魔法が月額制になった世界で、無料体験勢の俺だけ広告視聴で無双している件
頭を空っぽにして書きました。さぶすくこわい
その日、空に巨大なポップアップが表示された。
《魔法、はじめました。今なら30日間無料体験! ※期間終了後は自動で有料プランに移行します》
雲を突き破るように輝くその文字を、世界中の人間が「これ、絶対解約忘れ狙ってるやつだわ」と確信しながら見上げた。
三日後、世界は変わった。魔法は、誰でも使えるようになった。
ただし――月額制である。
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スマホに届いた通知は、あまりにも軽かった。
『初級魔法プラン:月額980円』
『中級プラン:2,980円』
『無詠唱オプション:+1,200円』
『広告視聴で一部魔法が無料発動!』
アプリ名は《Miracle+》。提供元は【God Inc.】。
神、株式会社化。株式公開済み。現在ストップ高。
人類は一瞬で順応した。ログインしないと、奇跡すら発動しない。
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俺は当然、無料体験勢だった。
社会人二年目、家賃七万二千円、サブスク疲れ進行中。
これ以上固定費を増やすのは、無理(語彙力)。
だが魔法は便利だった。通勤前に「生活魔法・洗浄」を使えばシャツのシミが消える。「微風」で洗濯物が一瞬で乾く。
問題は、無料期間が終わった瞬間だった。
《無料体験が終了しました。ご利用を継続するにはお支払い情報をご登録ください》
いわゆる「終わりの始まり」である。人類は歴史上何度もこれを経験してきたが、だいたいロクなことにならない。
魔法、停止。
朝、寝癖が直らない。控えめに言って絶望である。
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一ヶ月後。俺は路地裏で人生初の魔物に遭遇した。
黒い煙のようなそれは、牙を剥き、俺に飛びかかる。
「待って、心の準備が」
――人生、だいたい準備してないときにイベントが発生する。
異界との境界が薄くなったのは、魔法解放に伴う「仕様」らしい。
「やば……!」
慌ててアプリを起動。
《ご契約が確認できません》
知ってる。だが画面の下に、ひとつだけ小さなボタンがあった。
《広告を視聴して初級魔法を一回発動》
神は慈悲深い。
「見る!」
即タップ。再生される動画。
『魔王城プレミアム会員募集中! 特典:城内結界無制限、部下復活速度2倍!』
画面の向こうで豪奢な玉座に座るのは、世界征服を目論む男――魔王ベルゼグラン。
「我が城は常に最新環境だ。無料勢とは違うのだよ」
魔王がプレミアム会員。
これが“資本の暴力”というやつか。格差社会、ここに極まれり。というか魔王、お前がスポンサーだったのかよ。
十五秒後、広告終了。
《初級魔法:火球 使用可能》
「いけぇ!」
小さな火球が飛び、魔物を焼き払う。
「勝ったな」「ああ」と独り言を漏らすが、まだ終わらない。
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その頃、世界は完全に「Pay to Win(課金こそ正義)」と化していた。
富裕層は上位プランで無詠唱、範囲拡大、クールタイム短縮。
一方、無料勢は広告頼み。戦闘中にドラゴンの炎を避けながら十五秒。控えめに言って、クソゲーである。
さらに絶望的なニュースが流れた。
『魔王軍、全軍プレミアム移行。部下全員に法人契約完了。なお福利厚生も充実』
魔王軍のホワイト企業化が進み、勇者志望者が激減。
俺は考えた。課金するか?
だが、そのときアプリの規約を読み漁っていて、奇妙な文言を見つけた。
《一定回数以上広告視聴を行ったユーザーは“広告還元者”として特別枠に移行する可能性があります》
俺は賭けた。
「乾燥魔法」一回で十五秒。掃除一回で十五秒。
俺は広告を見続けた。月二千本。
もはや人間というより“広告再生装置”である。たぶん来世はYouTubeの視聴履歴にでもなるのだろう。
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そしてある日、通知が来た。
《おめでとうございます。あなたは“広告還元者ランクS”に昇格しました》
ついに俺も“選ばれし者”。なお、特典は広告倍増。
《特典:広告発動の待機時間ゼロ》
実質、無制限。ただし広告は常時流れる。
俺が火球を放てば、背後にCM音声。回復すれば、ナレーション。
「うるさい(確信)」
だが、最強。
⸻
最終決戦、魔王城。
プレミアム会員の魔王ベルゼグランが、「圧倒的成長」を感じさせるオーラで笑う。
「無料勢がここまで来るとはな」
「広告還元者だ」
魔王が無詠唱で雷を放つ。
俺は広告付き火球を連射。
背後で流れる軽快なジングル。
『今なら、魔王城の敷金・礼金ゼロ!』
「戦闘に集中させろ!」
叫びながら撃つ。
これは戦闘なのか、それとも強制視聴なのか。どちらにせよスキップはできない。人生と同じだ。
魔王は一瞬、顔をしかめた。
「……その音声、うるさすぎないか?」
気づいた。プレミアムは広告非表示。
静寂を愛する王の空間に、俺のCMだけが爆音で響く。
神の説法。株価速報。
『期間限定! 勇者の聖剣、今ならポイント10倍!』
「えっ、今買えば10倍なの……?」
魔王の集中が、お得情報によって乱れる。
「資本主義に、飲まれろ!」
渾身の火球。爆発。玉座が崩れ落ちる。
「解せぬ」という顔で消えていく魔王。
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戦いは終わった。
だが空には再びポップアップ。
《大型アップデート:Miracle+ 2.0 配信開始! ※旧バージョンは順次サ終します》
俺はそっとスマホを閉じた。
奇跡は便利だ。だが無料ではない。
神は微笑み、株価は上がる。
そして俺は今日も広告を見る。十五秒。
世界を救うために。
なお、スキップは不可。
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