 魔物はどこ?」

「さあ、奥に行こう」

「ちょっと優斗、どういうこと!?」

 ようやく目覚めた結衣を放って、優斗は奥へと進んでいく。

 そして最奥。そこには巨大な魔物がいた。

「我は四柱神の一人、静かなる蒼き氷を纏いし亀と蛇『氷結ノ玄武』。勇子様に『鍵』と『謎』を預かっている」

「『謎』?」

「それを知りたくば我を倒すがよい。さあ参れ!」

 そう言うと同時に玄武の蛇の方が攻撃を仕掛けてきた。

「わっ、ちょっと待てよ! 自分だけ勝手に名乗って勝手に攻撃してくるんじゃねぇよ! こっちは戦えないのもいるんだぞ!」

「それは失礼した。では、我と戦う者は誰だ?」

「俺と、この二人」

「三人で我を倒すというのか。面白い。では、かかってくるがよい!」

 まず、優斗が囮になって亀の方を攻撃する。その間に結衣と美咲が回り込む。もちろんその間にノウェムを起動して、解析させる。

 うまく回り込め、結衣と美咲がアマスマ(炎のストーン)を放った。

 が、何かに弾かれる。弾いたのは蛇の方だった。

「ふぉっふぉっふぉっ。我は共同体。囮など通用せんぞ」

「ちぇっ」

 結衣は一旦距離をとり、鞭を伸ばして蛇の方を拘束しようとする。しかし、蛇の方もくねくね動き、なかなか捕まらない。

 亀の方はまだ優斗が相手している。

 美咲は……

「おらっ!」

 小柄な体型を活かして亀の腹に潜り込み、下からスタンガンを浴びせた。

「うおっ。なかなかやる……」

 さすがに腹までは見えなかったようだ。しかし、それほど効いている様子はない。せいぜい怯んだぐらいだ。

「美咲、一旦戻れ!」

「ちっ。仕方ないわ」

 一度三人は集まり、体勢を立て直す。

「ノウェム、解析できたか?」

「はい。ただ、弱点が甲羅の中なんですよ。あと、やはり炎系は効きます」

「わかった。二人とも、ごにょごにょ……」

「オッケー」

「よっしゃ、ぶっ潰してやる!」

「何を話していたかは知らんが我を倒すことは出来ん! くらえ!」

 そう言うと玄武は両方の口から凍てつく吹雪を放った。

「させるか!」

 すかさず優斗はアマスマ(炎・最大出力)で反撃。なんとか吹雪はしのいだが、玄武に攻撃まではいかない。

 しかし、その隙に他の二人が回り込む。炎を最大出力で放ったため、炎が大きく二人の姿が玄武から見えなかったのだ。

「何!?」

 叫んだのは玄武。怯んでいる隙に二人は同じ場所―亀の方の甲羅―に炎だけでなく、炎を放った直後に氷を放った。そして、そこに向けて思いっきり衝撃を与えた。

パリーン

 玄武の甲羅に小さいながらも穴があいた。

「や、やめろぉぉぉぉぉ!」

 玄武が暴れ出そうとするが、優斗の射撃が脳天を直撃し怯む。

 そして、結衣が穴から炎を注入。

「ぎゃあああああああああああああ」

 ついに玄武が倒れる。

「よっしゃあ!」

「ふぉっふぉっ……。なかなかやりおるわ。では、おぬし等に『鍵』と『謎』を渡そう」

 そう言うと、玄武は光の玉となり語りだす。


「日浦家に伝わる特殊能力」

 日浦の血が流れる人のうち、ごく稀に特殊能力を持ったものがいる。

 その特殊能力は生まれた時から持っていて、その効果は機械もなにもなしに歪みを実体化させてしまうというものだ。

 しかしこれが厄介で、自分の意思では制御できない。

 そのため、過去に突如行方不明になったものが何人かいるらしい。

 そして、数年前その力を持った子が生まれたという……。


