23.水のイキモノたちとモヤモヤなキモチ
水族館の順路通り私と兄様は歩きながら様々な海の生き物たちを見物していた。
兄様は私の手を話そうとはしてくださらない。
私は手を離すのを諦めていた。
「凄いね、めぐみさん。沢山生き物がいるんだね」
「そうですね。私水族館初めてです」
「そうだったんだね。僕は小学生の社会科見学で着たことあったよ。でもこんなに大きい水族館は来たことがなかったよ」
「そうなのですね」
そういえば小学生の遠足とか、中学生の遠足なんていう行事でも私は常に一人行動をしていどこに行ったのかという記憶がなくなっていたのを思い出した。
面白くない記憶は私の中から勝手に消えいくのだ。
自己防衛機能なんだと思う。
中盤くらいに差し掛かったところに大きな水槽のエリアに着いた。
少しお花を摘みに行きたくなってきた私は兄様にそのことを伝えるとおトイレへ向かった。
「では、兄様。少し待っていてください」
「ああ。ゆっくりしておいで」
「……はい」
兄様はそう言い残して水槽エリアに向かった。
はぁ、なんか疲れてきた。
暫くトイレにお籠りしようかしら…。
しかしそういうわけにもいかず用を済ませると兄様にいるエリアに向かった。
少し薄暗いのと人が多くいるためなのか、中々兄様と合流できずにふらふらしてしていた。
あんまり動き回ると兄様と外れるかもしれないと思った私はエリア中央で色々な魚たちが泳ぐ水槽を眺めて兄様に見つけてもらえるよう待つことにした。
「めぐみさん。ここにいたんだね」
「兄様。すみません。お待たせしてしまって」
「いいんだよ。じゃ、次のエリアに行こうか。もうすぐイルカショーをやるらしいんだけど、見に行くかい?」
「折角ですから、見に行きたいです」
「では、行くとしよう」
「はい。兄様」
兄様は自然に私の手を握りイルカショーのあるプールエリアに向かって歩き出した。
本当に過保護だと思ってしまう私。
時頼私のことを楽しんでいるのか確認するために顔を見たり、優しく話しかけてくれる。
私に気を使ってくれる兄様。
本当にお優しいと思った。
……… ★ …………
「あれ…?めぐみさんかしら?」
今日は従妹の女の子と水族館に来ている。
時々二人でお出かけしたり、遊んだりしていた。
本当はめぐみさんと一緒に来たかったここの水族館。
中々誘う勇気が出ずに従妹と来てしまった。
でも今度はめぐみさんを誘ってここに来たい。
そう思いながら順路を進んでいるとめぐみさんらしき人物が目に入った。
よく見ると男性と手を繋いで歩いている彼女。
間違いない。
あれはめぐみさんだ。
どうしてこんな場所に?
それにその男性はいったい誰?
何で手を繋いで楽しそうに歩いているの?
どうして楽しそうな顔をしているの?
私の心の中がどんどん黒く穢れていくのが嫌で嫌で仕方がない。
それと同時に心臓がバクバクしてすごく痛くなった。
「お姉ちゃん?どうしたの?」
従妹が私のことを心配そうに見つめていた。
「大丈夫よ。さ、イルカショー見に行きましょう」
「…うん」
今すぐめぐみさんを追いかけて真相を突き止めたい。
どんどん悪いことが頭に浮かんで自分が嫌な子になっていくのが嫌になってくる。
確かめたい。
確かめて誤解だっていうことを確認したい。
そう思いながら私は一定の距離を保ったままめぐみさんたちを追いかけた。




