よりによって、蓮と共闘する日が来るとは
(巨屍登場、炸雞消失、遊人炸毛──そして蓮がV字に!?
雷光と鞭が交差する、最悪で最強の教会戦、開幕。)
……言い終えた、その瞬間だった。
俺の──左隣の列が、
パラパラ……ッ!
バタバタッ!
──全!滅!!
白目むいて痙攣する奴、
胃液ぶちまけて倒れる奴、
何ここ、信仰団体じゃなくて毒物実験会場なの!?
そして──
ドォンッッ!!!
演台の手前、床が粉砕された。
破片が跳ねた、その直後──
何かが……いや、何者かが、
地面をぶち破って、飛び出してきた。
──《巨屍》、登場。
(cult風モード:ON)
マッスルスーツを着たコスプレ野郎……かと思ったら、
いや違う。これは──ゲームに出てくる、あの実験体だ!
身長3メートルオーバー、
肩幅、俺の脚よりデカい……ってどんなバランスだよ!
「え、何……舞台装置の間違い?」
ってツッコむ間もなく、動いた。
ヤツは、無言で蓮を──掴み、
ヒザ蹴りッ!!
──ブギィ!!
……見た。見ちまった。
蓮の身体、綺麗に折れた。
見事なV字。
ピンッ!
(え、今の音……卓球!?)
脳が一瞬でクラッシュした。
「ちょ、ちょっと待って!?
今のって……俺が何もしてない間に、
蓮のHPゼロになったってこと!?」
慌てて《禁鞭》を抜いた。
バチィン!
雷光が、ドラゴンみたいに閃いたけど──
……遅かった。
蓮の胴体、まじで貫かれてるし。
完全にV字折り。
(しかも死に様、イケてる人形って……)
「R.I.P──俺、全力は尽くした。」
「蓮……君のことは、忘れない。」
「今日の授業、ひとつだけ学べたよ。」
「──前列には、座るな。」
「先生が名指ししてくる確率、
物理的に真っ二つになる確率と一致する!」
そう言いながら、俺は振り返り──
雷字人の奥義、いざ発動。
──《最強武技:先閃為敬》ッ!!
…要は、先に逃げるってことだッ!!!
「……ん?」
「んん?」
「え、えええええええええええッッ!?」
で、俺が大慌てで玄関に向かって──
全力ダッシュをキメようとした、まさにその時。
「また蓮かよッッ!!?」
お前さ……その顔で、
普通に立ってんの、どういうこと!?
さっきV字クラッシュされてたじゃん!?
思考が、止まった。
「……うわあ!?
ちょ、ちょっと待て!?
お前、幽霊!? ゾンビ!? 転生先行予約組!?」
蓮は眉をピクリと動かし──
「平気だよ。
それより──逃げる気だった?」
「……!」
さらに一言、刺してくる。
「“まだ俺、出してない”って誰かが言ってたよな?」
「“本気出したら仏でもビビる”って──」
──うわ、まじでブーメラン。
俺の台詞、返ってきた。
脳がバグった。
【異常人物検出:二重存在/影分身/AIホログラム疑惑】
【ロジックモジュールを再起動してください】
蓮は、まったく動じず。
むしろ、待ってましたって顔で近づいてくる。
「まさか──あれが俺本体だと思った?」
「……違うの?」
「双子の兄貴とか?」
面倒くさそうに、手をヒラヒラ。
「ただの──《水の幻影》さ。」
「見た目も、声も、
骨折音まで、完璧にコピーできるけど──本体じゃない。」
……目、死んだわ俺。
「幻影で点心ゲットとか、ズルくない!?」
「俺なんて、本体で来たんだよ!?」
冷たく返された。
「来た? で?」
「サボりに来た?
それとも──《空腹で洗脳メッセージ受信》の演技練習?」
……口元、ピクついた。
(あかん、バレた……)
俺は、正直に頭を下げた。
「……すまん。
フリーの唐揚げ目当てで来ました。」
蓮は、でっかいため息をひとつ。
「お前の問題はさ……
禁鞭を持つべきか以前に、
脳ミソを持つべきかどうかだよ。」
「ま、さっき俺の《水の幻影》を救ったのは事実だし。
性根はそこまで悪くない……のかもな。」
(蓮、なぐさめ下手かよ……)
「……でもな、唐揚げは無かった。
俺、それが一番ショックだった。」
蓮がふと辺りを見回しながら、言った。
「“霊守授福会”──で、合ってたっけ?
ここの正式名称。」
「いやいや、“霊守”じゃなくて、“霊喰”じゃね?」
「てか、“授福”って……“腐福”の間違いだろ絶対。」
「……ってことは」
「“霊喰腐福会”……?」
「略して、“ゾンビ堂”。
今なら《霊水》飲んだ人、
もれなくゾンビ化キャンペーン開催中。」
蓮は、すでに表情を引き締めていた。
「外から見ても異常だったよ。
あの水──間違いなく、《霊狩》の血が混じってる。」
「飲んだら最後、死人行きだ。」
「俺は最初、偵察だけのつもりだった。
……でも完全に読み違えたな。」
「まさか一発目で、BOSSが出てくるとはな。」
「今さら応援を呼んでも間に合わん。
なら──俺が出るしかない。」
(……マジかよ)
(完全に、「叫んでも誰も来ない系イベント」じゃん)
蓮は静かに背から《水龍剣》を外した。
「怖いなら、帰れ。
足手まといはいらない。」
その瞬間、背中に電流が走った。
「打ったことはある──ビビったことはねぇ!」
俺も構える。
目の前には、さっき法衣を脱ぎ捨てたばかりの、
──偽牧師。
「俺はティダじゃないからな。
あんたの保育士になる気、さらさら無いから!」
「そっちこそ、ヒメノ家のミニタンクの真似して、
俺の護法役とか期待すんなよな!」
蓮は鼻で笑って、
そのまま右のゾンビ集団へ向かい、剣を突き出した。
「護法? お前にその価値は無ぇ。」
チッ……上等だよ。
「保育士? いらねーっつの!」
俺も左翼のゾンビに向かって、鞭を放つ。