「以上だ。ではこれを受け取れ」

 すると、光の玉は鍵となった。

「やっと一個目か。きっついなぁ」

「まあまあ。少し休憩したら次のところへ行こう」

「いいですね。戦わない人は」

 結衣が皮肉たっぷりに言う。その横で美咲が鼻をつまんでみんなに言った。

「ねえ、外でない? 戦ってて忘れてたけどここ超くさい……」

「た、確かにそうだな。じゃ、外に出ようか」

 一行は外に出て、少し休憩した後、次の『観覧車』に向かった。




 遠くからも見える巨大な観覧車。夕暮れ時に乗ったらさぞ美しい光景を見れるだろう。

 しかし、今は紫の空。高くなればなるほど暗黒の光景を目にすることになる。それでも、乗らなきゃならない。なぜなら……、

「はるか上空に一体だけ、しかも巨大な魔物の反応があります」

「ということは、乗らなきゃならないのね……」

「丁度いいじゃないか。全体が見渡せて」

「それを目にするのが怖いから言ってんじゃん」

「どっちにしろ乗らないとどうしようもならないんだから、さっさと乗ろうぜ」

 一行は中に入って行った。

 現在、観覧車は止まっている。もちろん係員もいない。

「うわ~、かんらんしゃだ!」

「止まってるよ? どうするの?」

「私に任せて」

 そう言うと笹野は運転室に入り、何かいじり始めた。

しばらくすると、エンジン音のようなものがなり、観覧車が動き出した。

「よし、動いた。じゃあ三人は乗ってくれ。私たちは下に残ってる」

「なんで?」

「さっきみたいに邪魔になっちゃうからね。はあ、私も『あれ』があればなぁ……」

「『あれ』って?」

「そっか、優斗くんは知らないのか。優子さんは狙撃の達人で学生時代何度も大会で優勝してるんだ。もしかしたら、優斗くんが銃使ってるのは遺伝だったりして」

「あ~そうかも。何となく銃選んで、そのまましっくりきたんだよね」

「ははは。ちなみに優子さんは狙撃武器なら何でも扱えるんだけど、特に得意だったのが……」

「マシンガンよ」

「はぁ!?」

 優斗と結衣と美咲はびっくり。希衣はぽかーんとしている。

「狙撃が得意なのにマシンガンなの!?」

「ええ」

「これが恐ろしいことにすべての弾を的確に当てるんだよ。まさに百発百中」

「ふえ~。お母さんすごい」

「現代に戻ったら見せてあげるわ。それじゃあ無駄話はこれくらいにして、行ってきなさい」

「おにーちゃんたち、がんばってね~」

 希衣の声援を受け、三人は観覧車に乗りこむ。

 かごはゆっくりながらどんどん上に行き、数分後、ついに頂上に着いた。

 そのままなにもなく過ぎるのかと思いきや、そんなことはなかった。

 突如、観覧車が止まったのだ。

「笹野さん、なにしてるのかしら?」

「いや、違う!」

 いち早く異変に気付いたのは優斗だった。

 止まってから数秒後、かごの側面が開いた。

「ひゃあ!」

「怖いんなら下見るな!」

 美咲がついつい下を見てしまい、悲鳴をあげる。

「で、どうしろっての?」

「俺に聞くな!」

 突然止まったうえ、かごの側面は開放中。飛び降りたらもちろん死ぬ。

「おーい、魔物! 早く出てこい!」

「ふっふっふ。どうだ、上空からの景色は?」

 優斗が呼ぶと、それに答えてかはわからないが、巨大な鳥型の魔物が現れた。

「私は四柱神の一人、燃え盛る紅き炎を纏いし巨鳥『煉獄ノ朱雀』。どうやら玄武を倒したらしいな。私も同じく『鍵』と『謎』を持っている。私を倒したらその両方を与えよう」

