17.デート(中盤)
行きかう人たちの目の前で私たちはキスをした。
見られて恥ずかしいとかは思わなかった。
自然に彼女をそっと抱きしめている今の状況はとても心地よかった。
数秒で彼女は私と離れた。顔は真っ赤に染まり少し涙ぐんでいるようだった。
両手を組みながら私の顔に視線を移すと彼女は話始めた。
「…ちょっと人のいないところに行かない?」
「うん。じゃ、あそこの公園に行こうか」
「うん……」
私は駅の近くにある公園に向かった歩き始めた。
彼女は私の後に続いて歩いていた。
確か今日はデートする日だったような…。
ああ、私が今日のデートを台無しにしたんだ。
後で謝らないと。
私にはやっぱり人との付き合いなんて出来るわけがなかったんだ。
出来ないことをするのはしんどい。
また前のように一人が一番私らしい。
公園に着いた。
誰もいない公園。
ベンチに向かって歩く二人。
ここに来るまで会話はない。
ベンチに腰を下ろすと彼女は私の手をそっと握りしめた。
「…私のこと、嫌いになっちゃったの?」
彼女の手は震えていた。
私は彼女の方に視線をやると肩を震わせ今にも目元から汗が流れ出しそうになっていた。
私は彼女の手を握りしめ一度目を閉じた後話し出した。
「嫌いになったんじゃないよ。ただ私が悪いんだと思う」
「どうして?」
「気持ちが…私とあいちゃんの気持ちが…ね…」
「気持ち…?」
「うん。違うと思ったの」
「どういうこと?」
「あいちゃんは私のこと好きって言ってくれるでしょ?でも私はあいちゃんのこと好きって言ってないよね。そういうことだと思ったの」
「……?めぐちゃんは私のこと、好きじゃないってこと?」
「好きだよ。でもあいちゃんと私の好きは一緒なのかな?」
「それは私には分からない。でもめぐちゃんがもし私の好きと違っていたとしても、私がめぐちゃんを変えてみせるよ」
「このままでいいの?あいちゃんの好きと私の好きが違っていて」
「今は、まだ、このままでいい。私がこれからめぐちゃんを変えたい」
「変わらなかったら?」
「大丈夫!自信あるもん」
「あいちゃんがそれでいいのなら、この関係を続けたいのなら、これ以上私がとやかくいう事じゃないかな」
「うん!それじゃ、この話は終わりっ。デートしよ!」
「うん」
長い時間でもなかったけれどとても長く感じられた。
腕時計を見ると待ち合わせから40分が過ぎていた。
彼女はハンカチで目元を拭き笑顔を見せた。
元気になった彼女は私のベンチから立ち上がって駅前のビルに向かって歩き出した。
私の手を握ったまま。
このままの関係がこれからどうなろうが彼女の意思を尊重しよう。
本当に私が変わることが出来るのなら、私は彼女と同じ好きになれるのなら……。




