第7章-EP12 秋晴れの日、明治神宮(最終回)
【永遠の誓い、秋空の下で】
九月の終わり、東京の空は雲ひとつない秋晴れだった。
金木犀がかすかに香り、神宮の森はほんのりと紅葉が始まりかけている。蝉の鳴き声は姿をひそめ、かわりに涼やかな風が境内を吹き抜けていた。
ここは明治神宮。百年を超える歴史を刻む鎮守の杜。
神楽殿へと続く玉砂利の道を、足音が控えめに鳴る。空気はどこか張りつめているようでいて、どこまでも優しかった。
翔太は、社務所に設けられた控え室で両家の家族・親族を迎えていた。
和装姿に身を包んだ彼の顔は、緊張と幸福がない交ぜになったような、何とも言えない表情をしている。
「……皆よく来てくれたね」
柔らかく微笑みながら、翔太は順に顔を合わせていく。
佐々木家からは、父・巌がいつになく背筋を伸ばし、母・静子はハンカチを握りしめて目頭を押さえていた。
姉のYumiはモダンな和服を着こなし、腕を組んだまま「しょうがない弟ね」と言いながらも目元は潤んでいる。
その隣には、夫のMarkと、小さな手を振る甥のRen。Markは終始ニコニコと笑みをたたえ、Renは「パパよりかっこいいね!」と無邪気に言っていた。
「今日は、みんなが集まってくれて、本当にうれしいです」
翔太が深く頭を下げると、その声に応えるように、静かに足音が響いた。
次に現れたのは、黒留袖に身を包んだ政子。そして、その隣に立つのは、落ち着いたスーツ姿のハンツだった。
政子の視線は柔らかく、どこか超然とした雰囲気をたたえている。ハンツは相変わらず変な外人ムーブで物珍しそうにキョロキョロ周りを見渡している。
翔太は二人に一礼しながら、心の奥で思う——
(やっと……ここまで来たんだな)
外では神職たちの準備が整い始め、控え室の障子越しに、雅楽の調べがゆったりと流れ込んできた。
その旋律に導かれるように、翔太は目を閉じた。
これから涼子と結ばれ、二人で新しい世界を生きていく。
どれだけ不思議な日々であっても、どれだけ超常であっても、彼女とならきっと笑って乗り越えられる——。
そんな想いを胸に、翔太はゆっくりと、本日の参加者との会話を楽しむ。
===================
【巌・静子】
静子「先日、陽光商事の桜井さんっていう方がお父さんに謝罪しにきたのよ。『いままでソノカタシロの件ではご迷惑おかけしました。お山の方はこれからも佐々木家で大事に管理してください』とおっしゃって頭を地面に付けて謝ってたわよ。そしていままでご迷惑かけたお詫びに当面の間お山の管理料を出させてくださいって、信じられないくらいのお金を提案してきたのよ」
巌「ワハハ、陽光の人間もなかなかやるな。なんでも最近社長が変わったそうだがそいつが話の分かるやつらしい。ま、みんな俺の人徳がもたらした結果だけどな!」
翔太「ハハ、そうだよね。親父がしっかりお山を守ってきたのを自治会の人や陽光商事の人もわかってくれたんだよ。お金は……もらっておけば?あっても困るもんじゃなし」(涼子が俺が社長になったって話は自然にばれるまで秘密にしておけって……まあそれも涼子らしいかw)
巌「涼子さんがウチに来てくれてからすべてうまくいくようになったな!まったく翔太もいい嫁さんを連れて来たもんだ!今度実家に来た時は俺が涼子さんに”手を使わずにカレーを食べる”超人技を見せてやるって涼子さんに言っておけな!」
静子「お父さんの特技のお箸でカレーを食べる技ね♪自治会でインドの人がびっくりしてたわね”手を使わないんだ”って、お箸でスープカレーなら涼子さんの芸(手を使わずにお茶を飲む)にも匹敵するわよ♡」
翔太「……」
===================
【Yumi,Mark,Ren】
Mark「G’day Shota, that bike P-Chan is a ripper! Love the ventilated disk brake, automatic horizontal gyro sensor, and mate, Shota's shout button is a top-notch feature, haha. I swapped the stuffed pumpkin for a croc head and now I’m riding it. Pretty ace, eh?」
(おい、翔太!あのPちゃんはスゲーな、ベンチレーテッドディスクブレーキ、自動水平ジャイロセンサー、そして翔太の叫びボタンが最高だぜ!俺はカボチャをワニの頭に交換して乗ってるよ。クールだろ、な?)