「それはいいが、どうやって戦えってんだ?」

「そうだな。これをやろう」

優斗たちのもとに飛んできたのは、ジェットエンジンを搭載した羽だった。

「これを使って私と空中戦だ。私は上で待っている。準備ができたら来るがいい!」

 そう言って、朱雀はさらに上空へ飛んで行った。

「一時期はやったおもちゃ……ではなさそうだな。よし、まず俺が試してみよう」

「ええっ! 大丈夫なの!?」

「心配すんなって。使えないものを渡してくるほど卑怯なやつではないだろ。よし、行くぞ!」

 優斗は羽を背負って、かごの外へ。そしてそのまま落ちて行った。

「ユウト―――――――!」

「兄ちゃ――――――ん!」

「なんてな」

 下から優斗が現れた。どうやらなんでもないようだ。

「びっくりした~」

「ちょっと操作ミスった。大丈夫。操作は簡単だし、特に問題はない」

「ミスったくせによく言う。まあいいわ。美咲ちゃん行きましょ」

「は、はい」

 二人も羽を背負い、かごの外へ。特に問題なく飛べているようだ。

「そういえば、燃料とか大丈夫なの?」

「燃料っていうか電気だな。何箇所かに高性能ソーラーパネルがあったから」

「なるほど。それで、どう戦う?」

「見た感じ相手は炎。細かいことはノウェムに解析してもらうけど、とりあえず分散して各自の武器で敵を止めつつ、アマスマの炎と氷を混ぜて水を放つのがいいと思う」

「そうね。それが一番妥当だと思う。それじゃノウェム、解析お願いね」

「わかりました」

「よし、行くぞ!」

 三人は羽を操作して空へ。どんどん上昇していき、ついに雲の上にたどり着いた。

 そして、そこに朱雀はいた。

「準備はできたようだな?」

「ええ、負けませんよ」

「こっちも簡単に負けるわけにはいかないんでね。では、いくぞ!」

 三人は作戦通り分散し、各自の武器で攻撃する。

しかし、朱雀が纏っている炎が強く、銃弾は溶け、鞭は焦げ、近づくのは不可能だった。

「燃え盛る紅き炎を纏いし、ってのは結構マジだったんだ」

「どうした。攻撃してこないならこちらからいくぞ!」

 朱雀は目の前にいた優斗に狙いを定め、突っ込んでくる。

 優斗は何とかかわすが、もしあれに当たったら衝撃とともに燃やされる。

「作戦変更! ノウェムの解析が終わるまで回避に専念しろ!」

「了解!」

 三人は一度にやられないように可能な限り離れ、武器をしまい回避に専念する。

 それを見た朱雀は、今度は口から炎を吐き威嚇。三人はしばらく守りの戦いをした。

「ノウェム、解析出来た?」

「……できました。弱点は翼のつけ根……応仁の乱のとき戦ったやつと似てますね。有効属性はやはり水ですね。しかし、纏っている炎はどうしましょう?」

「それがわからないと意味ないじゃん……」

 結局攻略法はわからず。仕方なく、いろいろ試すがどれも有効ではない。

「なにをしている。おまえたちの力はそんなものか? 大したことないではないか。それならさっさと済まさせてもらおう!」

 そう言うと朱雀は、美咲に狙いを定め、くちばしの中で何かを溜め始めた。

「どう見てもやばいな……。美咲! 敵が攻撃した直後に数秒エンジンを止めて落ちろ」

「えっ!?」

「ちゃんと敵見てろ!」

 朱雀はついに溜めきって、溜めに溜めた火球を飛ばしてきた。

「うっ、あっ、え―――――い!」

 朱雀が火球を放った直後、美咲は何とかエンジンを切り落下。

 火球を回避することができた。が、そのまま下へ落ちていく。もうすでに雲の下で見えない。

「美咲ちゃ―――ん!」

「あいつなら大丈夫だ。それより敵を見ろ!」

 そう言われて朱雀を見ると、纏っていた炎が消えていた。

「そういうことね!」

 そう、さっきの火球は纏っていた炎を一点に集め、攻撃する大技。そのため、しばらく体を纏う炎が消える。

