第3章-EP13 翔太、最後の自由…?バチェラーパーティーの夜
【結婚式を目前に控えたある日。】
翔太は大学時代の友人たちに「バチェラーパーティー」を開いてもらうことになった。
結婚前最後の独身気分を楽しむ宴、それがバチェラーパーティー。
「翔太、せっかくだしキャバクラ行こうぜ!!」
「そうそう、もうすぐ結婚したらこんなの来れなくなるんだしさ!」
翔太は一瞬、涼子の顔が脳裏をよぎる。
(……涼子先輩、これ許してくれるかな? でもバチェラーパーティーだし、ちょっとくらい……いいよな?)
そう自分に言い聞かせ、翔太は友人たちとキャバクラへ向かった。
【キャバクラでのひととき】
「翔太くん、結婚するんだって?」
「うわぁ、おめでとう! でも奥さんがいると遊べなくなっちゃうね~?」
可愛い女の子たちに囲まれ、翔太は楽しくお酒を飲みながら談笑した。
涼子のことはもちろん大好きだが、たまにはこういうのもいいかもしれない……なんて思いながら。
(うんうん、これはあくまで“バチェラーパーティー”だし!)
……しかし、翔太は知らなかった。
涼子が、すべてを把握していることを……。
【新妻涼子の呪い】
帰宅後、待っていたのは……
深夜。
友人たちと別れ、ほろ酔いで家に帰る翔太。
鍵を開けると、リビングで腕を組んで待っている涼子の姿があった。
──その笑顔が、逆に怖い。
「……おかえり、翔太くん♡ 楽しかった?」
「えっ、えーっと……その……?」
涼子はニコニコと微笑んでいるが、まるで何かを仕掛ける直前の魔女のような雰囲気を醸し出している。
(やばい……これは絶対に怒ってる……。)
「ふぅん……翔太くん、バチェラーパーティーだからって女の子と楽しんじゃったんだって?」
「えっ、なんで知って──」
「ぜーんぶ、見てたから♡」
ぞくりと背筋が凍る。
翔太は酔いが一気に覚めた。
「えっ、えっと……そ、それはほら! 友達に付き合っただけで! 特に何も……」
「うんうん、いいのいいの! バチェラーパーティーだもんね♡」
「……えっ?」
「でもね、翔太くん?」
ニコッ♡
「“バチェラーパーティーだから”って浮かれちゃった翔太くんには、ちょっとだけお仕置きしないとね♡」
そう言うと、涼子はすっと手をかざした。
──バチンッ!!!
電気が弾けるような感覚が翔太の体を駆け巡る。
「……えっ!? 何したの!?」
「ふふっ♡ "涼子が見えないと泣いちゃう呪い"を24時間かけたの♡」
「えっ!? ちょ、ちょっと待って……?」
「ふふ、試しに私が隠れてみようか?」
そう言うと、涼子はスッと別の部屋へ。
その瞬間──
ズキンッ!!!
「あっ……!? うっ、うぅ……!!」
突然、翔太の胸が締め付けられるような痛みに襲われる。
そして、目の奥からじわじわと涙がこみ上げてくる。
「や、やばい……っ! なんか、すごく寂しい……!!」
バンッ!!!
慌てて涼子のいる部屋へ駆け込む翔太。
「涼子先輩っ!!!(泣)」
「うんうん♡ いい子ね~翔太くん♡」
翔太は涼子を見つけた瞬間、勝手に涙が止まる。
(なんだこれ!? 涼子先輩がいなくなると、すごく悲しくなって……目の前に戻ると安心する!?)
「翔太くん♡ これがね、"涼子の姿が見えないと泣いちゃう呪い" なの♡」
「や、やめてよこれ!! こんなの耐えられないよ!!!」
「ふふっ♡ じゃあ、これから24時間、私のそばを絶対に離れないこと♡」
(……詰んだ。)
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【呪い発動の24時間】
翌日。
当然、翔太は涼子にべったりになる羽目に。
・朝の準備 → 洗面所で涼子が少しでも見えなくなると泣きそうになるので、ずっと近くにいる
・通勤 → 満員電車で涼子が少し離れるだけで涙目になるので、ずっと隣で腕を組む
・会社 → デスクが違うのに涼子の姿を追い続ける翔太(怪しい)
・トイレ → 涼子が見えなくなるので、入る前に精神統一(でも結局ちょっと泣きそうになる)
そして、昼休み──
「あれ? 翔太くん、どうしたの?」
桜井さんが声をかけてきた。
「えっ、いや……その……」
「なんか……涼子先輩をめちゃくちゃ目で追ってるけど……?」
(やばい!!)
必死に誤魔化そうとするが、涼子は楽しそうに微笑むだけだった。
【呪い解除後のご褒美(?)】
24時間後、ようやく呪いが解ける時間がやってきた。
「翔太くん、お仕置き終了~♡ もう泣かないで平気だよ♡」
「……やっと……解放された……。(ぐったり)」
「でもね? これだけじゃ終わらないよ?」
「えっ?」
涼子はにっこりと微笑み、翔太をソファに座らせると、
そのまま後ろからぎゅ~~っと抱きしめた。
「よしよし♡ バチェラーパーティーで浮かれた翔太くんには、涼子の“最大の甘えんぼタイム”をプレゼント♡」
「えっ、あの、えっ?」
「ほら♡ 翔太くんは甘えん坊モード♡」
結婚前最後のバチェラーパーティー。
翔太は結局、涼子に甘やかされる運命だった……。