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彼女が超能力OLで、僕は全部支配されました  作者: バンディット
第七章 涼子♡本気になる(最終章)
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第7章-EP08 TOB

【TOB(株式公開買付け)開始】


——7月1日、日本時間 午前9時。


テレビの画面に速報の赤テロップが走った。


> 「速報です。ドイツの投資会社、ライン・ヴェルト・アセットが、日本の総合商社・陽光商事に対し、敵対的TOB(株式公開買付け)を発表しました——」

>


キャスターの声が読み上げられた瞬間、陽光商事の社内には緊張が走った。


「な、なんだって!?TOB!?敵対的に!?誰が……?」


緊急招集された役員会議では、社長・桜井を筆頭に、幹部たちが混乱の中にいた。IR(投資家向け広報)担当の部長が、蒼白な顔で報告を始めた。


「TOBの価格は、昨日の終値に対し30%のプレミアム……現在、株価は急騰中です。相手は、ドイツのライン・ヴェルト・アセット社。代表者は……ハンツ・アイスナー氏。金融庁にもすでに届出済みです」


「なんだその名前は……」


創業家出身の現社長、桜井は、血相を変えて叫んだ。これまで、まさか海外の投資会社から敵対的TOBを仕掛けられるなど、夢にも思っていなかった。

「ライン・ヴェルト・アセット…聞いたこともないな。一体、何の目的で?」


その名前に聞き覚えがある一人の幹部が、そっと顔を伏せた。そう、かつて涼子に“支配”され、翔太に傾倒する者だった——。


===================

【株主を落とせ!涼子と翔太の交渉ツアー】


六本木ヒルズの高層階、ライン・ヴェルト・アセット・ジャパンの役員室では、ドイツから戻った涼子と翔太は政子、ハンツとWEBミーティングにて最終作戦の打ち合わせをしていた。


「ここから先ハ、あなたたちノ舞台デス♡」


ニヤリと笑うハンツから送られてきた資料には、大株主のリストがずらりと並べられていた。だがその順番は五十音順でも、持ち株比率順でもない。


「……これ、どういう並び?」と首を傾げる翔太に、政子が答える。


「ふふ。あたしが“見た”順よ。落としやすさランキングってとこかしら♡」


涼子は書類を手に取り、ページをパラパラとめくりながらニヤリと微笑んだ。


「翔太くん、行くわよ。会社買収って、結局最後は“人の心”が勝負なの♡」


——“株主交渉ツアー”は、翌日から始まった。


===================

①大阪・財閥系老婦人(3%保有)


広大な和風邸宅の客間。欄間から差し込む午後の光が、柔らかく畳の上を照らしている。

茶器の香り、季節の和菓子、庭先に咲く芍薬——すべてが、丁寧に歳月を重ねた品の良さを漂わせていた。


「……陽光商事の株ねぇ。亡き夫が残したものだけれど、もう思い入れもないのよ。

動かす理由も、なくなってしまったの」


そう言って、微笑む老婦人。どこか寂しげで、けれど誇りを失っていない。

その手元には、古びた株主名簿と、一冊のアルバム。


涼子は、静かに座り直すと、老婦人の目を真っすぐに見つめた。

やわらかな声で、そっと囁くように言葉を紡ぐ。


「でも……もしその株が、未来の若者たちの夢に繋がるとしたら……

失われかけた“想い”を、誰かが受け継いでくれるとしたら……

……そうしたら、ほんの少しだけ、心が温かくなると思いませんか?」


その瞬間、涼子の瞳がほんのりと赤く光り、ホルモン操作が優しく発動する。

部屋の空気が、ふわりとやわらかく包み込まれるように変わる。


老婦人の目が、ふと潤んだように揺れた。


「……あなた、いい声をしてるのね。お茶の香りに似ているわ。

どこか懐かしくて、優しくて……」


目尻に小さな笑い皺が刻まれると、老婦人はふっと鼻を鳴らして笑った。


「あなたたち……まるで、青春映画を見てるみたいねぇ。

あの子と一緒に、夏の日に自転車で坂を登った頃を、思い出したわ」


涼子が静かに頭を下げ、翔太もまっすぐ礼をする。


「……いいわ。この老骨の持ち物なんかで、誰かの未来が動くのなら——

売ってあげるわよ、涼やかなお嬢さん」


涼子は、にっこりと微笑んだ。けれどその裏で、そっとホルモン操作を解いていた。


===================

②四国・カリスマ経営者 (3%保有)


瀬戸内海を一望する高台の別荘。眼下には光る水面、潮風に揺れる松の木々。


ベランダで待ち構えていたのは、地元では“鬼のカリスマ”と恐れられる体育会系経営者。


サングラスにアロハ、筋骨隆々。


「俺に株を売ってほしい?3分で説得してみな。時計、スタートな」


その瞬間、翔太の脳内に「キュイン♡」と何かが響いた。横にいた涼子がさりげなく、瞳を赤く光らせたのだ。


——脳内ホルモン操作、発動。


翔太の中の「プレゼン力」がなぜかMAXに、いや、むしろ「涼子愛語り力」が異常にブーストされていく。


「……僕は、涼子先輩が信じた未来を、一緒に作りたいんです!」


「僕じゃ頼りないかもしれないけど、でも……誰よりも彼女を大事にします!」


「命を懸けて守ります!もし倒れたら、その時は……全力でおんぶして帰ります!!」


もはや何のプレゼンなのか、誰もわからない。


しかし経営者は、顎に手を当て、真剣な眼差しで翔太を見つめた。


「……涼子ちゃん、その男、いいな」


「真っ直ぐすぎて逆に惚れる。いや、俺が20歳若かったら絶対に落ちてた」


涼子はにっこり微笑んだ。


「うふふ♡この子、ちょっとおバカだけど、でも真っ直ぐなの」


「……気に入った。俺の株、ぜんぶやる。お前らの未来に、投資してやる!」


——その後、彼の地元で“翔太ファンクラブ・四国支部”が密かに設立されたのは、また別の話である。


===================

③中部・トラック会社社長(2%保有)


