表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/113

大敵が目前に迫っている

結菜ゆいなのヤツ、また遊人ゆうじんと喧嘩し始めたぞ。

……今だ!

ティーダは、ちらっと思科しこを見た。

(あー、コレはヤバいヤツね……)

ティーダさん、絶対タバコ欲しがってる。

ふたりはこっそりと


________________________________________


「ぷはぁ~~~! 

やっっっと一服できるわぁ~~~!!!」

午後の校舎裏。

柔らかな日差し、穏やかな風。

花壇の端に、ひらひらと落ちる葉っぱ。


ティーダは慣れた手つきでタバコを取り出し、

シュボッと火をつけた。


「一本吸う?」

「あー……いや、俺、禁煙二ヶ月目だから」

思科はポケットからサングラスを取り出し、

ゆっくりと外した。


「……はぁ???」

ティーダの顔が「意味不明」って言ってる。


「ちょっと待って、あんたが禁煙??? 

冗談はコードのバグ修正してから言ってくれる?」


「……いや、実はさ」

思科は照れ臭そうに前髪をかき上げ、目をそらした。


「二ヶ月前、

俺の嫁のむおんがLINEで「妊娠しました」って送ってきて……」


「マジで!?!?!?!?!?!?」

ティーダの目が輝く。


「おめでとー!!

初パパかぁ~~いいなぁ~~~!!! 

フランチ(愛犬)が犬になる前、

ずっと子供欲しがってたんだけどねぇ……」


「まぁな……肩の荷、ズッシリ来てるけどさ。

子供のためにも、禁煙した方がいいかなって」

思科は、ちょっと恥ずかしそうに視線を落とした。


「ハッ……」

ティーダはポンと肩を叩く。


「よっしゃ!! 頑張りなさいよ、思科!!

さっさとこんな騒ぎ終わらせて、

子供と楽しい未来迎えなきゃね!」

「……そうしたいんだけどさ」


________________________________________



思科の表情が、急にシリアスモードに切り替わる。

「今、ちょっとネット情報の遮断で、

国家情報局と連携してるんだけど……まぁ、

いろいろ揉めてて」


「ふ~~ん?」

ティーダはニヤリと笑った。


「……あんたにとっちゃ、簡単な話でしょ? だって、

あの『藍夜無音あいや むおん』の元メンバーだもんねぇ~~~?」


「ぐっ……」


「昔さ~~~、億レベルのレアアイテム盗んだ挙句、

8,787円 で売り飛ばしたとか……マジでイカれてたじゃん?」


「……しかも、そのお金、八十八歳老人安養協会に寄付したし」

思科は、思い出したくもない過去を小声で呟く。


「ギャハハハハ!!! ホントお前、

昔から意味不明なヤツだったよな!!!」

ティーダは腹を抱えて爆笑。


「てかさ、その寄付の順番、

日本語の数字順で決めたんでしょ? 謎すぎる真面目さ!」

「認めたくないものだな……自分自身の、

若さゆえの過ちというやつを……」

思科は遠くの空を見上げ、哀愁のため息をつく。


「最初は、ただのゲーム攻略感覚だったんだけど……

むおんの親父のネットカフェで、

『藍』っていう天才少年に会ってからさ」


「……」

「どんどん深みにハマっちゃって……。

あの頃、俺らマジで無敵だと思ってたよ」


________________________________________


「で?」

ティーダは煙を吐きながら、思科の目をじっと見つめる。

「結局、国防省の侵入作戦で躓いたんだよね?」


「うん、そうなんだよね……」

思科はぼそっと言った後、少し間を置いて、もう一度繰り返した。

「……そうなんだよね……」

あの日……

「……」

思科の指が、無意識にタバコを取り出していた。

「……あ、やべ」

パチンッ

ティーダが、思科の手を軽く弾く。

「禁煙二ヶ月目でしょ?」

「……あー、そうだった」

思科は苦笑し、タバコをポケットに戻す。


________________________________________



ティーダは、怒るでもなく、ただ静かに見守っていた。

「まぁさ」

ふっと、煙を吐く。


「不安な時に吸いたくなるのが、人間ってもんよ」

思科の吐いた煙は、ゆっくりと風に乗って、遠く――

北方之城ほっぽうのしろ』の彼方へと消えていった。


次章:極北の都 ― スパイ対スパイ、

狩のメンバーと情報本部

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでくれてありがとう! Twitterでも活動中 → @kaoru0naka ご感想お待ちしています!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