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彼女が超能力OLで、僕は全部支配されました  作者: バンディット
第七章 涼子♡本気になる(最終章)
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第7章-EP07 ハンツの真の顔

【陽光商事買収の資産額】


「買収額の試算、できたよ。だいたい……300億円」


翔太がノートPCの電卓を叩きながらつぶやいた。


「はは……ぼくがアルバイトして300億円稼ぐには……うーん、だいたい時給500万円で……6000時間……?」


「翔太くん、それって1日何時間働くつもり?」


「365時間くらいかな……」


「……莫迦♡」


——けれど、二人の表情は笑っていなかった。


300億という現実の重みに、さすがの涼子も沈黙した。


===================

【中央競馬場、晴天、夏の風】


「……第六レース、まもなく発走です」


場内アナウンスが響く。日曜の東京競馬場は、汗と情熱と赤ペンのにおいに包まれていた。

挿絵(By みてみん)

観客席の一角、涼子は黒のサングラスに白シャツ、そして帽子を深く被っていた。


その隣で、翔太が紙コップのアイスコーヒーを手に震えている。


「りょ、涼子先輩……本当にやるんですか?こんな大勢の前で超能力……」


「ふふ、心配しないで翔太くん♡今の私、ホルモン操作の気配を消してるから♡」


「それってサングラスかけてるだけじゃないですか!?いやその理屈がもうホラーなんですよ!」


涼子は馬柱の新聞を軽く見やりながら、小さくつぶやいた。


「この11番、オッズ4.9倍。スタミナはあるけど、コーナーが甘い。——でも……」


涼子の目がサングラス越しに赤く光った。


「私がちょっとだけ、お尻を押してあげれば……♡」


――ファンファーレが鳴る。


スタートゲートが開き、馬群が勢いよく飛び出した。11番は後方からの追走。


しかし、最後の直線——


「翔太くん、見ててね♡」


彼女が指をピンと立て、そっと空中に触れた瞬間。


11番の馬がスッと風を切り、他の馬を一気に抜き去っていく。


「え!? なにあれ!?11番どうした!?」


「差したァァァ!11番差したァァァァアアア!!!」


観客がどよめく中、翔太は額にじっとりと汗をかいていた。


「……やば、完全にチートじゃないですか……」


「ふふっ♡わたしが“勝たせてあげた”のよ。かわいいでしょ?同時にジョッキーさんのホルモンを操作してドーパミンとアドレナリンを出してあげたんで彼は完全に自分の力で勝ったって思っているわよ♡」


それから数時間——


3レース連続的中。勝金全額プッシュで彼らの手元には1200万円近い現金が積まれていた。


翔太「元金10万から始めてオッズ5倍前後の単勝に全プッシュ50万、250万、今1200万いや……これ、あと5回繰り返せば……6千万、3億、15億、75億、そして375億……目標の300億に届きますね!」


バサッとスポーツ新聞を閉じる涼子。その顔に、疲労と冷静が混じっていた。


涼子「……でもね、翔太くん。だんだん仕組みがわかってきたわ。これ以上の金額でやったら、5倍のオッズにいれてもオッズが変わって配当が下がっちゃうし、目立つからそろそろ胴元のJRAの人たちに“運命を改ざんしてる”ってバレるかも♡」


