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7.デート(中編)

高校の最寄り駅から下り線で3駅に着いた。改札を出てから徒歩15分のところに目的の喫茶店があった。道中九条さんは学校のことを嬉しそうに話していた。クラスの人と友達になったことや、担当教科の先生の印象の話など、私には全く縁の無い話だった。私も彼女の話に合わせる話をしてみた。彼女は楽しそうに私の話を聞いていた。


喫茶店に着くと、彼女がいつもの席にと案内された。向かい席に座ると店員さんが注文を求めてきた。九条さんはいつものコーヒーを頼み私は紅茶を頼んだ。店員さんが席を離れると彼女は話始めた。


「折角恋人同士になったので、敬語で話をするのやめませんか?」


唐突な提案だった。普段私は誰に対しても敬語で話をしている。家族でさえ敬語で話をする。家では私が一番年下だから。それにお父様やお母様は普段私たち子どもたちに対しても敬語で話す。それにお父様はお母様にも敬語を使う。お母様もお父様に敬語使う。お父様とお母様はお互いをさん付けしている。兄様たちはお互いのことを孝之兄様、凛久君と呼んでいるし、私に対してはめぐみさんと呼んでいる。私にとって敬語や敬称は日常茶飯事、極々当たり前のことだった。


「私は普段誰に対しても敬語で話をしています。家族でさえ。しかし、九条さんが敬語が嫌悪に感じているのであれば、敬語をやめてもいいと思います」

「そう、なんですね。家族間でも、ですか。それでは、私には敬語は止めましょう。私だけ特別ってことですねっ」


そう言って嬉しそうに口元に手を当てて笑った。特別、確かにそうかもしれない。私はこくんと頷いた。


「わかりま…、わかったわ。これでいいかしら?」

「うん!まだちょっと敬語っぽいけど。徐々に直していこう、ねっ」


そう言って笑った。私も彼女の笑顔につられて笑った。すると私の笑顔を見た彼女がびっくりした表情をした。可愛らしい目が大きくなっていた。


「鷹司さんの笑顔ってとっても素敵ねっ。すっごく可愛いわ」

「そう?可愛いかな…」


少し恥ずかしくなって下を向いてしまった。また初めての体験。彼女といるとどんどん新しいことが増えていく。私の中で何かが変わるような気がした。


店員さんが注文の品をもってきた。それぞれ注文したものをテーブルに置くと一礼して席を離れた。この喫茶店は静かで耳心地のいい曲が流れている。ピアノの曲。モーツアルト。私はモーツアルトの曲が好きで自分でもピアノで演奏したりする。曲を聴きながら彼女と会話する。


「鷹司さんってお友達は作らないの?」

「え?お友達…。作ったことない、かな」

「なんで?鷹司さんって凄く美人で笑顔も素敵で人気者だと思うのに」

「私が人気者のはずないわ。それに話しかけられたことも一度もないのよ。暗い子って思っているんじゃないかしら」

「そう、なのかなぁ?教室にいる時って何して過ごしてる?」

「えぇっと…。大体読書、かな」

「そうなんだぁ。周りからは話しかけるなオーラが出てるかも」

「そんなオーラだしてるんだ、私って…」


話しかけるなオーラ。どんなオーラなんだろう。私は普通に本が読みたいから呼んでるだけなんだけど。私が本を読んでると周りの人には不快に思わせてしまっているんだろうか。もしそうだとしたら教室で本を読むのはやめたほうがいいかもしれない。友達はいなくてもいいけど、周りに不快に思わせるのはとても心が痛む。


「でも、仮に鷹司さんにお友達が出来なくても、私は大丈夫だよ。というか、私が独占出来て嬉しいかもっ」

「そうね。私は九条さんに独占されても平気よ」

「きゃっ!嬉しい」

「あはは」


彼女は頬を赤らめながら長いサラサラの黒髪を弄りながら照れ隠ししている。本当にこの子は可愛いと思う。仕草、声、顔、どれも全部可愛い女の子だ。それに比べ私は全く嬉しいとか、恥ずかしいとか、そういう感情がないから、彼女のような表現が出来ないのが彼女に対して申し訳なくなる。本当に彼女は私に恋、しているんだろうか。こんな無表情で不愛想で、不器用な私に…。


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