純愛ルール
結婚式場前の駅を出た。
華やかな式場では、大衆に向けブーケを投じる新婦の姿が映る。
新婦は妊娠しているようだった。
新郎は笑っていた、ただ大声で笑っていた。
俺はその非現実に無関心を装いながら、奥の細道を進んだ。
アルフレンド高校はその先にある。
時刻は正午を過ぎていた。
食堂に入ると、幼なじみの赤川裕次郎がいた。
赤川裕次郎は髪を金色に染め、耳と鼻にピアスをつけている。
スラっと伸びた長い足を机の上に乗せ、チョココロネを食べていた。
三ツ矢サイダーをガブ飲みしてから、俺は赤川裕次郎の目を見た。
「もうすぐ冬休みだから、また流行ってるらしい」
そう言って、赤川裕次郎はチョココロネの尻尾を食べたあと、昼寝を始めた。
俺は興味のないフリをして、窓の汚れを見つめていた。
旧校舎2Fの男子トイレに彼女はいる。
決まった曜日、決まった時間に彼女はいる。
彼女は赤川裕次郎の幼なじみである。
そこで彼女は彼女を売っていた。
菓子折り缶の中に札束と小銭が散乱していた。
やはり、流行ってるらしい。
【一発 9980円】
安っ(笑)。
彼女の中が白色で染まったとき、結婚式場の鐘が虚しく鳴った。
俺はとなりのトイレで射精した。
俺と赤川裕次郎は童貞だ。
現実の中に起こりえる非現実は、規則・法律によって制御される。しかし規則・法律は自分の心にもあるはずです。この男二人のように純粋な心(自分ルール)を持っていたいものです。