翔太「え、それって捕まるとかじゃなくて……」


涼子「……消されちゃう?♡」


翔太「……ひぃぃぃぃ!……やっぱり日本の公営ギャンブルじゃ300億は無理かぁ……」


===================

【涼子の性格は母親似】


と、その時。


涼子のスマホが震えた。


>♢ 発信元:ドイツの母


涼子「……!」


翔太「誰からですか?」


涼子「……政子ママ」


通話ボタンを押すと、耳元から甘ったるく、それでいて底知れぬ声が響いた。


> 政子『ふふっ……涼子。困っているようね?』

> 涼子「お母さん……何の用なの、どうして今さら?」

> 政子『もちろん予知済みよ。あなたたちがこうなることくらい』

> 涼子「ならもっと早く教えてくれたっていいじゃない……!」

> 政子『うふふ♡それはね涼子。あなたの性格が……母親似だからよ♡』


――その瞬間、涼子は悟った。


母は、最初からすべての展開を読んでいた。自分たちがドイツへ行くことも、ハンツに再会することも——そして、陽光商事を揺るがす本当の戦いが、ここから始まることも。


> 『お母さんってホント性格悪いわね!』


――涼子はそう言うと電話を切った


翔太「え、なに、なんかすっごい流れで海外行き決まってない?」


涼子「……翔太くん、パスポート持ってる?」


翔太「えっ、えっ!?はい!?!?」


===================

【運命の空路、ファーストクラスでドイツへ】


羽田空港・国際線ターミナル——。


府中の東京競馬場で1200万円を手にした涼子と翔太は、即座にスマートフォンでルフトハンザ航空のファーストクラス往復チケットを2枚購入し、羽田空港へと急いだ。


翔太「ビ、ビジネスクラスでもよくないですか?……」


涼子「翔太くーん、これから300億を動かす男がエコノミーやビジネスなんか乗ってたら、説得力ゼロよ♡ これはもう、立派な投資なんだから」


——羽田第三ターミナル、ふたりは保安検査を抜けて出国審査を済ませ、制限エリア内へ。


そこには免税店の華やかな光と高級ブランドのショップが並ぶ、いわば大人の楽園。


翔太が目を白黒させている間、涼子はまるで水を得た魚のように自然にラグジュアリーエリアへと足を進めていた。


数分後——


翔太「えっ、涼子先輩!? いつの間にそんな格好に!?」


柔らかなアイボリーのサマーツイードのセットアップに身を包んだ涼子が、上品なヒールで歩いてくる。その首元には、ティファニーのショーケースでさりげなく選んだゴールドのペンダントがきらめいていた。


「んふふ♡出国エリアのティファニーでね。だって、今からドイツの投資家と直接会うんだもの。名刺の代わりに印象を残さなきゃ♡」


翔太「え……えぇ……あれ、俺だけ競馬帰りのジャケットなんですけど……?」


涼子「大丈夫よ翔太くん♡ あなたは“庶民代表”ってことでバランス取れてるわ♪」


そしてふたりはファーストクラスラウンジへ向かう。


「……ここが、ファーストクラス……!? 空港ラウンジじゃなくて……もう、高級ホテルのロビーじゃないですか……!」


翔太が天井の高い受付カウンターを見上げて、呆然とする。


隣では、すでに新しいブランド物のパスポートケースを手に、冷静に笑みを浮かべる涼子。


「大丈夫よ翔太くん、これは“経費”だから♡」


「な、なにの!? 何の経費!?」


「……運命の投資活動にかかる、必要経費でしょ?♡」



搭乗後、案内されたのはルフトハンザ航空のファーストクラス。


ふかふかのシート、個室のようなプライバシー空間、そしてウェルカムドリンクのシャンパンが、まるで別世界の時間の始まりを告げていた。


「涼子先輩……僕、生まれて初めて飛行機の中で足を伸ばせました……」


「うふふ♡ もっとリラックスしていいのよ、翔太くん。今日はね、私たちの新しい未来への船出なんだから」


ほどなくして、豪華なミールコースが始まった。


キャビア、ステーキ、そしてワゴンで運ばれてくるチーズに、翔太の顔はますます引きつっていく。


「こ、これ本当に無料なんですか……?」


「ふふ、“無料”というより、“当然”よ。……そうよね?」


涼子がチラッとCAに微笑みかけると、CAもにっこり微笑んで「はい♡もちろんでございます」と即答。


飛行機のファーストクラスではホルモン操作などなくとも、全てが超にこやかに対応される。


食事が片付けられてしばらくするとCAさんが座席を倒してフルフラットのベッドが作られる。照明が落とされてドイツまでの快適な睡眠空間が出来上がる。翔太は激動の一日を振り返りながら死んだように眠った。


再び照明が付くとCAさんがにこやかに朝食を運んできてくれる。


「ねぇ、翔太くん。もうすぐドイツ、ラインの都よ」


「うん……なんか、遠足っていうか、国家転覆の旅って感じになってきましたね……」


「ふふっ♡ でもね、私が“本気”で味方するって、こういうことなのよ?」


「まったく先週までは平社員で寝坊して先輩に怒られる生活だったのが嘘のようですw」


空の上——。


日本から遠く離れ、未来へと向かう“愛と超能力”のカップルが乗る飛行機は14時間の旅の末、滑るようにドイツの空港に降り立とうとしていた。


===================

【フランクフルト到着、そしてライン・ヴェルト・アセットへ】


ルフトハンザ航空のファーストクラス、LH717便は、定刻どおりフランクフルト国際空港に到着した。


涼子はタラップを降りながら、清々しい笑みを浮かべていた。


「ふふ、ドイツの空気って、なんだか凛としてるわね。……ほら翔太くん、スーツケース持って♡」


「う、うん……でも先輩、こっちの空港ってやたら広くないですか?ターミナル間の移動だけで万歩計が悲鳴をあげそう……」


到着ロビーの案内板を見ながら、涼子はすぐに方向を定めた。


「まずはRegionalbahnhof(リージョナル駅)まで移動しましょう。Sバーンで中央駅に向かうわよ」


「え、てっきりハンツさんが迎えに来てくれるとか、そういう……」


「莫迦ね♡ 初めからそれじゃ、甘えすぎって思われちゃうでしょ?」


——というわけで、二人は空港地下の駅へ向かい、S8に乗り込んだ。電車は清潔で静か。けれど通勤時間帯に重なっていたのか、スーツ姿のビジネスマンが多く、座席はすぐに埋まった。


立ったまま揺られる翔太は、吊り革に掴まりながら涼子をチラ見する。


「……それにしても、先輩ってドイツ語読めるんですか?」


「まあね♡ 政子ママがドイツに住みだしてから、いちおう旅行者レベルのドイツ語は勉強してきたの。それに——言葉って、気持ちとホルモンで通じるのよ♡」


(いや、その理論、会社じゃ完全に通用してたけど……ドイツで通じるのか……?)


