第6章-EP08 涼子と翔太の高校生物語(パート2)
【涼子、授業をバックレて翔太を探す】
「まあ、私大人だし、授業バックレても大丈夫よね♪」
——いやいや、大丈夫なわけない。
でも、そんなことどうでもよかった。
今、涼子の頭の中にあるのはただひとつ。
翔太くんを見つけること!
授業中の静まり返った廊下を、先生に見つからないよう慎重に歩く。
(あー、久しぶりのこの感じ。なんか懐かしいわ…)
高校時代、こんなふうに授業を抜け出したことはなかった。
でも、今回は特別。
1年1組の教室をそっと覗く——いない。
2組も、3組も…(あれ、いない!?)
「え、まさか…転校してるとか?」
と、不安になりかけたその時。
ついに見つけた。
1年6組の教室、一番後ろの窓際。
ぼーっと窓の外を眺めている翔太。
(はぁ~~~~っ、可愛い……!!!)
ただ座っているだけなのに、その姿がたまらなく愛おしい。
(でも授業ちゃんと聞かなきゃダメだぞ! いや、それにしても可愛い……!)
このままずっと眺めていたかったけど、さすがにバレるとマズイ。
仕方なく、涼子はいったん自分の教室へ戻り、
「ちょっと保健室行ってましたー」と適当に言い訳しながら席に着いた。
しかし、授業なんて頭に入るはずがない。
(どうやって翔太くんを落とすか考えなきゃ!)
超能力は未熟だから、無理やり翔太をさらうことはできない。
でも、この高校生の姿のまま、自然に翔太を落とす方法を考える必要がある。
「よし、もう一度翔太くんと二人きりになって話してみよう!」
涼子の中で、作戦が決まった。
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【Mission: 消しゴムで翔太を誘導せよ!】
休み時間。
「涼子さん、僕と付き合ってください!」
「いや、私急いでるんでごめんね♡」
涼子は、自分に群がる男子生徒を一蹴し、真っ直ぐ翔太の教室へ向かった。
1年6組に入ると——
「……」
そこには、やっぱり窓の外を眺める翔太。
そして、彼の周りには2、3人の女子生徒。
「ねえ翔太くん、部活なにしてるの?」
「週末って暇?」
「ねえねえ、LINE交換しよ?」
わちゃわちゃと彼に絡んでいる。
(……は?)
涼子の中で、何かが弾けた。
(はぁ~~~ん!? ちょっと待って、この子たち、私の翔太くんになに絡んでんの!?)
大人の自分なら即座にテレキネシスで翔太を誘拐していた。
だが、高校生の今はそうもいかない。
(冷静に…私は大人。私は大人。大人なら、もっとスマートに行くのよ……!)
ふと翔太の机に置かれた消しゴムが目に入る。
(これだ!)
涼子はそっと指を動かし、微弱なテレキネシスを発動。
ス…ッ
「……?」
翔太の消しゴムが、机の上をゆっくりと動き始めた。
「えっ…?」翔太が気づく。
(よしよし…そのまま気づけ!)
消しゴムは、じわじわと机の端を通り、廊下の方へ。
「…なんだこれ?」翔太が小声でつぶやく。
興味を引かれたのか、翔太はそっと立ち上がり、消しゴムの動く方向を追いながら教室のドアへ向かう。
(きた!)
ドアの向こうで待っていた涼子は、翔太が出てきた瞬間、
彼の手をギュッと掴み——
「来て、翔太くん!」
翔太をそのまま引っ張り、誰もいない屋上へと駆け上がる——!