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1章 6

パーティ―会場に入る前に、メイドはお父様とお母様の控室に案内してくれた。

そのまま三人で会場へ向かう。


「首尾よく行ったかね?」

「えぇ、お父様。アマーリエ様のドレスが一段と素敵になりましたわ。

 お父様、お母様は公爵様とお話できまして?」


「パウラ様がお二人に詳しくお話をしてくださっていたようだけど、公爵様は心配されていました。

 公爵家のパーティーで何かあれば、公爵様の評判にも関わりますからね。

 でも公爵夫人は好意的でしたわ。あの方は新しい流行を作り出すことがお好きですからね。」


お母様の言葉を聞いて、公爵様に対して少しだけ申し訳なくなる。

でも大丈夫、絶対に失敗はさせない。



会場には公爵・侯爵・辺境伯家の面々が集まっていた。

伯爵家である私たちを見て少し不思議そうな顔をされたが、皆大人の対応をしている。

内心でどう思っているかは分からないが。


パウラ様たちのお話しされていた通り、頭の固い保守的な人物が多いご高齢世代はいらっしゃらない。

お父様たちと同じか、それよりも若い人ばかりだ。

同じ学園の生徒もちらほらと見かける。

仲良い友達と言えるほど親しくはないが、後で話してみよう。



パウラ様のお父様が現れると、会場のざわめきが消えた。

 、

「みなさん、今宵は我が家のパーティーにようこそお越しくださいました。

 どうぞごゆっくり、楽しんでいってください。」


その言葉が終わるや否や、音楽が流れだし歓談の声が戻る。

パウラ様とアマーリエ様はまだ現れない。



「テレーゼ様。ごきげんよう。」

「いらっしゃるとは思いませんでしたわ。」


同じ学園の生徒たちに声を掛けられる。

少し離れたところから男子学生が様子をうかがっているのが分かった。


「ごきげんよう。

 パウラ様のドレスのご相談に乗りましたら、お友達として招待してくださいましたの。

 家柄が合わないとお断りしたのですけれど、公爵様もお許しくださったので参加させていただきましたわ。」


「まぁ、そうでしたのね。テレーゼ様はパウラ様と仲がよろしくていらっしゃいますものね。」

「陞爵されたのかと思ってびっくりしたわ。」


嫌味の一つでも言われるかと思ったが、彼女たちの口ぶりは穏やかである。

男子学生たちも、なんだつまらないとでも言いたげに、それぞれ会話を始めた。

思い切って、令嬢たちにお願いをしてみた。


「私、お恥ずかしながら学園の生徒以外の方のお顔と名前が一致していないのです。

 年の近い女性の方ならば、お茶会でお会いしたこともあるのですが。

 ご令室様や、男性となれば分からなくて。

 もし粗相をしそうになりましたら、お助けいただけませんでしょうか?」


「もちろん、よろしくてよ。」

「テレーゼ様はまだデビュタントもされてませんし、お顔が分からないのも当然ですわ。」


頼られたことが嬉しいのか、令嬢たちは嬉しそうに胸を張る。

良かった。

これで、伯爵家のくせにと悪く言われることもないだろう。


お父様、お母様たちも、それぞれ歓談しているようだ。

社交界に顔が広いお二人だから、お付き合いはお手のものなのだろう。




場が温まったころ、パウラ様おお父様が再び前へでる。


「皆さん、本日は特別な方にお越しいただきました。」


ドアが開き、アマーリエ様が現れる。

優雅に一礼をし、会場前方へと歩みを進めた。

知らず知らずのうちに道が開け、皆アマーリエ様を見つめている。


「王女殿下?」 「珍しいな、王女殿下がいらっしゃるとは。」

「あのドレス、とても綺麗だわ。」  「たくさんの刺繍が張った大きなリボンね。」

「まぁ、ドレスに大きなリボンだなんて。幼女じゃあるまいし。」


ヒソヒソとささやきあう声を聴きながら、私は会場内を見渡す。

いつの間にか別口から中に入られたのだろうか、パウラ様が会場の端からアマーリエ様をまぶしそうに見つめていた。


アマーリエ様が会場前方、パウラ様のお父様のそばに立ち、優雅に一礼をする。

私たちはそれよりも深く、長く、礼をした。


「アマーリエ王女殿下。今宵はお越しくださりありがとうございます。

 どうぞごゆるりとお過ごしくださいませ。」


パウラ様のお父様の声に、アマーリエ様は鷹揚に頷く。


「アマーリエ王女殿下、殿下とダンスを踊る栄誉を授けてくださいますか?」

「えぇ。」


アマーリエ様は、パウラ様のお父様の手を取る。

パーティーのダンスは、身分が最も高いものが最初に躍るのが通例だ。

王女であるアマーリエ様と、公爵様の組み合わせとなった。

公爵夫人はにこにこと笑ってそれを見ている。



「普通のパーティーとはいっても形式ばったものはあるのね。」


私のつぶやきに、いつの間にか後ろに来ていたお母様が言う。


「それはそうよ。公爵家主催だもの。

 それより、アマーリエ王女殿下のドレス、素敵ね。

 あの腰に巻いた大きなリボンのようなもの、あれがヤズマ皇国の生地ね?

 遠目から見ても、繊細な模様が施されていることが分かるわ。」


アマーリエ様がターンをすると、垂れた帯がふわっと回る。

そのたびに光を受けて金糸銀糸がキラキラ輝き、皆がその美しさに目を奪われていた。


「えぇ、帯というものですわ。

 でも、これで完成ではないのです。

 まだ皆様をあっと言わせる仕掛けを擁してございますわ。」





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