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ユメノハナシ

ユメノハナシ ~逃げる夢~

作者: MAGA

変な服を着てたよ、この辺じゃ見ない顔だったよ――


その日――私は仲間達と動画撮影をしていた。


仲間の一人は女性で、赤子の人形を持っている。

もう一人はふざけた性格のようで、あまり物事を深くは考えないようだ。

というより――始終狂ったように笑っている。


最後の一人は――常に母親が付き添っていた。

その日も母親が一緒なのだが――それを誰も気にはしていない。


私たちが乗っている車は改造が(ほどこ)してあって――スイッチを入れると緊急車両のサイレン音が鳴り響く。

もちろん本物と間違われないように、サイレン音の後半は珍妙なアレンジがしてあるのだが――


どこかの建物――おそらくショッピングモールだ。

そこの屋上駐車場でサイレンを鳴らして、仲間達と大笑いしていた。


(まが)い物とはいえサイレン音は目立つ。

急いで帰ろうとすると――数多くの緊急車両とすれ違った。


本物が来ちゃったよ、ふざけた仲間は(はしゃ)いでいる。


しかし――数が多い。


消防車、化学消防車、救急車にパトカー――

よく見ると自衛隊の車両も混じっている。

ありゃハンヴィーじゃないのか、そんなことを言いながら建物から出ると――


街の様子が変だ。

車を乗り捨てて仲間と走っていると、臨時ニュースが聞こえてきた。


四国が()()()()()()()()()()()ようです――と。

ビルのオーロラビジョンに写し出された日本列島の衛星映像では、四国周辺に青黒い雲がかかっている。


急いで帰ろうと――否、逃げようとするが、大通りには白い衣装を着た外国人が大勢いて話しかけてくる。

世界の終わり等といった、宗教的な話のようだ。

その目には狂気染みたものが宿っていて――怖い。


仲間の一人は母親と揉めていた。

通りすがりの子供が持っていた扇、それに経文のようなものが書かれているが――仲間はその扇を粗末に扱ったようだ。

そのことに対して、彼の母親が食って掛かっている。

母親に仲間は言った。

こんなもの――()()()()()()()()()()()()()と。


大通りは進めないので地下道に続く扉を開ける。

中は誰もいなくて、江戸時代の街並みを再現したセットのようだ。

全ての建物、全ての店――反物(たんもの)屋や菓子を売る店等いろいろだ――は、まるで使われた形跡が無く異様に綺麗なままだ。

それもそのはずで、建物の軒先には、その建物が撮影用のレプリカである旨の札がかかっている。


建物も道の草花も飛んでいる蝶も――

みんな綺麗で日差しも柔らかだが、誰もいない。

あまりの静けさに――奇妙な感覚がした。


奥の建物の扉を開けると、無機質な廊下に出た。

さらに隣にもドアがあって――開けると高架下の道路に出た。

車がたくさん走っている。

古い形の――今では見ない形のダンプトラックも。


あのセットは何だったのか。

住んでいる(そば)にあんな場所があったのか。

急いで通り抜けたのが――少しだけ惜しく感じられた。

もう一度行こうと再び扉を開けると、セットの中を誰かが近づいて来る音がする。


慌てて別の扉から出て、通りに出た。


近くにあったゲームセンターに逃げ込む。

すると店員のおばさんが、あなたはいつも見るだけでゲームをしないね、ここ――画面の隅――に数字が出ているゲーム機はできるよ、と話しかけてくる。

アダルトゲームの筐体が並んでいたが――まるで興味を持てない。


無視してクレーンゲームの方に行く。

振子状の重りをぶつけて落とすタイプのクレーンゲームのようだ。


と――周りの子供達が騒いでいた衝撃で景品の人形が落ちてきた。


本物くらいの大きさがある赤子の人形。


正直要らないが売れば金になると思った。

気づくと他にも、落ちてきたウルトラマンだか怪獣だかの人形がたくさん散らばっている。

要らないが、売れば結構な金になりそうな数。


良さそうなものを選んでポケットに入っていたビニール袋に入れていると――すぐ隣にいたおじさんが子供達にクレーンゲームのコツを教えていた。


こういう風にすれば取れるんだよ、と。


それを聞きながら足早に店を出る。

後ろのほうからおじさんの声が聞こえてきた。

()()()()()()()()()()()()()、クレーンゲームは得意なんだ、それから――


そこのお前、店の商品を盗んだな――


私のことを言っている。

慌てて別の地下道に逃げ込む。


私の事を言う、子供達の声が聞こえた。

変な服を着てたよ、この辺じゃ見ない顔だったよ――


ドアを開けると不潔なトイレだった。

隠れたくはなかったが、ふと奥にもうひとつ扉があるのに気づく。

開けると外で、階段の下の狭いスペースに繋がっていた。

地面と階段の狭い隙間からようやく這い出すと――


そこは高い建物の緑色の屋根の上だった。

周りの街並みが(かす)んでみえる。


ドローンで撮った空撮のように、塔のようなその建物の周辺が見える。


ここからどうやって逃げようか。

それにしても――綺麗な風景だ――



そう思ったところで――目が覚めた。


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