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8.デート(後半)

楽しそうに話彼女を私は相槌を打ちながら傾聴していた。特に私から話をする話題もないし、彼女も楽しそうに話しているから止めるのも悪い気がした。彼女はとても話題豊富だった。彼女の趣味は漫画を読んだり、洋服の雑誌を読んだりしているそうだ。休みの日は出かけたりしているらしい。中学からの親友がいてその子と遊んでいると言っていた。


私は休みの日はずっと部屋にいる。沢山の本に囲まれながら、好きな読書をする。偶に、兄様たちが私を外に連れ出す名目で出掛けることがある。兄様たちも私がずっと部屋にいるのが可哀想だと思っているのだろう。私に気を使ってくれているのが分かって申し訳ないと思ってしまう。私は気にしてないから、気遣いは不要だと伝えてみたが、逆に不憫な妹と思ってしまって逆効果だったことがあった。兄様達はとても私に優しいのだ。私はその優しさ甘きってしまっている。そんなことを考えながら彼女の話を聞いていた。すると話題が私のことになった。


「鷹司さんの普段着、私見てみたいな。どんな洋服が好みなの?」

「え、えーっと。普段着かぁ。そうだなぁ。普段はワンピースが多い気がする。楽だし。兄様達からも似合うって言ってくれてるから」

「そうなんだぁ。兄妹仲がいいのね。兄妹って二人かしら?私は一人っ子なの。だから羨ましいわ」

「えっと。兄様は二人で、私がいて、三人兄妹かな」

「そうなんだ。羨ましい!喧嘩とかしたことないの?」


喧嘩、全くない。そもそも喧嘩するほど関係が深いわけではない。お互い干渉しないという暗黙のルールがあるし、兄様達のこと何も知らない。


「喧嘩はないかな。そもそもお互いあまり干渉しないから」

「そうなんだねぇ。兄妹ってそういうものなのねぇ」

「いや、多分私たちの関係が歪だと思う。他の兄妹を知らないから分からないけれど、テレビやネット上で調べてみるとお互い喧嘩が多いんじゃないかなって思ってる」

「そうなのね。鷹司さん達の関係性が特殊なのねぇ」


特殊だろう、しかもかなり、普通ではないと思う。別に俗にいうシスコンとか、ブラコンとかではない。お互いプライベートな話もしないし、興味もない。ただ、兄様達は私の不甲斐なさを憐れんでいて見ていられないんだと思う。だから気を遣う行動をしているだけ、そう思っていると兄様達の行動一つ一つに納得できる。私が普通の妹だったら多分兄様達は私をなんとも思わないと思う。それだけドライな関係なんだと私は思っている。


九条さんとの会話はどんどん進んだ。兄様のことが終わると、今度は彼女自身のことを話し始めた。


「私は一人っ子で、家には殆ど両親は居ないの。海外出張が多くて。だから家政婦さんが家事全般をしてもらっているのね。私も偶にお料理したりするんだけど。一人ぼっちは寂しいなって」

「私の家も使用人さんが住み込みで家事全般をしてもらっています。まぁ、私の場合は兄様が居るのですが、自室に篭りきりなので一人のような感じですね。九条さんの仰る一人…ではないのですけれど」

「あ、鷹司さん。敬語、なっちゃってるよ。でも有難う。気を使ってくれて」


あ、しまった。つい普通に敬語になって口に出してしまった。私は彼女の指摘が恥ずかしくなり口元を手で覆って下を向いてしまった。そんな私を見た彼女はそっと肩に手を当てた。ぽんぽん、と私は彼女の顔を見た。彼女の顔はとても素敵な笑顔をしていた。


「ごめんなさい。意識せず話しちゃった。ダメね、私って。また敬語になったら教えて」

「うん。勿論。あ、そうだ!今度の土曜日って鷹司さんって予定ある?」

「無いよ。土曜日は特には」

「じゃぁ、私の家にお泊りしに来ない?とっても楽しく過ごせそう」

「え?お泊り?」

「そう!お泊りっ。是非」


お泊りのお誘いを受けてしまった。また初めてのことだ。友達がいない私が友達じゃない彼女の家にお泊りする、というとてもすごいことになってしまった。断ってしまうと彼女は悲しむのだろうか。一人ぽっちは寂しいって言っていた。私なんかでよければ一緒にいてあげたほうがいいと思い、私はお泊りの事を承諾した。


それから30分くらい話をした後、喫茶店を出た。気が付けば喫茶店に一時間以居たんだと、時計を見てそう思った。九条さんと駅まで歩いてそれからそれぞれの家へ帰る為にホームで別れた。

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