Yumi「MarkはPちゃんをさらに魔改造して毎日ブドウ畑まで乗ってるのよ。最近はMarkが自転車で走っていると小学生がついてくるんだよ。大人気だよPちゃん」
Ren「ワニおいしいからすきー」
翔太「もはやパンプキンちゃん1号(Pちゃん)じゃなくて、クロコダイル2号になっとる……」
===================
【ハンツ】
ハンツ「ショータ!トウキョウ初めてキタ、トイレ無料デ噴水ツイテル、自販機イッパイ、女の子スカートミジカイネー!ビックリダヨー」
翔太「ハンツさん東京初めてのわりに日本語ペラペラですねー(汗)ライン・ヴェルト・アセットの日本支社があるからてっきり日本の常連ビジターかと思ってました!」
ハンツ「ゼーンブヒトマカセ、ヒトマカセダヨー、ショータ!トコロデ」
――ハンツは突然、翔太の肩に手をまわして声を潜める
ハンツ「ショータ、ハンツ吉原イッテミタイ、アトデアンナイスルネ」
翔太「え!?吉原……それは……涼子が何と言うか……でも吉原か♡……」翔太はちょっとニンマリした
「吉原はダメよ、ハンツ」
そういって政子が割り込む。
ハンツ「ショータ!ダメジャナイカ、吉原ハキケンナトコロトLoney Planetニカイテアッタ。マッタク政子ニトメテモラワナケレバ、アブナカッタヨ」
政子「ハンツ、取り繕ってもダメよ。後でお仕置きね♡」
翔太「(ハンツ先輩……苦労されているんですね……)」と心から同情する
===================
【政子】
政子「翔太さん、本当におめでとう。ついにこの日が迎えられるとは私も感慨深いわ♡」
翔太「政子お義母さん、前から聞きたかったんですがあなたは一体いつから僕のことを知っていたんですか?」
政子「ふふ♡それはね。私が高校生の涼子と再会してしばらくしたとき。京都の平安神宮で私、未来の翔太さんを予知の。私ちゃんとその時挨拶したでしょう『涼子をよろしく』って♡」(※第五章EP08参照)
翔太「え、あの過去に戻るホルモンで涼子さんの過去を見た時?……確かに政子お義母さんに挨拶されましたね……いったい未来予知ってなんなんでしょう。すごく不思議ですね」
政子「未来は、常に書き換え可能なシナリオなの。だからあの時はたくさんある可能性の先の未来の一つに干渉したのよ。そのあとはその未来に向かうように重要なポイントで未来を微調整するの。私と大阪新世界であったことがあったでしょ。あれはその一つ」
翔太「あ、そういえばあの金色の目をした占い師さん?あの人はいったい何者なんでしょう?」(※第六章EP29,EP30参照)
政子「ふふ、それは今日教えてあげる約束だったわね。あの人が実在する人間なのかは私もわからないの。ただ、私が未来に干渉するときに現れる、時の番人みたいなものかしら?大阪の新世界の時は『あなたと涼子の出会い』、東京の花やしきのときは『今日のこの結婚式』」の未来へ向かうポイントだったわけ」
翔太「えっ!時の番人ってあの占い師さんそんなにヤバい人だったんですか!!花やしきの時に涼子が徹底的に”調整”しちゃってましたが……」
――政子は声を落とした
政子「時の番人だって涼子にかかればひとたまりもない……あの子のホルモン操作能力とテレキネシスは使いようによっては国家の軍事力をも凌駕するわ。そして母親の私が言うのもなんなのだけど、本当にヤバいのはあの子の性格なの。涼子はあなたのことになると見境がなくなっちゃうのよ。だから涼子があなたに28歳の時に出会えなかったり、今日の結婚式が迎えられなかった場合の未来を予知とき、私震えたわ。”あんな未来”は絶対あってはならない……」
翔太「え゛っ!?」(なにそれ?その場合、僕は生きているのでしょうか!?)
政子「だから涼子が翔太さんとこうして結婚できて本当に良かったわ。あの子は翔太さんさえいれば大丈夫。あなたが涼子のすべてを受け入れてくれるから♡」
翔太「……ははは、ちょっと心配になっちゃいました(汗)……ひとつ教えてください。結婚した涼子と僕の3年後はどうなっているのでしょう?」
政子「あら?確か前に予知ような覚えがあるのだけど……思い出せないわ。うふふ♡私最近ボケちゃったのかもね♡」
翔太「未来が思い出せないボケって……やっぱり政子お義母さんは僕が大好きな涼子の性格とそっくりですね」
政子「ふふっ涼子の性格が好きだなんて、翔太さんは相当変わってるわね。でも性格が似てるからって私に惚れたらだめよ、涼子に殺されるわ♡……ところで翔太さん、久しぶりに嗅いだけどやっぱりあなたのそのホルモン、たまらない香りね」
――そういって政子は翔太の頬に指先で軽く触れた。その指先から翔太はふわっと心に触られたような感覚を感じた。
――と、次の瞬間、翔太の体は硬直して動かなくなる。そして翔太はふわりと床から数センチ浮遊し直立したまま花嫁の控え室まで涼子のテレキネシスで運ばれる。
政子「せっかく翔太くんとの未来を一緒に運んできてあげたのに、1秒しか触らせてくれないなんて……涼子は本当にケチね。でも今日はあの子の結婚式だし許してあげるわ♡」
