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62.初詣 ②

鳥居を潜り、参道を歩いていると道の端に出店が出ているのが見られた。

私たちは手水舎で手を清めた後拝殿で皆が並んでいる列に着いた。

時間を確認すると後2分で今年が終わり来年が明ける。


「結構人がいるんだね。夜中なのに」

「そうだね。着物姿の人が多いね。後ちょっとで年明けだよ、めぐちゃん」

「うん…。あ、そうだ。あいちゃん、耳貸して」

「ん?こ、こう?」


あいちゃんが髪を耳にかけて私に向かって差し出した。

私は手を当てて口元を隠し、あいちゃんの耳元で話した。


「今年はあいちゃんと出会えて嬉しかったよ。あいちゃんと恋人になれて嬉しかった。来年も仲良くしてね」


私が話し終わるとあいちゃんが顔を真っ赤にして私を見つめたまま固まってしまった。

あれ?なんか私やらかした?

そう思いあいちゃんの右手を握りしめた。


「あいちゃん…?だ、大丈夫…?」

「ん…あ、う、うん…。びっくりしただけだから」

「そんなに?私お礼のつもりで言ったんだけど。びっくりさせてごめんね」

「ううん。。大丈夫。凄く嬉しいの。めぐちゃんが私のこと想ってくれてるってことがとっても嬉しいの。めぐちゃん、有難う。私も同じ気持ちだよ」

「うん。よかった」


あいちゃんの表情が和らぎ、少し涙目になっているのが分かった。

私は巾着袋からハンカチを取り出してあいちゃんに差し出した。

あいちゃんは恥ずかしそうに私のハンカチを受け取り目元を拭った。


他のみんなは其々近くにいる子たちと談笑していた。

兄様達は私の後ろで私の事を見守っている様子だった。


そして、午前0時を迎えた。


境内にいる人たちから歓声と『明けましておめでとう』という言葉が飛び出していた。

私は両隣にいるあいちゃんとさやちゃんに年明けの挨拶をすると、二人からもお返事をもらった。

拝殿の列が少しずつ動き出し、拍手の音が聞こえだした。

参拝が始まったのだ

暫く私たちは動く列についていくことになり、列に並んでから14分後自分立ちの参拝の番が回ってきた。


二拝二拍手一拝、一般的な参拝の作法をして其々のお願い事を心に出した後列の外に出た。

参拝が終わって待っているみんなのところへ向かった。


「めぐみさん、お願い事はちゃんと出来た?」

「うん。小鳥遊さんは出来た?」

「うん。出来たよ。でもすごい人であんまり時間掛けれなかったかな」

「私も~。なんかすぐ終わっちゃったぁ~」

「結衣ちゃんもそうなんだね。愛子ちゃん達はまだかな?」

「まだ見たい。お兄さん達がこっちに来るよ」


後ろを振り返ると兄様達が私の所に向かって歩く姿が見えた。

兄様達が到着したすぐ後ろに愛子ちゃんと安西さんが到着した。


「これで全員だね。それじゃ、お守りと御神籤貰いにいこっか」


小鳥遊さんの号令で皆で授与所へ向かって歩き出した。

授与所に到着した私たちは待機している巫女さんにお守りと御神籤を受け取った。

みんな御神籤を引き札を貰って確認した。


「あ…私大吉だ」

「めぐちゃん凄いじゃん。私小吉だった…」

「あら、私も小吉だわ。めぐみさん、羨ましいわね」


あいちゃんとさやちゃんがそういって私の御神籤の内容を見たいと言い出したので、御神籤を渡した。

色々書いてある中『恋愛 想い人に愛される』と書かれていたことを自分の事だと思って照れていた。

あいちゃんが照れるのは分かるが、何故さやちゃんまで照れるのだろう。


皆で御神籤を確認し終わり、おみくじ結び処で御神籤を括り付けた。


参拝を無事終わり後は家に帰るだけになってしまった。

皆で甘酒を貰いにいことになり、鳥居の近くで配給している所へ向かった。


「はい、甘酒どうぞ」

「有難うございます。頂きます」


年配の女性から甘酒を受け取り参道で歩く通行人の邪魔にならない場所で甘酒を頂くことにした。

私一人で立ち飲みをしていると、あいちゃんとさやちゃんが傍にやってきた。


「めぐちゃん、ここにいたの。探しちゃったよ」

「ごめん、あいちゃん。さやちゃんも」

「いいのよ。それより甘酒はおいしいのかしら?」

