表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/70

6.デート(前半)

そんな私が高校生になって初めて恋人が出来た。高校は私立の女子大学付属高等学校。女子高だ。入学式の前にクラス発表があり、私は1組だった。教室に入ると机に名前が貼ってあり、自分の名前がある席に座った。


担任の先生のHRが終わると、入学式の会場である体育館に向かった。校長先生や、生徒会長、来賓の人のお祝いの話が終わったのは式が始まってから2時間後だった。


人の話を黙って聞くのは慣れていたのでまったく苦痛に思わなかったが、周りの声は疲れたらしく、不満を言う生徒が多くいた。


教室に戻ってから担任から明日のスケジュールを説明して下校する。私は教室を後に下駄箱へ向かった。教室では既に仲良しこよしのグループが形成されつつあったが、私に声をかけてくる人は誰もいなかった。高校でも私には友達はできそうにないと思った。


だけど、校門で誰かを待っていたその女の子が、私に声をかけてきた。それが九条愛衣さんだった。そして、昨日のことがあり、今日放課後にデートすることになっていた。


私は下校の準備を素早く済ませ、教室を後にした。校門の前だと目立つからと、駐輪場で待ち合わせすることになっていた。駐輪場に向かったが誰もいなかった。九条さんはまだらしい。私はカバンから読みかけの本を手に取り近くにあったベンチに腰掛け読書をしながら九条さんを待った。


数分たってから走ってこっちに来る女の子が見えた。長い髪の毛を揺らしながらカバンを肩にかけがっちり手で押さえつけていた。九条さんだ。私は本をカバンにしまってベンチから立ち上がった。


「ご、ごめんなさいっ。遅くなっちゃって。お待たせしてごめんなさい」


九条さんはそう言って私の目の前まで来ると息を切らせながらそう言った。私は別に何とも思ってない。この場合はどう答えたらいいのかわからない。とりあえず話をしなくては沈黙は不味い、そう思った。


「大丈夫。待っている間読みかけの本を読みながら待っていたので」

「え…。読書。結構待たせちゃったのかな…」


え?そんなに待ってない。数分といったところだ。私の言い方に誤解を招くことが発生したのだろうか。私は事実をしっかり伝えることが大事かもしれないと思った。


「えっと。ここに着いたのが5分くらい前で、その間本を読んでいたのが3分くらいです。だからそんなに待っていないので、大丈夫です」


私がそう話をすると、九条さんがぽかんとした表情で固まってしまった。私が首をかしげると、彼女はクスクスと口元に手を当てながら笑い出した。何か面白いことが発生したのだろうか。私は不思議に思いながら、彼女の笑う姿を見ていた。


「あはははっ。鷹司さん、面白い。凄く真面目で誠実な人。貴女を好きになって本当によかった」

「ん?誠実?初めて言われました。私今まで友達がいなかったので、初めてなのですけれど。でも、気を落とされなくてよかったです」

「気を使ってくれてありがとう。鷹司さん。それじゃ、行きましょうか」

「はい」


私たちは裏口から九条さんが案内してくれる喫茶店に向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