ゆめでぼくもかけっこする
周りはあかい炎に包まれた。おかあさんは小さい坊やを胸に抱いて走っていく。
ずっと大きな音が鳴りひびいている。
そうやって危ないことが起きれば、音でみんなに逃げるよう、教えてくれていた。
けれど、おかあさんは坊やを探していたので、逃げ遅れてしまった。
みんなのいるところへ走って走って走っていく。
爆発と強い風によって転んでも、おかあさんは小さい坊やを胸に抱いて走って走って走っていく。
近くに落ちてきた黒い筒が爆発した。
おかあさんが痛みで目をあけると、坊やは胸の中で泣いている。
おかあさんの足はたくさんの赤い血を流していた。
もうみんなのいるところへはいけない。
もうおかあさんは走って走って走っていくことはできない。
おかあさんはあんなに強く抱きしめていた坊やを突き放すと、坊やに森へ行くように言った。
坊やはお母さんの袖を握りただ泣いていた。
おかあさんはもう一度坊やを胸に抱きしめた。
おやすみなさい。愛しい我が子よ。
おかあさんは坊やを最期までやさしい手でなで続け坊やのお布団になった。