第3章-EP09 宴会芸で涼子魔女降臨!
【年末が近づくある日、翔太の会社で恒例の忘年会が開かれることになった。】
会場はホテルの広間。社員たちはお酒を飲みながら談笑し、盛り上がっている。
そんな中——。
「さぁ、それではお待ちかねの宴会芸タイムに入りましょう!」
司会の声が響くと、社員たちが拍手を送る。
芸達者な社員たちが次々と一発芸を披露する中、誰かが言った。
「涼子先輩も何かやってくださいよ!」
「えっ、私?」
涼子が首をかしげると、周りからも「見たい!」「なんか面白いのやって!」と声が上がる。
「じゃあ……ちょっとだけね♪」
涼子はにっこりと微笑むと、すっと指を鳴らした。
——パァン!
次の瞬間、会場の照明が一瞬落ちる。
そして、薄暗い中に現れたのは——
黒いローブをまとい、魔女のコスプレでとんがり帽子をかぶった涼子。
「さぁ……宴会芸の時間よ♡」
——魔女降臨。
「おおおお!! すげぇ!」
「いつの間に着替えたんですか!?」
社員たちが驚く中、涼子はゆっくり手を掲げる。
「では……みんなの目の前で魔法をお見せしましょう♪」
ローブの袖から取り出したのは一本のスプーン。
「このスプーン……私の魔法で曲げてみせるわ♡」
そう言うと、涼子はスプーンを持つ手をゆっくりとかざし——
グニャリ。
「ええええ!? 曲がった!?」
「マジで!? いや、どうなってるのこれ!?」
社員たちが騒然とする。
しかし、涼子の"魔法"はこれだけではなかった。
「次は……このグラスを浮かせてみせましょう♡」
テーブルの上に置かれたワイングラスが——
スッ……!
宙に浮いた。
「は!? え!? えええ!?」
「嘘でしょ!? これ、仕掛けなし!?」
社員たちは驚愕し、スマホを取り出して撮影しようとするが——
「ダメよ?」
涼子が微笑むと、なぜかスマホがスッと下がる。
(ちょっ……今、俺ら何で撮るのやめた!?)
社員たちは理由もわからず涼子の"魔法"に従ってしまう。
「さて……もう一つ、お楽しみを♡」
涼子は軽く振り向くと翔太と目を合わす、
すると突然、翔太の心臓がドキリと跳ね上がり顔が赤くなる。
どうしても涼子の目から視線をそらすことができない……
涼子が翔太を見つめたままゆっくりと翔太を指差す。
「翔太くん、こっちに来て♡」
「えっ、俺!?」
戸惑う翔太だったが、涼子の視線と言葉に逆らえず、ふらふらと歩み寄る。
涼子はニッコリ微笑みながら言った。
「翔太くん、私にキスしたくなぁる……♡」
「えっ!? いや、ちょ、待っ——」
次の瞬間——
翔太は涼子がたまらなく愛しく、キスをしたくて我慢ができなくなった。
そして翔太の体が勝手に動き、涼子の頬にチュッ♡
次の瞬間——
翔太の体が勝手に動き、涼子の頬にチュッ♡
「うおおおおおお!!??」
「ええええ!? これ、マジで催眠術とか!?」
「すげぇ……リアルに魔女なんだけど……」
騒然とする会場。
涼子は勝ち誇ったように微笑み、
翔太は顔を真っ赤にして項垂れる。
「魔女の宴会芸は楽しんでいただけたかしら?」
「は、はい……!」
「すげぇ……まじで何者なんだ涼子先輩……」
社員たちは涼子を恐れつつも、魅了されていた。
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【部長の暴走と涼子の鉄槌】
宴会芸で"魔女"として華麗な超能力パフォーマンスを披露した涼子。
その衝撃は会場にいた誰の記憶にも鮮烈に焼きついた——そして、一人の男の心を狂わせた。
部長・山岸(50代・独身)
「涼子くん、君は素晴らしい! いや、実に素晴らしい!」
宴会が終盤に差し掛かった頃、ほろ酔い気分の山岸部長は満面の笑みを浮かべながら涼子に近づいた。
「いや~、君のような才色兼備の女性がまだ独身だなんて……これは会社の損失だよ!」
「……はぁ。」
涼子は適当に微笑みながら軽く流そうとするが、山岸はさらに近づいてきた。
「実はね、私もそろそろ身を固めようと思っていてね……。どうだろう? 君さえよければ、私と結婚を前提にお付き合いしないか?」
その瞬間——
「……は?」
涼子の周囲の温度が一瞬で氷点下になった。
そして、その場でさらに凍りついたのは、翔太だった。
(ちょ……待て待て待て!!!)
