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9.お昼休み

入学してから初めての土曜日を迎える前日、金曜日。

明日は約束していた九条さんのお家へお泊りの日。お父様とお母様には許可をもらった。女の子の家に泊まりに行くのに何も問題ないという感じだった。兄様達も安心していた様子だった。私は初めて他人の家に泊まる、という経験をすることになる。ちょっと緊張していた。


朝の授業が終わり昼食の時間。

私はいつも通り自分の席で一人お弁当を食べながら本を読んでいると誰かが私のことを呼んでいる声が聞こえた。声の方向へ目線を向けるとそこにいたのは九条さんだった。手を振りながら私を呼んでる姿が見えた。私は本を机の上においてお弁当の蓋を閉じて九条さんの元へ向かった。


「九条さん。どうしたの?」

「鷹司さんとごはん一緒に食べたいと思って。いいかしら?ご一緒」

「ええ。かまわないわ。どこで食べようか?」

「教室だと目立っちゃうから外いこ」

「分かったわ」


私は自分の席に戻ってお弁当を手に再び九条さんの所へ向かった。私と九条さんのことを見ていた他の生徒達がなんだかひそひそ話をしていたのが少し気になった。私が九条さんと関わっていることが不思議なのだろうか。もし私のせいで九条さんに迷惑をかけてしまったのなら申し訳ない、そう思ってしまう。


教室から出て中庭のベンチに腰を下ろした。九条さんは笑顔で私のことを見つめている。私も作り笑顔で答えた。九条さんは午前中の授業のこととか、教室の友達のことを話しながら食事をしていた。私はその話を聞きながら食事をした。他人とご飯を食べたのはこれが初めてだった。また私は初めての経験を九条さんとしたのだ。私の中の世界がまた一つ広がった。


「…鷹司さん?聞いてる?」

「あ、うん。聞いてるよ。それでその子がどうしたの?」

「うん!その子がね、私に彼氏がいるのかって聞いてきたの。私なんて答えたらいいのか分からなくなっちゃってね。どうしたと思う?」

「うーん。いないって言ってごまかした、とかかな」

「ぶぅー!違いまーす。正解は…恋人いるよって言っちゃったの!もう恥ずかしくなっちゃって顔がすごく熱くなってね!ドキドキしちゃった」

「そうなんだ。その子もビックリしたんじゃない?」

「うん!目がおっきくなって驚いてた。でね、どんな人かって聞かれたから、教えないって言ってごまかした」

「そっかぁ。お友達とそういう話もするんだね。九条さんって」

「するよぉ~。鷹司さんだって恋バナするでしょ?」

「……私、友達、いないから。そういう話はしたことないの」


私がそう答えると九条さんは口に手を当てて謝罪してきた。何度もごめんなさいって。私は気にしてないから大丈夫って言っておいた。本当に気にしてないから。それに今は九条さんが一番だからって、そう付け加えておいたら彼女はとても嬉しそうに笑った。私の手を握りしめ、ずっと仲良くいようねって言っていた。九条さんの手はとても暑くて少し震えていた。私も笑顔で頷いた。昼休みの終わりを告げる鐘の音が学校中に鳴り響き、私と九条さんはそれぞれの教室へ戻った

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