第6章-EP15 翔太 the supernatural(パート2)
【秋葉原、文化衝突の巻】
翔太、涼子、美紀の三人は、クライアント訪問を終え、秋葉原の駅へ向かって歩いていた。
「今日のプレゼン、美紀ちゃんバッチリでしたね。クライアントの反応も良かったですよ」
翔太はスマホで地図を確認しながら、先頭を歩く。
「うわぁ〜、秋葉原って初めて来たんですわ!
大阪にも日本橋って電気街あるけど、ここは規模がちゃうなぁ〜。外人さんもいっぱいやし!」
「私もあんまり来ないけど……女の子たち、すごく可愛い格好してるわね」
「コンカフェの女の子たちですわ。コンセプトカフェって言って、メイドカフェ、執事喫茶、王子喫茶……いろいろあるんやで!」
涼子と美紀はオタク文化談義で盛り上がりながら、ゆっくりと翔太の後を追っていた。
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【ご主人様と呼ばれる男】
その時——
「あっ!ご主人様だぁ♡ 今日はお屋敷に帰ってきていただけないんですか〜?」
突然、コンカフェの呼び込みの女の子が、翔太に声をかけてきた。
「……ご主人様?」
涼子の笑顔が、ピキピキと音を立ててひきつる。
「涼子課長、あれはコンカフェの定番の呼び込みなんですわ。
翔太先輩、やっぱりかっこええから目立っちゃうんやろなぁ〜!」
「……うふふ。“妻”がいるのにね♡」
(顔は笑っているが、目は一切笑っていない)
「いや、今日は仕事中なんで……」
翔太は慌てて断ろうとしたが、女の子は引かない。
「え〜ご主人様冷たいっ!今日は私のバースデーイベントなんだよ〜♡
ご奉仕いっぱいしちゃうんだからぁ〜♡」
そう言って、翔太に抱きつく。
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「美紀ちゃん、あれもコンカフェでは普通なのかしら?」
「いや、あれはやりすぎやわ!ウチらいるのに、めっちゃけったくそ悪いで!」
涼子は一瞬だけ目を伏せ——
すっと、指を動かした。
次の瞬間——
コンカフェの女の子の体がピタリと硬直し、
つま先が地面から数センチ浮き上がる。
そして、無言のまま、翔太からゆっくり後退していった。
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【伝説級の女】
「……テ、テレキネシスや!!
翔太先輩の……テレキネシスが暴走しとる!!」
「翔太くんが……あんなことを!?
美紀ちゃん、私、どうしたらいいの!?」
「こ、これはやばい、なんとか翔太先輩の気ぃそらすしか……!」
パニックに陥る美紀。
その時——
「翔太くんの気をそらせばいいのね♡」
そう言って、涼子はツカツカと翔太に近づき——
おもむろに翔太のネクタイを掴み、顔を引き寄せた。
そして、大胆にキス。
翔太の顔は真っ赤になり、動けなくなる。
同時に、コンカフェの女の子は硬直が解け、ぺたんと地面に座り込んだ。
涼子はそっと翔太の耳元に囁く。
「お仕置き決定ね♡」
ギュッと腕を絡め、逃さない。
「ひぃぃぃっ……」
翔太、瀕死。
「美紀ちゃん、次の打ち合わせに遅れちゃうわ。急ぎましょ♡」
にっこり微笑んで、涼子は翔太を引きずるように歩き出した。
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【見てはいけないものを見た美紀】
美紀は、その一部始終を見て——
真っ赤な顔になって呆然。
(涼子課長……めちゃくちゃかっこええ。
暴走する主人公をキスで止めるなんて……しかもネクタイキス……これ……両方ともラノベの王道やん。伝説級って、こういうことやったんやな……
でも……もうアカン……ウチみたいな喪女には刺激が強すぎるわ……)
美紀はその場に立ち尽くし、
ラノベ脳をフル回転させながら涼子を見送った——。
つづく!