20.家族と距離感
遊園地に行くことを家族に話したら皆が大変驚いていた。
まぁ、私も大変驚いているのだけれど…。
お父様とお母様はひそひそ話を始め、兄様達は黙ったまま私のことを見つめている。
橘さんは黙ったまま夕食の準備を淡々とこなしていた。
お父様たちのお話が終わったらしく、別部屋に来るよう言われた。
何か兄様達には聞かれたくない理由があるのだろうか。
部屋に着くとソファーに座るよう促された。
「めぐみさん。学校は楽しいかい?」
「はい、楽しいです。お父様」
「そうか。ところで、お友達が出来たみたいだね。どういう子たちかな?」
「皆、お優しい方々ばかりです。とても親切にしてくださいます」
「そうなのだね。佐知子さん。めぐみさんのことはこれでいいだろか?」
「ええ。問題ありませんね。めぐみさん、お友達を大切にするのですよ」
「はい。お母様」
友達の事を聞かれただけで話が終わった。
何か心配するようなことがあるのだろうか。
リビングに戻るとテーブルには夕食が並べていた。
橘さんは既に自室に行ってしまったと孝之兄様が言っていた。
食事を済ませ自室へと戻ろうと階段を上っていると凛久兄様が私の手を掴んだ。
驚いた私は振り向くと心配そうな表情をしている凛久兄様が…。
「兄様?どうされたのですか?」
「ん…。大丈夫?」
「はい?何が大丈夫なのでしょう」
「……めぐみさんが心配で……」
凛久兄様、兄様のその態度が逆に私はとても心配なのです。
凛久兄様は昔から私のことを過保護にすることがある。
一人で小学校に行けるか心配だなどと言い一緒に登校していた。
凛久兄様が中学をご卒業されるまで私は一緒に登校する羽目になってしまっていた。
「私なら大丈夫です」
「なら、いい。何かあったら、連絡すること」
「分かっております。凛久兄様」
「ん……」
まだ納得した感じではなかったが凛久兄様は私の手を放し自室へと向かって歩き出した。
私も自室へ向かった。
宿題と明日の予習が終わったのが午後9時過ぎになってしまった。
お風呂の時間を過ぎてしまったのでお風呂場へ向かった。
途中で孝之兄様と出くわし兄様から風呂は空いていると教えてくれた。
今日はとても疲れた。
お父様もお母様も様子が変だったし、凛久兄様に至っては過保護モード全開。
久しぶりの凛久兄様が見れたのは少し嬉しくもあった。
お風呂も終わり寝る準備も終わった時、電話の通知音が鳴り出した。
「はい、もしもし」
「もしもし、めぐちゃん?」
「あ、あいちゃん。どうしたのこんな時間に」
「うん。遅くにごめんね。ちょっとお話したいことがあって」
「なに?」
「うん。あのね、教室で私にベタベタされるのって、めぐちゃん嫌だっりするかなって…思っちゃって…」
なるほど。
私の話していたことに対して不安になってしまったという事か。
別にスキンシップだと思えば特にいやではない、がやり過ぎている節もある気がするのも確かだと思う。
ここはどう話をして彼女の不安を取り除くべきだろうか。
あまり言い過ぎたら傷つくだろうし、別にいいと言えば今まで通りベタベタしてくるだろうし。私は角の立たない程度で且つオブラートに話すことを意識した。
「特に嫌とかではないけれど、他の生徒がいるとちょっと恥ずかしいかなって思うかな」
「そうだよね…。少し自重したほうがいいよね。うん、分かった。でもよかった~、めぐちゃんに嫌われたらどうしようとか考え出したら何もできなくなっちゃって…。勇気出して電話しちゃった」
「大丈夫だよ。私はあいちゃんのこと好きだから、そんなことで嫌いになることはないから」
「ありがとう!私もめぐちゃんのこと大好き。すぐ会いたくなっちゃう」
「あはは。うん。私も、だよ」
「はぁ~。安心したら眠気が…」
「もう寝る時間だよね。私も眠くなっちゃった」
「うん。また明日学校でね。おやすみなさい」
「また明日。おやすみなさい」
彼女の不安をうまく取り除くことが出来ただろうか。
私の言動一つ一つが彼女にとっては大事な事なのかもしれない。
私のことしか頭にないという事なのだろうか。私にはそういう感覚が分からない。
人を好きだとか、愛するとか、そんなこと全く考えたこともない。
それどころか、友達がいなかった私には他人との関わりなんて考えたこともなかった。
家族が私を支えてくれればそれでいいと思ってきた。
兄様達は私に対してとてもお優しいから全く悲しいと思ったことはなかった。
でもこれからは……。
新たな自分が生まれてくるかもしれない。
どんな私になるのか。
とても楽しみ。
そう思いながらベッドに体を預けゆっくりと瞼を閉じた。




