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第五章 大吹雪のスキージャンプ(後編) ―1998年 長野オリンピック―

物語の都合上、実際の出来事や文献等に載っていることと(かなり)異なります。

あらかじめご了承ください。

「とりあえず、ノウェムのバッテリーが何かを確認する。もしかしたら俺の手持ちでなんとかなるかもしれない」

 そう言って結衣からノウェムを受け取り、いろいろ観察してみる。

 どうやら裏のカバーを外せばいいようだが、特殊なネジで締められている。

「このネジ、普通のじゃないけど大丈夫なの?」

「ああ、俺たちと一緒に飛ばされてきた箱に工具箱があったんだが、その中に『形状変化ドライバー』があった」

「形状変化ドライバー?」

「ネジにあった形に変化して、どんな形状のネジでも回すことができる特殊なドライバーさ。悪用されるといけないから、国で厳重に管理している。たしか、中にICチップが入っているはず」

 説明しながら、カバーを閉じているネジを回して取っていく。

「へー。すごいね」

 結衣は特に興味がないようだ。

「…………よし、全部とれた。開くぞ」

 ついにノウェムの内部が明かされる。

「……これが、バッテリー……?」

 バッテリーといえば、真っ先に目につくところについている。

 そして、彼らの目に真っ先に飛び込んできたのは、色はあせているものの第七の石――レインボーストーン――だった。

「これって……レインボーストーンじゃない!?」

「お、よく知ってんな」

「そりゃ、アマスマに関することだったら知ってるわよ」

「ああ、そうか」

「でも、どうするの? レインボーストーンなんて、さすがの私でも持ってないよ」

 結衣はまた泣きそうになる。しかし、優斗はニコニコしている。

「ふふ、そう思うだろ。それがあるんだな!」

「えっ!?」

 優斗がバックから出したのは、まさしくレインボーストーン。みなさん覚えているだろうか? 結衣がノウェムに情報を入れているとき、優斗が箱から見つけた虹色の石のことを。