「よし、今だ!」

 二人は一斉に羽のつけ根に向かって水を放つ。

「うおおおおおおおおお!」

 翼に弱点の水を喰らい、朱雀は落ちていく。

「追うわよ!」

 二人も、下へ降りていく。

 雲を抜けると、地面に落ちている朱雀と、観覧車に戻っている美咲が見えた。

 どうやら朱雀はもう完全に倒せたようなので、とりあえず美咲のもとへ。

「おお、美咲。無事だったか」

「無事だったか、じゃないわよ! いくらかわすためとはいえ、あんな方法ひどいじゃない! あたし死ぬかと思った!」

 美咲は頬を膨らませて怒っていた。

「まあまあ、優斗の判断は正解だったと思うよ。あの火球、簡単にかわせるものじゃなさそうだし。それに、美咲ちゃんを信じてたからそう言ったんだと思う」

 結衣がなだめる。が、

「はっ!? 結衣姉ちゃんが兄ちゃんの味方をした!? やっぱり雪山でなんかあったね!? あれ以来なんかおかしいもん!」

「え、えっ!?」

 結衣があわてたせいで、余計美咲は疑っている。

「はい、朱雀は倒したからとっとと鍵と謎を貰おうぜ」

 優斗が横から口をはさみ、無理やり会話を終わらせる。

「むう、今度追求してやる」

 三人は地上に降りた。

 そこでは下で待ってた三人が手を振って迎えてくれた。

「おにーちゃんたち、おかえり!」

「ただいま、希衣」

「二体目も倒せたようだな。……ところで、美咲ちゃんはどうしたんだ?」

 いまだ頬を膨らませてむすっとしている美咲を見て笹野は言う。

「なんでもないですー」

 美咲はそれをぶっきらぼうにかえす。

「ふふふ、嫉妬してるのかしらねぇ」

「ちょっとお母さん!?」

「ふむ、楽しそうでなによりだ」

 突然朱雀が喋る。

「まだ、生きてたのか」

「まだ鍵と謎を渡してないからな……。では、まず私が持つ謎を話そう」


「希衣の正体」

 これまでの経緯、特に結衣の反応からわかるかもしれないが、希衣は結衣の妹。

 まだ結衣が二歳、希衣が一歳の時、突如現れた歪みに希衣が飲み込まれてしまった。

 希衣はどこか過去に飛ばされ、ある人に拾われ育ててもらった。

しかし、また突如現れた歪みに飲まれ、またその先で拾われ育ててもらい。

それを何度も繰り返していた。

そのため、時間の進みが遅く、十数年経ってもまだ五歳程度なのだ……。


「だそうだ。では、私は消えることにしよう」

 そう言って、朱雀は光の玉となり、そのまま形を変え鍵となった。

「やっぱり……希衣だったのね」

「そういえば、始めてみたときから気付いてるような感じだったな」

「ええ。そう、今でも時々夢に見るの。思い出すこともできない奥深くに埋もれたあの日の記憶――」

 そういうと、結衣は夢野内容を話し始めた。

 それは、希衣が飲まれたときの話だった。

 その日は、両親とも仕事で自宅で二人だけだった。おもちゃで遊んでいたる内に結衣は眠くなり、寝てしまう。そしていくらか経ったあと。目を覚ますと、大きな黒い穴と対峙する希衣の姿を見る。そして、そのまま希衣はまるで食べられるように穴に入ってしまい、戻ってくることはなかった……。

 二歳の時の記憶だ。普通思い出すのは無理だろう。

しかし、記憶は消えるわけではない。その時のトラウマかなにかだろうか、夢で何度もその時のことを見てしまう。

そして、決まって希衣が飲まれた後に、目が覚める。たっぷり汗をかいて。

「でも、またこうして出会えたんだもん。年は離れちゃったし、あたしのことは覚えてないかもしれないけど、それでも大事な妹。絶対現代に連れ帰るわ」

「そうだな。よし、二個目の鍵も手に入ったし、次へ行こう!」

※後編でまとめてお話します※

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