「うん、おいしいし、温まる。今日凄く寒いから助かる」

「…ホントだ、おいしい。私甘酒大好きだけど、これはおいしいよ」

「ほんとね。冷えた体にいいわね。なんだか雲行きも怪しくなってきたわ。もしかすると雪、降るんじゃないかしら」


さやちゃんの言葉を聞いて私とあいちゃんは空を見上げた。

曇りで月の光がない状態だった。

ここへ到着するよりも寒さが増した気がした。


他の子たちも私たちのいる場所に集まり始めた。

おいしそうに甘酒を飲みながら談笑をしていた。

兄様達はお土産を買いに行くと言い残し屋台のほうへ向かった。


「後は、帰るだけだね」

「そう、だね。ねぇ、めぐちゃん。ちょっとおトイレ行かない?」

「うん、いいよ。さやちゃん、ちょっと行ってくるね」

「ええ。行ってらっしゃい。気を付けて」


あいちゃんと一緒に簡易トイレが設置されている場所に向かって歩き出した。

皆から完全に離れて見えなくなった場所まで来るとあいちゃんが私の傍にぴったりくっついてきた。


「ねぇ、めぐちゃん。あそこ行かない?」

「え?おトイレはいいの?」

「あれは口実。二人きりになりたい」

「そういうこと。うん、いいよ」


あいちゃんと私は神社の奥に向かって歩き出した。

人気のない場所で薄暗くあいちゃんの表情があまり見えない状態になった。

到着すると、あいちゃんが私に抱きついてきた。

耳元で口で息をしているのが分かる。

あいちゃんの暑い吐息が私の耳にかかる度に身体がビクついてしまい恥ずかしくなってしまった。


「はぁ…はぁ……はぁ……はぁ」

「あいちゃん、大丈夫?息荒そうだけど。苦しいの?」

「ううん。やっと二人きりになれて、興奮してるの」

「え…?ここお外だよ。ダメだよ」

「分かってる。ちょっとだけだから。こうしていたい」


あいちゃんはそういって吐息を私の耳に吹きかけた。

その度にドキドキと身体がビクついてしまい、私まで変な気持ちになり始めてしまった。

これ以上は危険と判断した私はあいちゃんと離れようと身体を動かすと、あいちゃんが私の唇にキスをしてきた。


「んっ!…んっはぁ……ちゅ……チュちゅ……あっ…ん~!」


私の声とあいちゃんの声が交互に出てしまい外にいる人たちに見つかったらどうしようとドキドキが止まらなくなってしまった。

しかし、あいちゃんも流石に恥ずかしかったのか、キスはすぐに終わった。


「あいちゃん…もう満足した?」

「ごめんね。我慢できなかった」

「ん、分かったよ。そろそろ戻らないと。怪しまれるかも」

「そうだね。今日は楽しかったよ、めぐちゃん」

「うん。私も」


私たちは皆のいる場所に戻るため歩き出した。

暗闇から明るい場所に出ると光で眩しくて目を瞑ってしまった。

あいちゃんは私の手を取り皆のところへ向かった。

皆と無事合流すると、兄様達が車で待っていると伝言を小鳥遊さんから聞かせてもらった。


「そろそろ帰ろうか。皆お迎えあるのかな?」


愛子ちゃんが皆にそう尋ねると、皆其々の家の人たちが車で迎えに来ていると言った。

神社に併設されている駐車場に到着した。


「それじゃ、今日はありがとう。皆今年もよろしくお願いします」

「こちらこそ、めぐちゃん。良いお年を」

「良いお年を。めぐみさん」


あいちゃんとさやちゃんの返事を貰うと小鳥遊さん達からもお返事を貰い、私は一礼して兄様の車に向かって歩き出した。

孝之兄様が私を見つけると車から降りてきて私のところへやってきた。


「おかえりなさい。楽しかったですか?」

「はい。とても楽しかったです。孝之兄様、連れてきてくださり有難うございました」

「僕も楽しかったですよ。凛久君も車で待ってます。帰りましょう」

「はい」


孝之兄様が車のドアを開けてくれると、私は車に乗り込んだ。

全員乗り込むと車のエンジンが動き出し、ゆっくりと自宅に向かって動き出した。


帰りの途中、空から白い雪が降り出した。

幻想的で私は外の景色に見とれていた。ふとスマホの画面を見ると時刻は午前0時50分を過ぎていた。

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