表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女の○○がヤバすぎたので全部お任せしました  作者: バンディット
第2章 支配からの逃亡そして元の鞘
6/79

第2章-EP01 涼子の恋敵、新人・結城あかりの登場

【涼子と翔太が付き合いだしてから数か月後——】


会社に、新しい社員が入ってきた。


「今日からお世話になります! 結城あかりです!」

挿絵(By みてみん)

明るくハキハキとした声。肩につくくらいの茶色い髪に、ぱっちりした目。どこか人懐っこい雰囲気を持つ女の子だった。


(……なんだろう、この子)


涼子は直感的に警戒した。

あかりの目はまっすぐで、どこか鋭い。普通の人間なら絶対に気づかないはずの「何か」を感じ取っているようだった。


——案の定、彼女はすぐに翔太に興味を持った。


「翔太先輩、よろしくお願いします!」

「え? う、うん、よろしく……」

「先輩って、ちょっと不思議な雰囲気ですね~。優しいけど、なんかこう……」

「な、なんか?」

「操られてるっていうか?」

「!!!」


その言葉を聞いて、涼子の背筋がピンと張る。


(……この子、何か気づいてる?)


翔太はぎくりと肩を震わせた。


「え、えっと、別にそんなことないよ?」

「あやしいなぁ~。でも……」


あかりは翔太をじっと見つめる。


「先輩って、好きな人のことをめちゃくちゃ大事にしてる感じするけど、なんか"違和感"があるんですよね……」


その瞬間、涼子はにっこりと微笑んだ。


「ふふ、それって素敵なことじゃない?」

「あっ、涼子先輩!」

「翔太くんは優しいから、私のことをすごく大切にしてくれるの。ね?」


翔太は頷くしかなかった。


(やばい……涼子先輩、笑ってるけど、これ絶対やばいやつだ……!)


しかし、あかりはその空気を読まず、ぐいぐいと翔太に詰め寄る。


「ねぇ翔太先輩、本当に大丈夫? なんか……違和感ない?」

「え? いや、別に……」

「涼子さんに……支配されてるとか?」


——その瞬間、空気が張り詰めた。


(ヤバい、ヤバいヤバい!)


翔太は焦った。涼子の笑顔はそのままだが、確実に「何か」をしようとしている。


(止めなきゃ! あかりがこのままだと……!)


「……、涼子先輩」


翔太は意を決して、彼女の手を取った。

涼子が驚いたように目を瞬かせる。


「俺さ、なんか最近すごく変わったなって思うんだ」

「……うん?」

「最初は……ちょっと怖いなって思ったんだよ、涼子先輩のこと」

「……」

「でもさ、俺、本気で涼子先輩のことが好きなんだって気づいた」


涼子の目が少し揺れる。


「涼子先輩が俺を支配してるんじゃなくて……俺が涼子先輩のことを好きすぎて、勝手に支配されにいってるんだよ、多分」

「……ふふっ」


涼子が小さく笑った。


「バカね、翔太くん」


そう言いながらも、彼女の目はどこか潤んでいる。


しかし——


「……それ、本気で言ってます?」


あかりがまっすぐ翔太を見つめた。


「"支配されることが心地いい"って、変じゃないですか?」

「え……?」


翔太は一瞬言葉に詰まった。


(変……なのか? でも……)


確かに、最初は怖かった。

けど、涼子のそばにいると安心する。

考えなくてもいい。何もかも、彼女が導いてくれる。

そして、涼子の声を聞くだけで、幸せな気持ちになる。


(……これって、本当におかしいのかな?)


翔太はちらりと涼子を見た。

彼女は、ただ優しく微笑んでいる。


——その笑顔を見て、翔太は確信した。


(いや、違う。これが、俺にとっての"幸せ"なんだ)


「だから、あかり。心配してくれてありがとう。でも、俺は……このままでいいんだ」


翔太の言葉に、あかりはぽかんとした顔をして、そして——


「……そっかぁ! まぁ、先輩がいいならいっか!」


あっさりと納得した。


「……え?」


涼子も翔太も、ちょっと拍子抜けする。


「いや、なんかこう……ちゃんと自分の意志で好きなら、それでいいかなって!」

「……あ、ありがとう?」


あかりは笑っていた。


(……この子、もしかして結構すごい?)


