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25.アメ降って、初体験のキス

水族館の出来事から数日間が過ぎた。

彼女はいつも以上のスキンシップをするようになった。

教室でも帰り道でも、駅のホームでも。

どうしてそこまでくっつきたがるのかと尋ねると彼女はこう言った。


「だって…。あんな素敵なお兄さんがいるなんて、私聞いてないもの!嫉妬と不安で離れたくないもの」

「それは…。実の兄に特別な感情は無いよ。それにね、兄様にはもう決まった方がいらっしゃるの。だから大丈夫よ」

「そうなんだ。やっぱ名家の長男さんって凄いのね。浮世離れしちゃってる感じだわ」


それはそう思う。

兄様達にはそれぞれ許嫁がいるのだ。


私が二人の許嫁に会ったのは3年前だった。

突然お父様が会わせたい人たちがいると言い出し、有名なレストランで会合した。


兄様達はスーツを着こなし、私はドレスを着せられていた。

お相手のお二人は着物姿でとても可愛らしいというか、大人な雰囲気を出していたのが印象深い。


3家族の紹介が終わると、お父様が兄様達に彼女たちを改めて許嫁として紹介した。

会の中盤になるとそれぞれの許嫁がペアになって楽しく談笑しているのを私は見つめていた。

次は私が選ばれる番なのだろうか。

少し冷めた感じだったことを覚えていた。


彼女は私少し曇った表情を見ると私の腕をぎゅっと抱きしめた。


「どうしたの?不安そうな表情」

「うん。ちょっと思い出したことがあって。兄様達の次は私かなって…」

「次って?」

「私の許嫁の話」

「…そうなの?」

「多分…」

「……嫌。そんなの嫌だわ」

「こればかりは……」

「どうして?断ればいいじゃない!?私が守ってあげる」

「……ダメだよ。そんな我儘、私出来ない…」


そう彼女に話すと彼女は黙って下を向いたまま立ち止まってしまった。

道のど真ん中立ち止まると周りの人に迷惑がかかるからと私は近くのベンチがある公園に彼女を誘導した。


二人でベンチに座って、私は彼女を抱きしめた。

寂しい思いをさせてしまったけれど、こればかりはお父様がお決めになること。

それに逆らうことは決して許されない。


兄様達もそのことが理解されているから受け入れているのだ。

私だけ特別扱いは絶対許されない。

この家に生まれたからには、運命には逆らえない。


「まだ先の話だから。今は今を楽しめばいいと思う」


私は彼女の耳元で優しく囁いた。

彼女は黙ったまま体を震わせながら頷いた。

私は少し強めに彼女を抱きしめた。


数分間お互い沈黙していたが、彼女が話し出した。


「先のことは分からないけれど、私はずっとめぐちゃんが好きよ」

「有難う」

「めぐちゃんの言う通り、今を楽しみましょ」

「うん。今を楽しんでいい思い出を作りたいな。あいちゃんとの思い出」

「うん。これからはもっとめぐちゃんにアピールしなきゃね」

「アピール?」

「うん!私がめぐちゃんが好きっていうアピール」

「それはもう分かってる気が…」

「駄目よ。もっとするもの。覚悟してね」

「あはは……。うん」


それから私と彼女はお互いを見つめあうと彼女がゆっくり顔を近づけてきた。

私はそれを黙ったまま受け入れた。

久々のキス。


お互いの唇が重なると彼女は私の口を自信の舌を使ってこじ開けてきた。


「ん…、ちゅっ…んぁ」


何が起こったかわからなくなった私。

お互いの唇から発声するリップ音が耳に残る。

彼女は自信の舌を私の舌と絡ませるようになめ始めた。


「ぁ…ん……ちゅ…ぁ~…」


私の声がどんどん厭らしくなっていき、彼女もまた厭らしい声を出していた。

頭が真っ白になった私は彼女になすが儘だった。

お互いの両手を握ってキスをした。

数秒間経ってから彼女は私から離れた。


「…何、これ」


私は口ものに手を当てて彼女を見つめた。

自分の頬が熱いのが分かる。

彼女も顔を赤らめながら微笑んでいた。


「これが、愛のキス、だよ」

「愛…?」

「私の気持ち伝わったかな」

「うん。伝わった」

「気持ちよかった?」


気持ちよかったと聞かれた私は先程の行為を思い出した。

さらに恥ずかしさがましてしまった。

確かにお互いの舌が絡み合う感覚は気持ちがよかった。


でも恥ずかしくてそれを言葉にすることが出来ない。

私は黙ったままコクリと頷いた。

私のその態度を見た彼女は目を細めながら微笑んでいた。


「めぐちゃん、可愛い」

「………」


あいちゃん、貴女は恥ずかしくないのですか?

私はとても恥ずかしいです!


彼女の表情はちょっと厭らしさ、妖艶とも呼べるように見えた。

彼女はこういう経験をしてきたのだろうか。

初めてではないと思う。

私は初めての経験だった。

少し大人の階段、上ったのかな…。


赤く染まった夕日が眩しく感じた。

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