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まっつぃ17|現代×ファンタジーお仕事短編集

魔法が月額制になった世界で、無料体験勢の俺だけ広告視聴で無双している件

掲載日:2026/02/22

頭を空っぽにして書きました。さぶすくこわい

その日、空に巨大なポップアップが表示された。


《魔法、はじめました。今なら30日間無料体験! ※期間終了後は自動で有料プランに移行します》


 雲を突き破るように輝くその文字を、世界中の人間が「これ、絶対解約忘れ狙ってるやつだわ」と確信しながら見上げた。

 三日後、世界は変わった。魔法は、誰でも使えるようになった。

 ただし――月額制である。



 スマホに届いた通知は、あまりにも軽かった。


『初級魔法プラン:月額980円』

『中級プラン:2,980円』

『無詠唱オプション:+1,200円』

『広告視聴で一部魔法が無料発動!』


 アプリ名は《Miracle+》。提供元は【God Inc.】。

 神、株式会社化。株式公開済み。現在ストップ高。

 人類は一瞬で順応した。ログインしないと、奇跡すら発動しない。



 俺は当然、無料体験勢だった。

 社会人二年目、家賃七万二千円、サブスク疲れ進行中。

 これ以上固定費を増やすのは、無理(語彙力)。


 だが魔法は便利だった。通勤前に「生活魔法・洗浄」を使えばシャツのシミが消える。「微風」で洗濯物が一瞬で乾く。

 問題は、無料期間が終わった瞬間だった。


《無料体験が終了しました。ご利用を継続するにはお支払い情報をご登録ください》


 いわゆる「終わりの始まり」である。人類は歴史上何度もこれを経験してきたが、だいたいロクなことにならない。

 魔法、停止。

 朝、寝癖が直らない。控えめに言って絶望である。



 一ヶ月後。俺は路地裏で人生初の魔物に遭遇した。

 黒い煙のようなそれは、牙を剥き、俺に飛びかかる。


「待って、心の準備が」

 ――人生、だいたい準備してないときにイベントが発生する。

 異界との境界が薄くなったのは、魔法解放に伴う「仕様バグではない」らしい。


「やば……!」

 慌ててアプリを起動。


《ご契約が確認できません》


 知ってる。だが画面の下に、ひとつだけ小さなボタンがあった。


《広告を視聴して初級魔法を一回発動》


 神は慈悲深い。

「見る!」

 即タップ。再生される動画。


『魔王城プレミアム会員募集中! 特典:城内結界無制限、部下復活速度2倍!』


 画面の向こうで豪奢な玉座に座るのは、世界征服を目論む男――魔王ベルゼグラン。

「我が城は常に最新環境だ。無料勢とは違うのだよ」


 魔王がプレミアム会員。

 これが“資本の暴力”というやつか。格差社会、ここに極まれり。というか魔王、お前がスポンサーだったのかよ。


 十五秒後、広告終了。

《初級魔法:火球 使用可能》


「いけぇ!」

 小さな火球が飛び、魔物を焼き払う。

 「勝ったな」「ああ」と独り言を漏らすが、まだ終わらない。



 その頃、世界は完全に「Pay to Win(課金こそ正義)」と化していた。

 富裕層は上位プランで無詠唱、範囲拡大、クールタイム短縮。

 一方、無料勢は広告頼み。戦闘中にドラゴンの炎を避けながら十五秒。控えめに言って、クソゲーである。


 さらに絶望的なニュースが流れた。

『魔王軍、全軍プレミアム移行。部下全員に法人契約完了。なお福利厚生も充実』

 魔王軍のホワイト企業化が進み、勇者志望者が激減。


 俺は考えた。課金するか?

 だが、そのときアプリの規約を読み漁っていて、奇妙な文言を見つけた。


《一定回数以上広告視聴を行ったユーザーは“広告還元者”として特別枠に移行する可能性があります》


 俺は賭けた。

 「乾燥魔法」一回で十五秒。掃除一回で十五秒。

 俺は広告を見続けた。月二千本。

 もはや人間というより“広告再生装置”である。たぶん来世はYouTubeの視聴履歴にでもなるのだろう。



 そしてある日、通知が来た。


《おめでとうございます。あなたは“広告還元者ランクS”に昇格しました》


 ついに俺も“選ばれし者”。なお、特典は広告倍増。

《特典:広告発動の待機時間ゼロ》


 実質、無制限。ただし広告は常時流れる。

 俺が火球を放てば、背後にCM音声。回復すれば、ナレーション。

 「うるさい(確信)」

 だが、最強。



 最終決戦、魔王城。

 プレミアム会員の魔王ベルゼグランが、「圧倒的成長」を感じさせるオーラで笑う。

「無料勢がここまで来るとはな」

「広告還元者だ」


 魔王が無詠唱で雷を放つ。

 俺は広告付き火球を連射。

 背後で流れる軽快なジングル。


『今なら、魔王城の敷金・礼金ゼロ!』


「戦闘に集中させろ!」

 叫びながら撃つ。

 これは戦闘なのか、それとも強制視聴なのか。どちらにせよスキップはできない。人生と同じだ。


 魔王は一瞬、顔をしかめた。

「……その音声、うるさすぎないか?」


 気づいた。プレミアムは広告非表示。

 静寂を愛する王の空間に、俺のCMだけが爆音で響く。

 神の説法。株価速報。

『期間限定! 勇者の聖剣、今ならポイント10倍!』


 「えっ、今買えば10倍なの……?」

 魔王の集中が、お得情報によって乱れる。

「資本主義に、飲まれろ!」


 渾身の火球。爆発。玉座が崩れ落ちる。

 「解せぬ」という顔で消えていく魔王。



 戦いは終わった。

 だが空には再びポップアップ。


《大型アップデート:Miracle+ 2.0 配信開始! ※旧バージョンは順次サ終します》


 俺はそっとスマホを閉じた。

 奇跡は便利だ。だが無料ではない。


 神は微笑み、株価は上がる。

 そして俺は今日も広告を見る。十五秒。


 世界を救うために。

 なお、スキップは不可。

似たような作品で↓のような感じで書いてます。ぜひご一読ください。

【緊急】元勇者なんだけど異世界サポートセンター勤務、クレーム勇者とホワイト魔王軍に挟まれて過労がヤバい【マジで死ぬ】

https://ncode.syosetu.com/n8694lu/


その他ファンタジー短編集↓

https://ncode.syosetu.com/s0717k/


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