「すごい! なんでなんで!?」

「これまた一緒に飛ばされてきた箱に入ってたんだ。こんな貴重なもの、置いてくわけにはいかないからね」

「そういえば……、一度これに助けられなかった?」

「ああ、元寇の時か。そういえばバックから光が溢れ出たと思ったら、魔物がひるんでたな」

「へ〜、こんな綺麗な色してるんだ〜。ねえ、一度だけでいいから私のアマスマに入れさせて!」

 アマスママニアにとっちゃ二度とないチャンスだろう。優斗にもそれはわかっていたが、

「いや、今は一秒でも早く魔物を倒そう。……ごめんな」

「ううん、そうだよね。早く帰らなきゃ!」

 優斗はノウェムにはめられているストーンを外し、新しいのに取り替えた。

 そして、カバーをし、ネジを締めた。

「さあ、結衣。起動してみて」

「……そういえば、起動方法知らないや」

「は?」

「ほら、だって初めてついたときも突然ついたじゃん」

「……そういえばそうだ」

 今度は優斗が泣きそうになる。

が、

「ふぁ〜。おはようございます。データをロードしているのでしばらくお待ちください」

「…………」

 やっぱり突然ついた。結局起動方法はわからぬまま。

「おや、マスターに優斗さん。あのあとどうなったのですか?」

「実は……」

 二人はノウェムに、外に出たまではよかったけど、その先どうしょうもならなかったことを伝えた。

「わかりました。私が復活したからにはご安心ください。どうしましょう? 一度戻るかそのまま魔物のところに行くか」

「このまま魔物のところに行こう。笹野さんたちを待ってたら歴史が変わっちゃうかもしれない」

「そうね。早く行きましょう」

「では、ナビゲートします」

 復活したノウェムのナビのもと、二人はどんどん山を登っていく。

 もう、恐れなんてない。いつだって二人だから。

「着きました!」

 山の頂上。さすがにこの山はそこまで高くはないらしく、雲よりは下だが。

 少し遠くを見ると、そこには巨大な影が。

「あれが魔物ね。ノウェム、解析お願い」

「了解しました。…………種族『アイスドラゴン』、熱をも通さない氷の皮膚を持つ。こいつが一つ吠えるだけで吹雪が起きる」

「アイスドラゴン!? あの、氷河期事件の時のやつか!」

「あの時って確か、自衛隊のエリートが五人がかりでやっと倒したんじゃなかったっけ?」

「そうだな。でも、もう解析は済んでる! 俺たちだけでも勝てる!」

「うん!」

 どうやら、あの告白を経て、二人は大きく成長したようだ。

 まず、優斗が銃でアイスドラゴンの気をそらす。その間に結衣が後ろに回り込み、鞭で足をグルグル巻きにしアイスドラゴンの体勢を崩す。アイスドラゴンは負けじと絶対零度のブレスを吐いてくるが、結衣のアマスマの炎のストーン最大出力と互角のため、結衣に当たることなく蒸発。ブレスを吐いたあと、アイスドラゴンはしばらく動きが鈍くなるので、その間に優斗が弱点である心臓部を銃で撃つ。二人の見事な連係プレイによって、アイスドラゴンは消滅した。

「や、やった!」

「すごい! あたしたちだけで勝てた!」

 二人はハイタッチして喜びを分かち合った。

 しばらくして、だんだん吹雪はおさまっていった。

「完全に止まないのは自然の雪雲のせいか。でも、これで競技は続行できるだろ」

「そうだね。さあ、あたしたちも戻りましょ」


 会場ではざわめきが起きていた。突如、大吹雪がおさまったのだから。選手は今がチャンスとばかりにオリンピック委員に競技続行を申し出る。委員はとりあえず安全のため、残りのテストジャンパーに飛んでもらうと決めた。