涼子はふっと肩の力を抜き、翔太の手をぎゅっと握った。


「私も……翔太くんが好きよ」


翔太はどきりとする。

涼子が心からの「好き」を口にするのは、実は初めてだった。

彼女の支配から解放されても、翔太は結局、涼子を選ぶ。


(……もう、何も心配いらない)


涼子はそっと翔太に寄り添った。

翔太は、逃げる理由がなくなったことを、実感していた——。


===================

【翌日、会社のオフィス。】


翔太はまだ昨日のことを引きずっていた。


(あかり……本当にあれで納得したのか?)


彼女はあっさりと「先輩がいいならいいか!」と言っていたが、どうも腑に落ちない。

そんなことを考えていた矢先——


「おっはよ~翔太先輩!」


突如、あかりが背後から抱きついてきた。


「うわっ!?」


翔太は驚いて前のめりになりかける。


「あはは、びっくりしました?」

「いや、なにしてんの!? 会社だぞ!?」

「いや~、先輩がちょっと疲れてるかな~って思って、リラックスしてもらおうかと!」


そう言いながら、彼女はぴったりと翔太に密着する。


(近い! ていうか、柔らかい!!)


翔太の動揺をよそに、あかりは無邪気に微笑んだ。


「先輩って、意外と体格いいですよね~」

「ちょ、やめ……!」

「こうやってると、なんか安心しちゃうなぁ」


翔太は焦りながらも、あかりの腕を振りほどこうとする。しかし、そのとき——

ギギギギギ……!!!

机の上のペン立てが、ひとりでに揺れ始めた。


(や、やばい……!)


背後を振り返ると、そこには涼子が静かに立っていた。

にっこりと微笑んでいる——が、その目はまったく笑っていない。


「翔太くん……?」


涼子の声が甘く響く。


「え、あ、涼子先輩?……」

「楽しそうね?」


ギュンッ——!!

突然、あかりの体がふわっと浮き上がった。


「う、わっ!? え、なにこれ!?」


彼女の体は見えない力に持ち上げられ、ふわふわと宙に浮く。

翔太は背筋が凍った。


「ちょ、ちょっと涼子!?」

「結城さん? あんまり私の大事な翔太くんにベタベタするのは……よくないと思うの」


涼子が片手をスッと動かすと、あかりの体もそれに合わせてふらふらと動く。


「え、え、なにこれ!? 魔法!? いやいや、マジで何!?」

「ふふ、魔法よ?」

「ひぇぇっ……!!」


あかりの顔が青ざめる。

その様子を見て、涼子は優雅に微笑んだ。


「もう二度と、翔太くんに余計なことをしないって誓える?」

「わ、わかりましたっ!! やめてくださいっ!!」

「よろしい♪」


涼子が手を下ろすと、あかりの体もゆっくりと地面に降りる。

その瞬間、あかりはバッと翔太から離れた。


「ひ、ひどい……!」

「あら、何のことかしら?」

「……!!」


あかりは何かを言いかけたが、すぐに口をつぐんで、悔しそうに唇を噛んだ。


(……完全に涼子には敵わないって理解したな)


翔太はそんな彼女を見て、なんとも言えない気持ちになる。

あかりは振り返りもせず、その場を去っていった。


——そして、翔太は涼子の方を見た。


「……あのさ、涼子先輩」

「なぁに?」

「ちょっとやりすぎじゃない?」

「ふふ……そうかしら?」


涼子はにっこりと微笑んだまま、翔太のネクタイをスッと引っ張る。


「じゃあ、お仕置きね?」

「えっ!? なんで!?」

「翔太くんが他の女の子に優しくしてたから」

「えええええ!? 俺なにもしてないだろ!?」

「でも、彼女があなたにくっついたのは事実よね?」

「ぐっ……」


翔太は何も言い返せない。

涼子の目が甘く、しかし確実に支配的な光を宿している。


「……覚悟はできてるわね?」


「ま、待って待って待って……!」

——その日、翔太は涼子からたっぷりと甘く支配されたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