翔太は一瞬、自分の耳を疑った。
しかし、目の前の光景は現実であり、山岸部長は本気で涼子を口説いている。
「……すみません、部長。」
涼子は笑顔を浮かべながらやんわりとかわそうとした。
「私、もう心に決めた人がいるので。」
「なに!? そ、そんな……誰だね、その男は!」
すると——
「俺です!!」
翔太、爆誕。
「は? え?」
涼子と部長、そして周囲の社員たちが一斉に翔太を振り向く。
(言っちゃったーーー!!!)
周囲がザワつく中、翔太は真っ赤になりながら言葉を続けた。
「俺、涼子先輩と一緒に暮らしてます! だから……すみませんが、部長には絶対に渡しません!!」
「な、なにぃ……?」
部長の表情が歪む。
「……君は私に歯向かうつもりか?」
部長はグッと翔太の肩を掴み、顔を近づける。
「いいか、私は君の上司だぞ? 私に逆らうということは、会社での立場を危うくするということだ。」
圧倒的パワハラ発言。
しかし、翔太はその脅しに屈しなかった。
「……俺は、涼子先輩が好きなんです!!」
「翔太くん……♡」
涼子がニッコリ微笑んだ。
すると次の瞬間——
「ふんっ、ならば力ずくでも——」
部長が翔太を突き飛ばそうとした——その瞬間。
ゴォンッ!!!
「——うぐっ!?」
山岸部長、吹っ飛ぶ。
「!???」
何が起きたのか、一瞬誰も理解できなかった。
しかし、涼子の指が軽く動いたことを見逃した者はいない。
涼子はにっこりと微笑みながら、山岸部長に向かって言った。
「部長……ちょっとだけ、頭を冷やしましょうか♡」
次の瞬間——
バキバキバキッ!!
部長の体が勝手に動き出し、宴会場の隅に積み上げられた大量のビールケースの中にスポーンッと埋もれる。
「ぶぼぉっ!? な、なんだこれは!? 体が勝手に動くぅぅ!!」
涼子はゆっくりと近づき、優雅に微笑んだ。
「魔女の魔法です♡」
——涼子の"魔法"が炸裂した瞬間だった。
社員一同、ガクブル。
「……やっぱ、涼子先輩って……ガチの魔女なんじゃ……?」
「翔太……お前、よくこの人と暮らせるな……?」
「ていうか、部長……これ明日から会社どうなるんだ……?」
会場には沈黙が広がったが——
翔太はただ、誇らしげに微笑む涼子の横顔を見て、心から思った。
(やっぱり俺……この人から一生離れられないわ。)
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【当然、涼子は抜かりなく後処理をする。】
宴会が終わった後、涼子は翔太の手を引きながら社員たちの記憶を整理する作業に入った。
「うーん……さすがに今のはちょっと派手すぎたかな?」
「いや、完全に派手すぎたでしょ!? だって部長、ビールケースに埋まってたよ!? みんな絶対覚えてるって!!」
翔太が焦る中、涼子は悪戯っぽく微笑む。
「ふふっ、大丈夫♡ じゃあ……ちょっとお掃除しよっか♪」
——涼子はすっと指を動かし、社員たちの脳内ホルモンを操作。
その瞬間——
「ん? ……あれ? なんでこんなに酔っ払ってるんだ?」
「ていうか、部長どこ行った?」
「さっきまで宴会芸やってたのは覚えてるんだけど……魔女? え、誰のこと?」
社員たちは次々と曖昧な表情になり、直後には宴会のことを普通の飲み会の思い出として認識し始めた。
「ふぅ~、これでOK♡」
涼子は満足げに翔太にウィンク。
「さすが涼子先輩……ていうか、いつもこんな風に記憶消してたの?」
「うん♪ 会社で超能力バレちゃまずいもんね♡」
涼子は軽く微笑んだが、翔太はゾッとした。
(つまり、今までの俺の知らないところでも、こうやって涼子は色々なことを処理してきた……!?)
……が、涼子の甘い声がすぐに不安を吹き飛ばす。
「でもね……翔太くんの記憶だけは、絶対に消したりしないよ♡」
涼子はそう言いながら、翔太の腕にギュッとしがみついた。
(……まぁ、いいか。やっぱり俺、涼子先輩が好きだし。)
翔太は苦笑しながら、彼女の肩を抱いた。
——こうして、部長事件は"何もなかったこと"になり、涼子と翔太の関係はさらに深まるのだった。