 二人が下山中、五人が無事飛んだ。

――テストジャンパー あと十一人――



 二人が会場に戻ると、笹野がいた。

「友人が山で遭難して……」

「笹野さん、何やってんの?」

 二人の登場に笹野はびっくり。

「わっ! 二人とも無事だったのか! よかった、よかった。さあ、魔物を倒しに行こう!」

「何言ってるの?」

「パニクりすぎです。周りの状況を見てください」

「へ?」

 そう言われて、笹野は落ち着いて周りの状況を確認する。雪は小降り。テストジャンパーは余裕で飛んでいく。

「……もしかして、魔物まで倒しちゃったの?」

「はい。アイスドラゴンが原因でした」

「なんだって!? あのアイスドラゴンを二人だけで倒したのか!? というかどうやって抜けられたんだ!?」

 二人は、穴に落ちてからの経緯を笹野に伝えた。さすがに、告白のことは黙っていたけど。

「なるほど。そういえばレインボーストーンを研究所で使ってたな。それはよかった。……そういえば、なんか二人ともいつもより仲良くないか?」

「えっ?」

 二人は顔を見合わせる。

「そんなことないですよ〜。ねぇ、結衣」

「そうですよ〜。いつもどおりですよ〜。ねぇ、優斗」

「……あやしい。何かあったな」

 怪しむ笹野の横で、二人は仲良く話している。

「まあいいや。さあ、優子さんたちのところに行こう」

 ジャンプの着地点近くにある屋内休憩所に他の三人はいた。

「にいちゃ〜ん!」

 美咲が優斗に抱きついてきた。

「わっ。なんか前にも同じようなことがあった気が……」

 すると、小声で結衣が言う。

「……ねぇ、あたしも抱きついていい?」

「……みんながいないところでな」

「あらあら、仲がいいのね。穴の下でなんかあった?」

「!?」

 顔を近づけて二人が話していると、優子がちゃかしにきた。

「ちょ、お母さん……」

「だ〜いじょうぶ。内容は聞いてないわ。ふふふふふふ……」

「あやしい……」

 そんな会話に一人置いてけぼりにされていた希衣が優斗の袖を引っ張る。

「おお、希衣。風邪は大丈夫か?」

「おにーちゃん、すきーみたい」

「そうだった。すっかり忘れてた。もうすぐ再開するみたいだし、みんなで観に行こう」

 再会した一行は、外に出た。

 テストジャンパーはあと五人。しかし、もうミスすることはないだろう。

「そういえば、日浦さんはまだこの時代にいるのか?」

「ノウェム、調べてみて」

「はい。…………先ほどアイスドラゴンと戦ったところに保持状態の歪みがあります。もうこの歪みを使って次の時代に行ってしまったのでしょう」

「そうか。じゃあ、ゆっくり観戦できるな」

「笹野さん……。まあいいや。折角だし、観ていこう」

 一行は、うまく空いている席があったのでそこに座った。

 ついにテストジャンパーが全員無事に飛び終え、競技再開。

 どんどん各国の代表が飛んでいく。

 そしてついに日本の番。

「日本代表、頑張れ〜!」

「いけ! 目指せ金メダル!」

 一人目、他の選手誰も届かないくらいの大ジャンプ。飛距離137.0メートル。得点143.6。

「おらっ! 負けたら許さねぇ!」

「美咲、うるさい」

 二人目、一人目ほどではないが大ジャンプ。飛距離124.0メートル。得点124.7。

「おにいさんたちがんばれ〜」

「次は一本目で失敗した人ね……」

 三人目、優子の心配は必要なかったようだ。飛距離137.0メートル。得点141.6。

「よし、いけるぞ!」

「飛べぇぇぇぇぇ!」

 四人目、他の選手に見劣りしない十分なジャンプ。飛距離125.0。得点126.0。

 二本目の合計得点、535.9。二本の合計得点、933.0。

「うぉぉぉぉぉぉぉ!」

 大歓声。合計九百点なんて四人全員が百三十メートル級の大ジャンプしないと勝ち目はない。

 そのまま日本の得点は抜かれることなく、ついに最後の国が飛び終えた。


 結果 三位 オーストリア 得点881.5

    二位 ドイツ    得点897.4

    一位 日本     得点933.0


「すごい! 本当に優勝した!」

「さ、早く次の時代にいこうぜ」

「何冷めたこと言ってんのよ。メダルもらうところまで見ましょ」

「うっ…………まぁ、そうだな」

「授賞式始まるわよ〜」

 一行は下に行き、授賞式を観た。

 大歓声の中、日本代表の四人は金メダルを受け取り、台の一番上に立った。

「うわぁ〜。いいなぁ、金メダル」

「美咲、知ってるか? オリンピック憲章で金メダルは『純度92.5パーセント以上の銀製メダルの表面に6グラム以上の金メッキをしたもの』って定められてるんだぜ」

「兄ちゃん、夢がなさすぎ」

「そうよ、優斗。そういう知識は他のところで披露してなさい」

「すいません……」

 多少雪は降っていたが、無事表彰式は終わった。

「さあ、歪みのところにいきましょ」

「はぁ、またあの山登るのか」

「今度はノウェムがちゃんとナビしてくれるから大丈夫よ」

 しかし、なぜか希衣だけ不安そうな顔をしている。

「希衣、どうした?」

「なんかさむけがする……」

「寒いだけじゃないの?」

「いえ、さっき完璧に防寒させたもの。そんなはずないわ」

「なんでだろう? 希衣、大丈夫か?」

「うん……」

「ここじゃどうしょうもならないわ。とりあえず次の時代にむかいましょう」



 アイスドラゴンと戦った山の頂上にたどり着いた。

まだ希衣は寒がっている。しかもそれは頂上に近づけば近づくほど強くなる。

「なにかの前兆か?」

「かもしれないわね。希衣ちゃん勘がいいから」

「……勘なのかな……」

 今まで、希衣は勇子がいるのを真っ先に気づいていた。

 それは、本当に『勘』なのだろうか?

「今考えてもどうしょうもならないか。よし、次の時代に行こう!」

 一行は次の時代へ向かった。

 それが、最後の戦いの幕開けだと知らずに……。

どうも、kumihaです。


スキージャンプと告白シーン、どうだったでしょうか?

五章も長くなってしまったので全後編に分けさせていただきました。

今回はもちろん告白と次への布石を焦点に書きました。


ここだけの話なんですが、告白シーンが思った以上に難しく、かといって失敗するわけにはいかなかったので、あるゲームの流れを参考にしました。

もちろん参考にしたのはそこだけで、他は全て自分で考えました。


というと先回りの言い訳みたいな感じになってしまいますが、一応参考にしたということだけお伝えしておきます。

もし、作品の題名を知りたい方がいたら公開します。


こんな話で終わるのもあれなんで、作品の話をしましょう。

前にゲームだったことはお話しましたが、もともとゲームのとき巡る時代は十個以上あったのです。

なぜ、小説にしたときカットしたかというと、時間がなかったからです。

まあ時間があったから全部書いたかどうかはわかりませんが。

ちなみにカットした時代は、

1274年 元寇(一回目)

1571年 比叡山焼き討ち

1582年 本能寺の変

1695年 生類憐れみの令

1854年 黒船来航

です。


では、次はついに最終決戦。

時代は同じく平成時代です。


お楽しみに!

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