【 many many 】
落ちかけた陽の光を差し入れて
ほんの少しだけ誤魔化してみた。
待てなかった20秒。
一つ何かを後悔して
大きなゴミ箱に投げ入れてみた。
笑っているような音がして釣られ笑い。
ほら、気がついたら。
あの三角の光は見当たらない。
あの鼻歌も聴こえないし。
あの香りもわからなくて。
あの足跡も響かないまま。
あの冷たさも感じはしないの。
ずっと昔に無くした何か。
深い深い穴に転がり落ちてしまった何か。
両手を広げても触れられない。
そんなのあんまりよね。
都合のいい言葉がかすっただけで
アタシのちっぽけな世界は大停電。
ブレーカーのスイッチはオフのまま。
深い深い穴にダイビング。
なかなか帰って来ないのよ。
だから、意地でも引っ張り出したくなったの。
深い深い穴ならば。
たくさん泣いてみよう。
溢れるぐらい注いだら
浮かび上がってくれるだろうか。
アタシは生きているから。
虫眼鏡片手に文句を言いながら
小さな幸せを摘まんで集めていたいの。
深い深い穴に呆れられるほど泣いていたら
アタシのちっぽけな蛇口は
黙ったまま壊れかけていたわ。
アタシは生きているから。
もしもね。
明日も溢れるほど泣いてしまったら
集めた幸せを浮かべて流そう。
繋いで繋いでカサブタに。
そうなってと願って
バカみたいにばら蒔いてやるの。
塞がるまであと少し。
理不尽な一瞬が邪魔をして
築いた物が崩されてしまう時もあるけれど。
根は強いもの。
すぐに新しい芽を出そうと
けしかけながら笑っている。
だから。
たくさん集めて。
たくさん泣いて。
たくさんばら蒔きながら。
アタシは生きているから。
こんな在り方しか知らないけれど。
太陽に向かって
たくさん文句を言ってやりたい。
それが出来るだけで十分なんだ。