中部地方の郊外、倉庫と物流センターが連なる一角。

その中に、社員から“走る哲学者”と呼ばれる男がいた。中堅トラック会社の社長、五十嵐——白髪交じりのベテランで、信念と誇りに生きる職人気質。


応接室の椅子に深く腰かけた五十嵐が、ゆっくりと言葉を発した。


「運送業に未来はあると思ってるんやて。でもな、陽光商事は……変われなんだ。今さら買収されたところで、どうなるんや」


翔太が身を乗り出す。


「……でも、今の陽光商事には、涼子先輩がいます!僕も彼女の後ろを、必死で走ってきました!物流の未来にだって、光はあるって信じてます!」


しかし、社長は腕を組んだまま渋い顔。


「気持ちはわかる。けどな……夢だけじゃ荷物は運べんのや」


その時だった。

ふわりと甘い空気が室内を包む。涼子が一歩前へ出た。


「うふふ……社長さん♡ あなたは、未来をとっても大切にされる方なのね」


瞳が静かに、しかし確かに赤く輝いた。

次の瞬間——五十嵐の表情がふっと和らぎ、目がトロンと潤み始める。そして呼吸するたびに蜜が肺に満ちていくような甘美な窒息感を味わう。


「……あ……ああ……」


「ねぇ、社長さん♡ 私たち、未来を“運ぶ”ことにかけては、きっとあなたの仲間になれると思うの」


涼子はゆっくりと、椅子に腰かける社長の隣にしゃがみこみ、やさしく手を重ねた。


「この子はまだ未熟だけど、まっすぐで、嘘がつけないの。だからこそ、あなたの会社みたいに、真面目に未来と向き合ってる方に、ぜひ味方になっていただきたいんです♡」

挿絵(By みてみん)

社長はしばらく涼子の手を見つめた後、スッと立ち上がり、大きく深呼吸した。


「……まいったな。こんな説得、初めてや」

「俺の株、君らに預けるわ。運んでみなさい、自分たちの未来を」


翔太はその言葉に深く頭を下げた。


「ありがとうございます、社長!……ていうか、先輩、なにしたんですか……?」


「ん?ちょっと“説得”しただけよ♡」


——その後、五十嵐社長は帰りの車中、助手にこうつぶやいた。


「……あの娘の目ぇ……あれは魔性の目や俺の心ごと運んでいきよった……でも不思議といい気分やまた会いたいのお!」


===================

④東京・謎の大株主(9%保有)


都内の静かな住宅街。古びた一軒家の門をくぐると、庭にはよく手入れされた梅の木が立っていた。

迎えてくれたのは、杖をついた老人。背筋は少し曲がっていたが、その瞳には揺るぎない知性の光が宿っていた。


「説得しに来たのか。若いのに、骨があるな」


茶を出された応接間。古い柱時計が、チクタクと時間を刻んでいる。

翔太は、涼子と並んで正座し、深々と頭を下げた。


「……はい。陽光商事を、守りたいんです」


老人は黙ったまま、ゆっくりと翔太を見つめた。

その眼差しには、何人もの“若者の理想”を見届けてきた者だけが持つ、静かな厳しさがあった。


「佐々木……という名字。あんたの旦那か?」


ふいに投げかけられた問いに、涼子は微笑みながらうなずいた。


「ええ♡ 私の最強の武器なんです」


翔太が照れくさそうに俯くと、涼子はその肩にそっと手を置いた。


「この子は、誰かに頼まれたわけでも、命令されたわけでもなく、心から——

“あなたの会社を守りたい”って、言ったんです」


老人の表情が、わずかに緩んだ。そして、ふと、かすかに笑うようにこう呟いた。


「……若い頃の自分を、思い出すよ。信じた道を、ただ真っ直ぐに突っ走る。傷だらけになっても止まらない——そんな奴が、まだこの国にもいるんだな」


静かに、老人は立ち上がり、部屋の奥の金庫へと歩き出す。そして、分厚い封筒をひとつ、机の上に置いた。


「これは、君たちに託す未来だ。好きに使いなさい」


翔太が何度も頭を下げる横で、涼子は穏やかに微笑んだ。

ホルモン操作も、何も使わず、ただ“翔太そのもの”が、人の心を動かした瞬間だった。


===================

こうして、涼子と翔太はライン・ヴェルト・アセットのTOB成功に向け、確実に地盤を固めていった。


さらに各方面でもこの劇的な買収劇は話題となり、

・経済誌『財界ストレート』が特集を組み、

・社内掲示板には「新社長候補は誰だ?」と憶測が飛び交い、

・SNSでは「#陽光の夜明け」がトレンド入り。


まさに世論を巻き込んだ「ドラマチック買収劇」となっていた。


===================

【臨時株主総会の開催決定】


そして、TOB開始からわずか2週間で、ライン・ヴェルト・アセットは過半数の議決権を掌握。


「臨時株主総会の開催を、正式に通知しました」


ハンツからの連絡が届いたのは、7月15日。株主総会の開催日は——8月29日。


ついに、決戦の時が刻一刻と近づいていた。


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