45.映画鑑賞
勉強会のその後は特に皆で集まって遊ぶことはなく、あいちゃんと二人でお出かけしたり兄様達と車で出掛けたりして夏休みを過ごした。
今日は夏休み最終日。
連日雨も降らずずっと晴天で猛暑日が続いている。
蝉の声が響き渡り五月蠅く感じてしまう。
今日の予定はあいちゃんが私の部屋に来ることだった。
偶には私の部屋はどうかと自分から提案してみたらあっさり通ってしまった。
リビングであいちゃんが訪ねてくるのを待っていると呼び鈴がなった。
私は玄関の扉を開いて立っていたあいちゃんをお招きした。
「いらっしゃい。暑かったでしょ。すぐお部屋いこう」
「うん。日傘しててもジリジリ来る感じだよ。お邪魔します」
あいちゃんと会話をしながら私の部屋へ案内した。
部屋に入ってもらいテーブルが置いてある場所に座ってもらった。
あらかじめクーラーをつけておいたので既に部屋は涼しい状態になっている。
あいちゃんは部屋の涼しさに感謝すると言って両手を合わせた。
その姿がおかしくなってしまい私は笑った。
暫くすると橘さんが冷たいジュースとお菓子を運んで来てくれた。
部屋の入口でお盆を受け取り、テーブルに置いた。
「喉からからだったから助かる~」
「どうぞ。お菓子もあるよ」
「うん!頂きます」
おいしそうにジュースを飲むあいちゃん。
私も一口ジュースを口に入れた。
冷たいジュースが喉の渇きと暑い体温を下げてくれている。
「今日はどうしようか?何かしたいことある?あいちゃんに合わせるよ」
「そうだなぁ~。今日ってご家族の方々は?」
「私以外外出してる。夜ごはんもいらないって言ってたから、遅くなるんじゃないかな」
「ふ~ん。そうなんだ」
「うん。それでどうしようか?」
「めぐちゃんって映画のDVDとか持ってる?」
「私は持ってないけど。兄様が持ってた気がする」
「それってここで見られるかな?」
「聞いてみるね」
「うん、お願い」
あいちゃんに頼まれた私は孝之兄様の携帯にメッセージを送った。
送信後すぐに返信が帰ってきた。
「部屋にあるから見ていいって」
「それじゃお部屋いこっ」
「う、うん」
孝之兄様の部屋に入ると沢山のDVDが入っている棚があった。
邦画、洋画、アニメなど沢山のジャンルがあった。
あいちゃんはその中から海外映画をチョイスした。
私は見たことがない映画だった。
私の部屋に戻り早速兄様から借りたDVDを視聴することにした。
「外が明るくくて見にくいから、カーテン閉めようよ」
「うん。いいよ」
あいちゃんの提案に答えた私は窓のカーテンを全部閉めた。
薄暗くなった部屋でテレビ画面が輝いている。
私はパッケージからDVDを取り出しプレイヤーに差し込んだ。
「めぐちゃん、この映画知ってる?」
「ううん。知らない。あいちゃんは知ってるの?」
「映画雑誌に載ってたのを見たけど、本編は見てない」
「そうなんだ。有名なタイトルなんだね」
「そうだねぇ。俳優さんも人気みたいだよ」
「そうなんだ。知らなかった」
「あ、始まった」
映画のタイトルが映し出されると本編が始まった。
テーマは大人の恋愛物であいちゃんは画面を見ながらあらすじを私に語ってくれた。
主人公は町で複数の男性に言い寄られていた女性を助けるところから始まった。
それから何度かあっているうちにお互いに惹かれていき結ばれる。
最後は結婚してハッピーエンドで終わる、そういう話だった。
映画の途中ラブシーンがありキスシーンとベッドシーンが流れたときはちょっとドキッとした。あいちゃんは黙ってそのシーンを見ていた。
こういうの恥ずかしくないのだろうか。
私は直視できそうにないな。
最後まで映画を見るとあいちゃんが話し出した。
「中々よかったね、この映画。めぐちゃんはどうだった?」
「内容はよかったよ。途中のラブシーンは恥ずかしくなっちゃったけど」
「ははは。そうだね。流石に恥ずかしいね」
「うん。やっぱり海外の人は大胆だなって思ったよ」
「確かに。キスシーンも凄かったね。お互いの唇と舌を使ってするの見るとドキドキするよね」
「うん。なんだかあいちゃんとキスした時の事思い出しちゃったな、私」
「…そうなんだ」
「うん。次の映画でも見る?」
「あのさ…めぐちゃん」
立ち上がろうとした私の腕をあいちゃんが掴んできた。
薄暗い部屋であいちゃんの表情が見れない。
どうしたのかと訊ねるとあいちゃんは小さな声で話し出した。
「なんだかね。私もめぐちゃんと…キ、キス…した時の事、思い出しちゃって」
「そうだったんだ」
「それでね…それで…したくなっちゃった…」
「え…?あいちゃん?」
「ごめん…」
あいちゃんの甘えん坊スイッチが入ってしまった。
正直私はキスしようということは思わなかった。
しかし彼女の気持ちを思うと答えてあげたくなってしまう。
私は彼女に甘いのかもしれない、そう思った。
「うん。いいよ。あいちゃんがしたいなら」
「ホント?」
「うん」
お互い向き合ってハグをした。
あいちゃんは私の耳元でありがと、と囁くと私の頬を両手で抑えてゆっくり唇を近づけてきた。
「ん…ちゅ…」
お互いの唇を重ねてキスをした。
ちゅっと鳴るリップ音が薄暗い部屋で響き渡った。
あいちゃんと私は何度もお互いの唇を重ねた。
「ちゅ……。ねぇめぐちゃん、舌入れていい?」
「……恥ずかしい」
「ふふふ。めぐちゃん可愛いね」
私は顔を横に向けたが、彼女は強引に正面に向けなおしてキスをした。
あいちゃんの舌が私の口の中に侵入し、お互いの舌をなめ合い始めた。
舌先をくっつけたり。
その度に口から唾液がこぼれた。
「んーっ。あん…。ちゅ……あぁ…」
お互い厭らしい声を出しながらキスを交わした。
キスが気持ちいいと思ったのか分からないが、頭の中が真っ白になってこれ以上キスを続けるのが耐えられなくなりあいちゃんと離れた。
「はぁはぁ…も、もう…こ、これ以上は…」
「はぁ…うん。映画とおんなじことしたね」
「……あいちゃんって強引なんだから」
「でもよかったでしょ?」
「よかったって、何が?」
「キス。気持ちよかったでしょ?」
「……まぁ、多分…」
「ふふふ。めぐちゃんってば、素直じゃないんだから」
「もう…あいちゃんのえっち」
「めぐちゃんにだけえっちだよ、私は」
「そういう恥ずかしいこと、よく平気で言えるね」
「だって、そうなんだもん」
そういって笑顔で笑うあいちゃん。
彼女の可愛さと私に対する愛情表現に私の胸の中がドキドキで一杯になっているのを感じた。
暫く黙ったままハグをした後、孝之兄様の部屋から新しい映画を取り出し再び映画鑑賞をした。
お昼ご飯を挟んで夕方まで私とあいちゃんは部屋でまったり過ごした。
明日は新学期が始まる。
また皆と一緒に勉強したりご飯食べたり、お話したりできると思うと嬉しくなった。
生まれて初めて休み明けの学校を心待ちしている私。
変われば変わるものだな、そう思った。




