鈴木思科 vs. 猫
「……なあ。」
ティダが呆れながら、鈴木思科の方を見やる。
「この猫、ちょっとどうにかしてくれない?」
「……わかった。」
鈴木思科は、メガネをクイッと押し上げる。
「動物の行動パターンは、アルゴリズムさえ解析すれば制御できる。」
「猫の攻撃速度、反応パターン、回避行動……
すべてデータとして記録すれば、攻略は可能なはずだ。」
「フッ……俺に任せろ。」
——完全にフラグだった。
「ニャアアアアアア!!!」
次の瞬間、小さな暴力の化身(結菜)が、音速で飛びかかった!
「なっ——!?」
バシュッ!!
爪が閃き、思科の腕を斬る!
「っっっ!!?」
「くっ……速い……!!」
「ギャアアアアアア!!!」
鈴木思科、
「——が! だが、まだ終わりじゃない!」
思科は腕の傷を押さえながら、腰を低く落とす。
「なるほど……この猫、完全に『バグ行動』だな。」
「ならば、戦術を変更する。」
「プログラムは、バグが出たら"パッチ"を当てるものだ!」
「俺は、バグ修正のプロだ!」
彼は片手を素早く動かし、結菜の攻撃パターンを読み取ろうとする。
「くくく……無駄だニャ!!」
結菜の瞳が怪しく光った。(※遊人視點補正)
「ニャニャニャニャニャアアアアアア!!!」
——超速連撃!!!!!
バババババババババババッ!!!
「うぎゃああああああああ!!!!」
——敗北。
鈴木思科、ズタズタ。
血まみれで、その場に崩れ落ちた。
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「おいおい、思科のやつ、血しぶき上げてるけど……大丈夫か?」
「まぁ、彼なら死にはしないでしょ。」
「いや、もうほぼ死にかけだろ!?
猫に負ける軍人ってなんだよ!!」
「ッ……」
思科は震える手で、傷ついた腕を抑えた。
そして、ゆっくりと顔を上げ——
「ッッ……無理!! こんなの、無理ッッ!!!」
「は?」
「カオスすぎるッッッ!!!」
思科が理性崩壊した。
「何だこの状況は!?
猫がブチ切れて軍人をボコボコにしてんの、おかしいだろ!?!?」
「いや、それはまあ……」
「そもそも!! 俺が扱うのは"データ"だ!!"動物"じゃねぇ!!!」
「エラーだらけのシステムを整えるのが俺の仕事であって、
"猫"のバグ修正なんて聞いてねぇんだよ!!」
「いや、バグ扱いされる猫もかわいそうじゃね?」
「俺は……!」
思科は震えながら、深呼吸する。
「……俺は、整ったコードしか受け付けないんだ。」
「変数は明確に定義され、無駄な記述は一切許されない。」
「世界は論理的に動くべきだ!!!」
「それが、俺の**『生存之道』**だ!!!」
「……え、なんか急にエンジニアの魂叫び出したんだけど……。」
ティダが呆れ顔で言う。
遊人もゴロゴロしながら、チラッと思科を見た。
「……で、つまり?」
「俺はこの猫を扱えないッッッ!!!」
「お、おう……。」
「っていうか!! 猫が敵意むき出しで飛びかかってくるの、
完全に"攻撃型ウイルス"の挙動だろ!!!」
「……いや、もう何言ってんのかわかんねぇよ。」
「攻撃パターンを解析する時間もない!! ならば、俺は撤退する!!」
思科は全力でその場から逃げ出した。
「……。」
「……ねぇ。」
遊人がティダをチラッと見る。
「軍人なのに猫一匹処理できないって、どうなん?」
「うーん……思科の苦手ジャンルが、はっきりしたって感じ?」
「なるほど。プログラムなら制御できるけど、
猫はランダム挙動すぎて無理と。」
「ま、彼の"生存之道"には"猫"は含まれてなかったってことね。」
ティダは、くすっと笑った。
「カオス vs. エンジニア、カオスの勝ちってことで。」
遊人は深々と頷いた。
「とはいえ、このまま結菜が遊人の顔面を占拠し続けたら、
話どころじゃないな……。」
ティダはそう思った。
「……仕方ない。軍人、行け。」
「了解!」
ゴゴゴゴゴ……!!!
——突如現る、震暴部隊!!
「ターゲット、確認! あの猫、全力で確保する!!」
「作戦コード『キャット・リカバリー』開始!!」
「包囲網展開! 各隊、持ち場につけ!!」
「ニャアアアアアア!!!」
ババババババババババッ!!!
「ぐおぉぉぉ!? 何だこの猫の反撃速度は!?」
「くそっ、手がつけられねぇ!!」
「まるで野生のボスキャット……!!」
「貫禄が違いすぎる……!!」
「俺たちは……猫の支配下にあるのかもしれない……!!」
「寝言言ってないで早く捕まえろォォォォ!!」
ティダの怒鳴り声が響く。
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數分鐘後——
ズタボロの軍人たちが、ようやく結菜を拘束(?)した。
「……た、確保……完了……。」
「何だこの消耗……俺たち、今猫一匹と戦ってたんだよな……?」
「違う……アレは猫の形をした、神だったんだ……。」
「もうダメだ……毛玉を見るたびにフラッシュバックしそうだ……。」
「お前ら、後で猫アレルギーの診断受けとけ。」
「まぁ……これでようやく、遊人と話せるわね。」
遊人はボロボロの軍人たちを眺めながら、ぽつりと呟いた。
「……猫、やっぱ最強じゃね?」
「それな。」
ティダも、深く頷いた。