新しい異名持ち誕生
かつて【白い死神】と呼ばれた人物は異名持ちとなり、【暗殺姫】と呼ばれるようになっていた。
暗殺姫は、合法的にPKをすることのできる、PVPエリアで遊んでいた。PVPエリア外でPKを行うと世界から犯罪者認定され、賞金首となる。さらに、犯罪者はこの世界における公的機関の使用が一切できなくなるというオマケつきである。
「おっ、いたいた」
暗殺姫こと私は【索敵】スキルに引っかかった獲物に、音もなく後ろから近づき、日替わり武器のマイナスドライバーを首に刺そうとした。
その時だった。
ゴーン・・・ゴーン・・・と鐘の音が5回鳴った。異名持ち誕生の合図だ。
「くそ、タイミング悪いな」
鐘が鳴り終わる前に獲物を粒子にした私は、プレイヤーウィンドウを出した。
プレイヤーウィンドウとは、それぞれのプレイヤーに与えられた操作盤である。プレイヤーウィンドウは各自カスタマイズすることができるため、人によって形や色は違う。
『異名持ち誕生、ネームド誕生。新たなるネームドの名は【陸に上がれる人魚】。繰り返す・・・』
「え、名前ダサくね?歴代のネームドの中でも、トップレベルで終わってる・・・」
うわ、可哀想と思いながら【変人クラン】の予定を見ると・・・。残念ながら、今日の新人担当は私らしい。
だるいなあ、と思いつつ、次は【考察ギルド】の作った異名持ち候補リストを見た。
異名持ち候補リストとは、1つのことに対して異常なほどやりこんでいるプレイヤーネームと偉業になりそうな行動、所属しているギルド名が書かれている。
私はリストの中から、プレイヤーネームが消えているプレイヤーを探した。
「見つけた。所属ギルドは・・・うわ、【海賊ギルド】じゃんか・・・」
【海賊ギルド】は【絶海】(通称海エリア)で活動しているギルドで、犯罪者も多く所属している。さらに【海賊ギルド】は宝探しや他プレイヤーからの金品巻き上げ、懸賞金稼ぎをしている。
そう、懸賞金稼ぎ。つまりはバウンティーハンター。
わたくし、多数のPKを行ってきた【暗殺姫】は、セカンドモードに移行する前からの賞金首だ。つまり、【海賊ギルド】のターゲットである。
「戦闘不可避、おわた」
はあーっと長いため息をつき、私は【絶海】へと向かった。