===================
【涼子の白無垢姿】
――花嫁の控室のドアが勝手に開く、翔太が空中に浮遊して運ばれるとそこには白無垢に包まれた涼子いた
涼子「政子ママは油断もスキもあったもんじゃないわね。翔太くんは私のものなのよ」
翔太は涼子の白無垢を見た瞬間、言葉を失った。
その装いはただの伝統衣装ではなかった。
真っ白な白無垢に、繊細な刺繍が光を受けてふわりと浮かび上がり、角隠しに包まれた髪元からは、凛とした気品があふれ出していた。
(角隠し……綿帽子じゃないんだ……)
ふと涼子がこちらを見て、にっこりと微笑む。
「ね? 角隠しの方が“私らしい”でしょ♡」
その姿は、どんな女優よりも美しく、どんな神話の姫君よりも神々しく、翔太の胸を一瞬で撃ち抜いた。
涼子「でもね、翔太くーん♡この大事な日に君はいったい何を考えているのかなー♪そんなにハンツと吉原に行きたいんだー。ふーん♪」
翔太「いいえ、滅相もないです。吉原なんか知りませんです。ハンツが行きたいっていっただけで」
涼子「私に嘘は通じないって知ってるわよね。翔太くんのニンマリを感じちゃったもーん。今晩はお仕置き決定ね♡」
翔太「ひぃぃぃぃぃいいいいいい!!」
===================
【明治神宮の参進・神前挙式の儀式をへて】
いよいよ式場の「奉賽殿」へ向かう、厳かな参進の時がやってきた。
神職を先頭に、鈴を鳴らす巫女たちが静かに歩を進める。続くのは、緋色の大きな朱傘に守られた涼子と翔太。その後ろに、両家の家族たちが一列に並び、静かに玉砂利を踏みしめながら境内を進んでいく。
金木犀の香りが漂い、風が木々を揺らすたびに、光と影がゆらゆらと舞う。木漏れ日が涼子の白無垢に差し込むたび、その衣装はまるで光そのものを纏っているかのように輝いた。
角隠しを結い上げた涼子の姿は、凛とした美しさと穏やかな気迫を併せ持ち、その歩みにはどこか神々しさすら宿っていた。
境内に集まる参拝客たちは自然と道を譲り、思わず手を合わせる人もいたほどだった。
そして一同は、静かに奉賽殿へと入っていく。荘厳な雅楽の調べの中、三献の儀(三々九度)が執り行われ、神前での誓いの言葉が奏上される。
——その瞬間、翔太と涼子は、それぞれの家族・親族の前で正式に夫婦として結ばれた。
===================
【新たな結婚の覚悟】
涼子「翔太くんは沖縄の結婚式の時は永遠の愛と服従を誓ってくれたけど、今日は何を誓ってくれるのかな?」
翔太「え、結婚式するたびに誓いが増えるんですか!?」
涼子「うふふ♡当然でしょ。私の愛は重いのよーん♡」
翔太「うーん、これは言葉ではなく覚悟みたいなものなんですが、僕たちマリッジリング作ってなかったじゃないですか。せっかく正式に結婚式したんで作りにいきませんか?」
涼子「え!?なんで私いままで気が付かなかったんだろう、翔太くんに指輪つけ忘れてたなんて……飼い犬に首輪……いやいや、自分の物に名札を付けてなかったのと同じだわ……翔太くん、非常にいい提案よ。これはすぐに対応が必要ね♡」
翔太「あははー(汗)、じゃあ僕はマリッジリングをはめたらずっと外しません。これが覚悟です」
涼子「当然の覚悟だわ。じゃあもし指輪を外したら『私が見えないと泣いちゃう呪い』をかけてあげるね。」
翔太「だ、大丈夫ですよ、そのくらい僕は涼子を愛してますから絶対はずしません!」
涼子「うふふ♡じゃあ指輪を付けてるときは『私に1日3回キスしちゃう呪い』もかけちゃおう♡」
翔太「そ、それってリアルな呪いの指輪じゃないですかー!!!」
===================
【集合写真、そして……】
式が終わり、境内の特設スペースで集合写真の撮影が行われた。
朱塗りの橋を背景に、親族たちが並び、緊張感と安堵の入り混じった空気が漂う。笑顔を浮かべながらも、皆どこか神妙な面持ちで、カメラのレンズを見つめている。
そのカメラを構えていたのは、プロ仕様の機材を手にした和装の女性——どこか見覚えのある横顔。
「……えっ?」と涼子が小さく声を漏らす。翔太も思わず目を丸くする。
「ちょっと、あなた美紀ちゃんじゃない?」
カメラを構えたまま、その女性がにやりと笑う。
「ふふっ、ずいぶん近い異世界もあるもんやな、探しましたよ涼子課長と翔太先輩♡」
そこにいたのは、遠藤美紀。涼子と翔太を見つめてウィンク.
翔太「なんでここに……!」
美紀「 涼子課長にはやられっぱなしやったさかいちょっとした仕返しですわ。お二人のお宅で涼子課長に頼まれて家探しした時『涼子の愛の憲法(※第三章EP12)』見してもらいましたよ。サプライズお好きなんでしょ涼子課長♪」
涼子「うふふ♡さすがは専門家ね、美紀ちゃん♪あなたとは長い付き合いになりそうだわ♡」
おしまい
☆☆☆ 涼子と翔太の物語はこれでお終いです。ここまで読んでくれた人、愛するキャラクター達、長い間ありがとうございました ☆☆☆