・フランクフルト中央駅(Hauptbahnhof)に到着した二人は、スーツケースを転がしながら徒歩でビジネス街へ。


真っ直ぐ伸びる石畳の歩道の先に、ガラスと金属が煌めくタウヌスタワー(Taunusturm)がそびえていた。


「……あれが、ライン・ヴェルト・アセット (Rhein Welt Asset)の本社?」


「ええ。政子ママからのメールに、“27階にいらっしゃい”って書いてあったわ」


「うわあ……。いよいよ、本当に会社買収するんですね、僕ら……」


翔太の声が少し震えていた。


けれどその手を、涼子が静かに握りしめる。


「大丈夫。ぜったい、うまくいくわ♡」


ふたりの足音が、タウヌスタワーの自動ドアへと続いていった——。


===================

【27階の再会、そしてドイツの恐ろしさ】


エレベーターのドアが開いた瞬間、翔太は思わず息をのんだ。


そこはまるで未来の世界のようだった。透明感のあるガラスと白を基調にしたロビーに、欧州アートが静かに彩りを添えている。そして正面奥には——「Rhein Welt Asset」の金文字が、天井から吊るされたガラスパネルに浮かび上がっていた。


「はーい!オツカレ〜カレ〜ライス!」


突如飛び出してきたのは、黒縁メガネに真っ赤な蝶ネクタイ、そして見事な禿げっぷりのハンツだった。


「リョーコたん!元気マンテン?アンダーコントロール〜?そして、ショータも久しぶりネ!」


「……ハンツさん、3か月ぶりくらいです。テーゲルンゼー(Tegernsee)で会いましたよね」


「オッケーオッケー、ショータ!オボエテル、リョーコラブラブ、リョーコハショタコンw」


(うわぁ……すごいテンション……っていうか先輩にショタコンって……ちょっと嬉しい♡)


涼子は少しだけ眉をしかめたが、ハンツの懐かしいエネルギーに苦笑していた。


「うふふ♡元気そうねハンツ。政子ママからは聞いてるでしょ?私たち、会社を買うのよ」


「モチノロン!ぜんぶヨチズミ!このヨノナカ、イチバンヤバイのは、恋と予知ネー!政子ノイウトオリニスレバ株アガリマクリお金ガッポガッポ」


翔太は、あまりの勢いに何も言えず頷くばかりだった。



応接室に通された二人。27階の窓からは、マイン川とフランクフルトの金融街が一望できた。


「ハンツさん、……あの、今日は本当によろしくお願いします」


翔太がぺこりと頭を下げる。緊張からか、声が少し裏返っていた。


「もちろんデスヨ。だって、この計画、ほとんど終わってますからネ♡」


「えっ……?」


驚いた翔太の横で、涼子のスマートフォンの呼び出し音が鳴る。


——その画面に現れたのは、ドイツのテーゲルンゼー(Tegernsee)の自宅にいる政子の姿だった。


「……政子ママ!?」

その瞬間、涼子はハンツの言葉の真意を察した。


「ふふ、こんにちは翔太くん。相変わらず可愛いわね。……陽光商事株の取得、そして桜井社長を追い詰める筋書き——全部予知済みよ。ハンツには、3か月前から準備をさせていたの」


「えっ、じゃあTOBって……」


「演出よ♡形式上は“今から始めます”っていうけれど、実際にはもう——」


ハンツが指を立てる。


「35パーセント、もう保有済みデス♡」


「うそ……」翔太が呆然と呟いた。


「じゃあ残りの15%は私と翔太くんの交渉能力が鍵になるわね♡」

涼子が意味深に微笑むと、ハンツはおどけたように身を引いた。


「リョーコニNein(NO)イエル株主、イヤ人間ハイナイネイン(Nein)!」


翔太は、戦慄にも似た感情で涼子と政子を見つめながら、思った。


——僕、この人たちに絶対逆らっちゃいけない。


「でも翔太くん、あなたの出番はここからよ」

政子が言った。

「社長になる準備、心の準備はできてる?」


翔太は、ごくりと唾を飲んだ。


「……涼子先輩がいれば、たぶん大丈夫です」


涼子は誇らしげに翔太の肩に手を置き、ふんわりと微笑んだ。


「よく言ったわ、翔太くん♡……じゃあ、東京に戻りましょう。舞台はもう、整っているわ」


「ドイツの恐ろしさ、思い知らせるヨ!」ハンツの言葉が、涼子と翔太の背中を強く押した。


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