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第3章-EP11 ホワイトデー翔太のお返し

【翔太、決意のホワイトデー作戦】


3月某日——。


「バレンタインデーは、期待していてね♡」という甘い言葉とともに、地獄のチョコ断ち&“チョコレートスペシャルの呪い”を浴びせられた翔太は、ある意味悟りを開いていた。


(……もう、涼子先輩には敵わない……でも……)


——だからこそ、お返しはちゃんとしたい。


「バレンタインデーにあれだけの愛情をもらったんだから、俺も全力で応えたい……!」


翔太は決意した。


「似顔絵を描こう——涼子先輩の、世界でいちばん好きな顔を」


絵なんてまともに描いたことがなかったが、ホワイトデー当日まであと10日。毎晩こっそり練習を始める翔太。


(絶対、バレちゃいけない……!)


【涼子を見つめる翔太】


(まずは涼子先輩の観察だ……)


翔太はそれからしばらく毎日涼子を見つめ続けた。


「じーっ……」

「あら、翔太くんどうしたの?」

「涼子先輩の笑顔をいつも考えていられるように目に焼き付けているんですよー」

「かわいいこと言うじゃないの♡じゃあもっと近くで見た方がいいんじゃない?」


といってギューと翔太を抱きしめる涼子。


(うーん近すぎて良く見えないw)


【感知:翔太くん、なにか企んでる?】


翔太が涼子の観察を終え、創作活動を秘密裏に開始してから数日後。


「……ん?」


リビングでくつろぎながら紅茶を飲んでいた涼子は、ふと表情を曇らせた。


(翔太くん……なにか“たくらんでる感情”がある)


彼女のホルモン感知センサーが、翔太の“ワクワクと焦りが入り混じった感情”をキャッチしたのだ。


(でも、恋愛ホルモン系じゃない……女じゃないわね)

「なにかしら……? まあ、今は様子を見ましょ♡」


微笑む涼子だったが——


——日が経つにつれて、翔太の“企み感情”はどんどん強まっていく。


【ホワイトデー前日】


——実際の翔太の思考


「やばい、”明日”が”期限”だ!”超焦る”…自分の下手くそな絵で”涼子先輩”喜んでくれるかな…どうしよう、もう”逃げ出したい”(>_<)!」


——涼子のプロファイリング


翔太の感情は”秘密の企み”のほかに”期限”、”焦燥”、”涼子の顔”そして”逃亡”がとても鮮明に感じられるようになる。


「……ひょっとして……翔太くん、明日私から逃げようとして焦ってる?(※大誤解)そんなの絶対許さない!」


涼子も焦り始めた。


——そして、ホワイトデーがやってくる。


===================

【ホワイトデー当日:追い詰められる翔太】


「……ただいま戻りました〜」


部屋のドアを開けた瞬間、翔太は感じた。


(……空気が、重い……!?)


リビングの照明は薄暗く、キャンドルのような明かりがぽつんと灯っている。


「おかえりなさい、翔太くん♡」


ソファに座る涼子の声が、甘く、しかしどこか“音程がズレたピアノ”のような違和感を持って響く。


(やばい、絶対なにか察知してるやつだこれ……!!)

「……な、なんか部屋の雰囲気違いますね……あの、夕飯とか、まだかな〜なんて……」

「うふふ、翔太くん。最近ね、ずっと私に“何か”隠してるでしょ?」


涼子がゆっくり立ち上がる。


「い、いやいやいやいや、そんなことないですって! 僕は無実ですっ!」

「ねえ翔太くん、私のこと裏切ろうとしてるの……?まさか……“逃げよう”としてるんじゃないわよね?」


涼子はいつもの微笑みだが目はまったく笑っていない。


(ええー!、なんのことでしょう……!?)


——ゴゴゴゴゴ……


突然、翔太の足元がフワリと浮き上がる。


「うわっ!? ま、またこれぇぇ!!」

「ふふっ、覚悟して♡今日は“本気モード”だからね?」


涼子は、指先をクルクル回しながら翔太の体を空中で少しずつ後退させ、壁際まで追い詰めていく。

挿絵(By みてみん)

「ねえ翔太くん……いったい何を企んでるのかな~♪、言いたくな〜る、しゃべりた〜くな〜る、“真実を告白しちゃう呪い”、かけてあげようか?♡」

「や、やめてぇぇぇ!! 今日だけは!! 今日だけはまだダメなんですぅぅ!!」

「じゃあ、翔太くんのポケット、ちょっと見てもいい?」


涼子がにっこり笑って、テレキネシスで翔太のジャケットの内ポケットにそっと指を伸ばすような動きを見せる。


(終わった……)


そのとき——


ポトッ


翔太の胸ポケットから、一枚の紙が床に舞い落ちる。

涼子はそれを拾い、ゆっくりと開いた。

——そこには、不器用ながらも丁寧に描かれた、自分の似顔絵があった。


「……これは……」


翔太は真っ赤な顔でポツリとつぶやいた。


「ホワイトデー……おめでとう、涼子先輩……」


——静寂。


しばらくの沈黙のあと。

涼子の目に大粒の涙があふれた。


「うぇ〜ん、嬉しいよ〜(/ _ ; )」


※涼子はサプライズに全く免疫がなかった。


「もう……こんな……不意打ちずるい……♡」


涼子は絵を胸に抱え、ぽろぽろと涙をこぼす。


「翔太くん…嬉しすぎて……私が三日間、翔太君から絶対離れない呪いになっちゃうよ……♡」


と言ってガッチリとすごい力で翔太にしがみつく涼子。


【エピローグ】


翌日から、本当に涼子は翔太の腕にしがみついたまま出社するようになり、営業部では新たな社内七不思議が追加されたという。


> 「最近の高橋先輩……ずっと翔太くんに張りついてるんだけど……」

「まさか、ホワイトデーにプロポーズでもされたのか!?」

「いや、なんか……似顔絵らしいよ?」

>


——でも、真相を知るのはふたりだけ。

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